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久しい

最近思うのだが、なぜこう検索に実に引っかからなそうなタイトルをつけてしまうのだろうと自分で気づいた。
別にnoteに人気が欲しい訳では無いのだが、だがやはり閲覧数は増えたら嬉しいものだが、そのための努力というか、工夫を一切していないのもどうかと思ってきた。

だからなんだよって話ね。ここ笑うとこ。

さて、今日のお代は久しい、だ。

皆さんは久しいという言葉をどう捉えるだろう。



「久しくあってないわね」
呟くその口はあらぬ方向に向き、スマホの画面は静かに閉じられた。

懐かしい人の話をしよう。
昔を振り返るのは私らしくないのかもしれないのだけれど、今日はそんなセンチな気分なの。

昔私には恋人がいた。それはもう愛し恋してた。
人間生きていれば色恋沙汰の一つでもあっておかしくないでしょう。私はそれに関してそこまで積極的でないにしろ、別段消極的な訳でもない。
恋沙汰というのは有って無いようなものなのだろうと思う。

無い訳では無いのだが、それは有おうと思わねば有わない。恋というのは自意識と深く結びついている節がある故、自意識なしに色恋になることは無いのだ。

閑話休題。

私には恋人がいた。
過去形にすることに含みがある訳ではなく、いるでもいい。だが語ったように久しく会っていない。
不思議なもので、というか私がおかしいのかもしれないのだけれど、恋人とは会っていなくても不思議と愛せるものであったりする。
私は、私たちは、もしくは私は、少なくとも体目的顔目的で付き合っているわけではなかったし、そんなに頻繁に欲に身を任せることもありはしなかった。

なにか事情があるのだろう。
そういった長い感情というか、憶測が続いているだけに過ぎない。連絡が無いという訳では無いのだけれど、頻繁という訳でもない。ある程度、間隔的、あるいは定期的、定時連絡と言っても過言はないくらい、気持ち悪いくらいに彼の連絡は定期だ。まるで予定調和のように。

そういう所を好きになったのかもしれないのだけれど、非日常も長く続けば日常だ。
1度高い餌を食べた猫が頻繁に高い餌を食べ続けたら安い餌はそう簡単に胃に落ちないだろう。それと同じこと。
私はいつも朝夜8時を気にしてしまう。
頻繁にしろなんて烏滸がましいことは言わないにしても、やはり淋しいものは感じていた。
この感情は間違いなく過去だ。

今は特に気にしていない。気にしたところで連絡が増える訳でもないし、増えたところで彼の存在を感じるには少し物足りない。 すごく物足りない。

よく遠距離恋愛は浮気されるだのしてしまうだの話しているけれど、私が認知しない限り浮気は発生しないと感じているし不安もない。
私が知ってしまうことはありはしないのだから。

だけれど私は意外と現状に満足している。
私は意外と冷めた人間なのかもしれない。でも事実で、昼は仕事、夜は自分の時間に使い、朝は悠々と起きれる。
そこにキスはないしハグはない。愛はあっても。
彼は私の起きることや会社に行くことも、ご飯を食べることも気にしているのだから、愛はある。だけれど1人でそれを済ませると感じると、酷いリアリズムに生かされている私にとっては過ごしやすいことこの上ないのだ。

「寂しい…のかな」

空を切る。
裏腹な思いは。

SEXなんて意味の無い行為に飢えているのかもしれない。

「彼氏さん、酷いね」
「どう酷いの?言ってみてちょうだい」
「こんな可愛い子を1人にしておくなんて」
「いえ、酷くなんかないわ。少なくとも自分達で選んだ道だもの」
「なるほどね」

肩を竦め、彼はベッドにしずんだ。

彼と言っても、彼ではないのだけれど。

「しかしあれだな、君は隙がないな。隙がなくて好きがない」
「何が言いたいのかしら」
「だから人を好きではないということだよ。愛しか知らない。だからそれに媚びている。隙がないということは彼を愛しているのだろう。僕は改めなければならないね。自分が君の彼氏の代わりになれるのではないかと思っていた事をね。そんなことはありはしないんだ」
「何を言っているの?」
「よくあるだろう?遠距離恋愛で近場の男に手を出して、出されて。体の関係から恋愛になり、好きになり。そして会えない愛と空ける好きをありもしない天秤にかけて答えの見えている測り較べをするのさ。そうしてすぐに捨てるのに。あわよくばその愚かな関係になろうと思っていたんだよ。そんなに追求しないでおくれ。君を殺したくなる」
「何を言っているの?と聞いているのよ。あなたはもう彼の代わりよ。臀部だけではなくね」

その口も目も耳も手も足も、指一本にしても私を楽しませるためにある。その点彼は彼の代わりにはなっている。

「君のそういうところ、人を魅了して未了に閉じるところ。諦めるところ。僕はすごく嫌いだよ」

見え透いた顔で私のことを見つめる彼はそっとキスをしてきた。
その顔はすごく、すごく麗しく、男であっても女であっても人を取り入ることにたけるだろう顔をしていた。

あぁ、その顔も私を癒すためにあるのね。


間違えた。

卑すためだったかしらね。