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取調調書No.0『EGUI-QUIZ』

 皆様こんにちは。えぐみろいど改め、ENIG-ROIDのおじさんと申します。ツイッターアカウントも無いので知らない方も多いと思いますが、実は新人ではなくどっちかというとOBに近いマジおじさんです(ENIG-ROIDの公演に来たことがある方なら、ヒゲぼうぼうで人相の悪いふくよかなスタッフを見たことがあるかもしれませんね。それが僕です)。
 このnoteでは、ENIGMA_QUINTETが立ち上がるまでの軽い経緯と、そこからチュートリアルブロックが生まれるまでの過程と実装までの話をしたいと思っています。この記事だけは他と違って無料なので、興味のある方は是非是非読んでいって下さい。

 それでは始めます。以下、ネタバレ満載です。

▶SICKS_MONSTERSとFOR_HEROES、そして我々

 2020年3月末日。零狐春様から、超絶難易度のWeb謎企画である「#SICKS_MONSTERS」がけしかけられたことは記憶に新しいかと思います。徒党を組んで挑むことを推奨される難易度、それぞれに趣旨がはっきりした上質な謎の数々に人々は熱狂しました。それは勿論えぐみろいどギルドもそうでした。

 そして、この熱に浮かされた謎制作者は走り始めます。RIDDLER様のFOR_HEROESをはじめとする後続企画達が続々と名乗りを上げ始めたのです。外出自粛期間が続く中、少しでも楽しみは多い方が良いと歓迎していたら、いつの間にか平日も埋め尽くされるレベルになっていくのではありますが……それはまた別のお話。

 ともあれ、我々えぐみろいどもこの流れに便乗していくことを決めました。SICKS_MONSTERSの完全討伐ギルド序列2位のHydra様と3位のRIDDLER様が後続企画を既に発表していた(それぞれHydraとFOR_HEROESのこと)こともありましたし、何より僕ら自身、新歓公演の中止やなんやらで制作欲が有り余っていましたから。

 次いで、4月の3日にはそれの名が決まります。やっぱりえぐみろいどとして出すのなら「ENIGMA」か「EGMI-ROID」をテーマにしたタイトルが良いよねとみんなで案を出し合うわけです。「DIrectOR-of-IMaGinE」、「DIrectOR’s IMaGinE」、「Five_IMaGinE」と色んな案が出る中、最後に誰かが「ENIGMA_QUINTET」とふと言ったことで命名されました。いやーかっこいい。

 そして翌4日には何故かCブロックの概形が完成しました(なんでやねんと思うかもしれませんが、それはCブロックの裏話でかめさんが全て話してくれるはずなので僕からは何も言いません)。その日はちょうどFOR_HEROESの初戦がありましたが、英雄を解き終えた直後にCブロック原案のデバッグをやってのけるという狂気的な行為をしていました。
 僕は賑やかし程度にいましたが、なんでこいつらは謎を解いた後に疲れも見せず謎を解くのだろう、と結構本気で疑問を持っていました。やべー奴らだわ。
 ともあれ、そうして僕たちの制作は始まったのです。

▶チュートリアルブロックを作ろうとなった経緯

 制作が進む中、SICKS_MONSTERSの裏話が書かれた『怪物解体新書』と、FOR_HEROESの秘話がまとめられた『謎解英雄列伝』がリリースされます。まあ謎制作の裏側なんて覗きたくて仕方ないわけなんで凄い興奮しながら読みました。最高。

 で、無料公開記事であるFOR_HEROS No.0のメイキングを読むと、大事なことが書いてありました。それは「難易度抑え目で入り口になるブロックを作るべき」という趣旨の文章でありました。SICKS_MONSTERSでいう「九尾」、FOR_HEROESでいう「Briefing」ですね。あー、確かに。あった方が絶対に参戦の敷居が下がる。作ろう、という話がえぐみろいど内でも上がり始めます。
 上がり始めるんですが、それだけです。誰も実際には作りません。それは勿論、リアル事情や自ブロックの制作に忙しいからです。このままではピンチ、作れたとしてデバッグしてる暇がないかもしれません。

 でもたった一人自由に動けるメンバーがいました。僕です。
 僕は当初、リアル事情の立て込み方からとても制作に参加している余裕は無いと判断して、どこの班にも入りませんでした。ですが、奇跡が起きてあっという間にそのリアル事情が全て解決し、いつの間にか圧倒的な暇を得ていたのです。暇なのに何もしないっていうのはちょっと気が引けます。

 そこで浮かんでは沈むチュートリアルブロックの存在に目を留め、誰もやらないなら僕がやるのがよさそうだなぁなんて思いながら、アイデアを求めてYouTubeの無限再生を始めるのでした。

▶何かできちゃった

 謎制作者には各個人に発想の源があると思うのですが、僕にとってそれはYouTubeです。ぼけーっと見ているだけでもネタの宝庫なんですよね。職業病なのか、ありとあらゆるものが謎解きに使えそうだなと思ってしまう僕はすぐに使えそうなアイデアを見つけます。
「世界三大○○! これはもしや使えるのでは!」
 人気YouTuber、QuizKnockさんの動画(ネタバレを避けるためタイトルは伏せます)に出てきた「世界三大〇〇の一覧」。これは使える。最後の謎が全く見えなくても、それまでの問題の答えから推測して正解が導き出せるという問題が作れるのではないか、と僕は考えました。

 世界三大珍味は有名だし、世界三大宗教は学校で習うから発想のとっかかりとしても申し分ない。後は分かりにくい「世界三大○○」を入れれば検索によって新しいことを知れるいい機会にもなりそう。難易度も小謎のレベルによって調節できる。よし、これだ。
 すぐにメモ帳を立ち上げ、ああでもないこうでもないと試行錯誤すること1時間。原案が出来ました。以下はメモ帳の引用です。

名数3のものを答えにする

1st floor、2nd floorで名数3のものの内2つを出す
1st floorでは答えのお尻を取る
2nd floorでは答えの真ん中を取る
3rd floorは真っ暗で一切画像が無いが、名数3のものの内残った1つずつの頭をとるとクリア

トカイ ソーテルヌ トロッケンベーレンアウスレーゼ
カヤク ラシンバン カッパンインサツ

1  2       3
セル サイエンス   ネイチャー
トルコ チュウゴク   フランス 
キャビア フォアグラ   トリュフ
イスラム ホトケ(仏教) キリスト

ココアルーム→○○の世界に登場するような… kawaii stars
アウトウェア
ときのふね

 長かったので省きましたが、小謎の原案も全て完成していました。
 段階が進むにつれインクが画面を侵食し、最後の問題では画面が真っ黒になるけど、それまでの答えから最終解答が推測できる。小謎の難易度は抑え目で、検索の難易度も控え目。 チュートリアルに使えそうなアイデアが出来ました。

 画像化も一切できてませんが、とりあえず制作LINEに放り投げます。

画像1

 これは謎制作のテクニックだと思うのですが、こうやって背水の陣を敷くことで後に退けなくなると制作速度を上げることができます。お勧めです(お勧めではない)。

 さて、タイムスタンプを見れば分かる通り時刻は既に0時を回っています。この日はZAKO_RUSHがあった日で、いくらおふざけ企画とはいえ6つも解いたら結構疲労感はありました。普段の僕ならここで寝て、明日の朝から制作を開始します。

 でもこの時の僕は馬鹿だったので、画像の実装を始めました。原案は既にできてますから、いらすとや等々から画像を引っ張ってゴリゴリといじりはじめます。2ndにインクを散らし、3rdをインクで覆い、とりあえず仮に完成したのが朝の3時くらいでした。
 だいぶ疲れました。馬鹿度が低い時の僕だと、ここで眠気に負けます。

 でもこの時の僕は輪をかけて馬鹿だったので、あろうことかWeb実装まで始めます。既にアカウントを取得していたWix.comに仮置きして、バグなく動作するのを確認したのが大体朝の5時くらいでした。脳はすでに情報処理が出来なくなりつつあったので、制作LINEに「仮実装できたから今日の夜くらいにでも解いてくれ」という遺言を残し、僕は眠りにつきました。

 目が覚めたら昼の10時でした。なんで5時間そこらしか寝られてないんでしょうね。起きたら夕方だったというのが想定だったんですけど……。
 とりあえず「仮実装完了」の言に返信が来ていたのでそれに答えます。結局その日の夕方にデバッグをすることが決まりました。

 そのまま無為に夕方まで過ごしても良かったのですが、折角なので暇してる謎界隈の外側の友人たちに放り投げて反応を見ることにしました。流石に(ENIGMAの中では簡単とはいえ)難易度的には高いのでヒントを出しながら解き筋を確認してもらうという形だったのですが、この時点で幾らかの誤字脱字と不親切な点は修正されます。
 例えば3rdの画像は当初、完全に真っ黒で何も見えないというヤバ画像がポツンと置いてあるだけのヤバWaveでした。完全に何もないのは流石に解き筋が無さ過ぎるだろう、ということで「答えは残り一つ」という言葉を入れることになりました。

 そうやって「デバッグ前デバッグ」を済ませると、ある程度マシになります。しょーもないところをギルドメンバーに指摘してもらう手間が省けました。実際、迎えた本デバッグでは本質的な部分の改善案だけが沢山出たので、このデバッグ前デバッグは効果てきめんだったと言えるでしょう。
 ギルドメンバーたちの反応は概ね好評でした。難易度的にはチュートリアルにちょうど良い、とも言われました。よかったー。

▶デバッグ後の修正

 さて、デバッグが終わるとフィードバックがされます。えぐみろいどは謎解きに対して真摯な人たちが集まった集団ですから、僕なんかでは思いつかないような天才的な改善案を出してくれます。細々としたミスリード要素の排除を除くと、主に以下の3点が上がりました。

・世界三大〇〇は競技クイズの頻出問題だし、往年のクイズ番組「アタック25」の地中海クルーズとひっかけてみてはどうか
・1stと2ndと3rdの各問題に関連性があることを示唆するような仕掛けがあった方がいい
・えぐみろいどなのにエグみが足りないのでそこを増やした方が良い(難易度ではなく雰囲気の話)

 一番上の案は正直目からうろこでした。そういえば小謎の中にQuizKnockもあったし、導線とまではいかなくても気付く人に気付いてもらう要素として「クイズ番組」にするというのは名案に思えます。
 真ん中の案は、関連性のある問題同士に同じアイコンを割り振れば導線として適切になるのではないか、と考えました。実装も簡単なのでそれでよさそうです。
 一番下は……そういうストーリーでも付け足せばいいかなー。とりあえず心の中にしまっておきます。

 一番上の案について再検討します。アタック25について知らない方は調べてもらったらいいのですが、5x5の盤面をクイズに答えて取り合う陣取りゲーム形式のクイズ番組です。最終問題である地中海クルーズは「自分が取った問題のパネルだけが消え」て、その後ろにある映像を見ることができる、という形式です。
 では逆に、「自分が取った問題のパネルだけ見えなくなる」とどうなるでしょうか? 段階が進むごとにちょっとずつパネルが見えなくなっていき、最終問題では真ん中以外が見えなくなる。おー、エグみがある。しかもインク謎のインクの代わりにパネルを使うことで雰囲気も出る。これじゃん。

 本家同様25個は無茶なので、1stの4問、2ndの4問に加えて、3rdの問題は問題文が全て同じなので1問にまとめてキリよく9問にし、各問題にパネルを割り振ります。
 なんと一番上の案と一番下の案が同時に解決しました。早速実装します。

 1stと3rdはそのままでいいので、2ndの問題の修正をしましょう。

・答えが中国になる問題/答えが仏になる問題
 あまり変更点は無く済みました。ちなみに、無検索の問題はサクッと解けて勢いづいてもらった方が良いと思っていたので難易度はベタ問級まで下げています。

・答えがフォアグラ(??アグ?)になる問題
 地獄。これが一番きつかったです。

画像2

 ご覧の通り、初期案では「ミリオン」の文字も無かったし、「グ」の代わりに「ラ」が分かるようになっていました。検索の導線としては、一番下の「庭園、甘味処~」などの文言をそのまま打ち込むと「白石紬」がヒットするので、そこからの類推です。

 で、これをインクの代わりにパネルで隠すとなった時、問題が発生します。各問題のアイコンが見えないといけないことや、他の問題との兼ね合いで、9つに切り分けた領域の内、上下左右を隠すことは決まっていました。でもそうすると、どう頑張っても「庭園、甘味処~」が見えなくなります。
 そうなると検索導線が消滅し、ただの悪問になってしまいます。それはまずい。苦肉の策として、右上に「ミリオン」を示唆する言葉を入れて軌道修正。元の検索導線が好きだっただけにちょっと残念に思ってます。

 その後は文字の配置を上手く調整し、全部で5文字を拾うことが分かるようにしつつ、名前の一部を拾うことが分かるように「ジュリア」以外に「所恵美」もヒットするようにします。ジュリアが4文字、ところめぐみが6文字だし、分かってもらえるはず。これでよし。

 最終的に、初期案だと分数が日付に見えて誤解するという意見が多かったので、そこをちゃんと分数に見えるように修正。完成!

・答えがサイエンスになる問題
 これをどうするかと考えた時に、「検索の仕方を閃く」という閃きについてのチュートリアルみたいな問題になれば良いと考え、どういうワードで検索すると出てくるかの試行錯誤をさせる問題にしました。
 想定は「最先端の科学」、「番組」です。他にもあったら教えて下さい。

 諸々の修正が終わったのが、案を貰ってから丸1日くらい経った時でした。それから界隈内外の様々な人に頼んでデバッグをしてもらい、細かいところを詰めていきます。より解きやすく、かつ最後の難しさを保ったまま。
 界隈の外側に友人が多いとこういう時に助かります。

 そこからは完成した画像をWordpressに実装する作業が待ってます。既にサイトは後輩の寺さんが作ってくれていましたから、管理者権限を貰って個別実装です。作業中はずっとQuizKnockさんの動画と東海オンエアさんの動画を作業用BGMとして聴いてました。音だけでも面白いので作業は捗ります。やったね。

 関係各所(特に『謎解英雄列伝』の ”誰でもできる!Wordpressでつくる「SICKS_MONSTERS」みたいなやつ” の記事)に助けてもらいつつ、4月20日には99%が完成しました。エニグロとは思えない早さです。普段が自転車くらいの速度だとしたらこれはロケットくらいの速度です。

 そこからは微調整を繰り返し、公開前日には今と全く同じ状態に。それと並行してタイトルも考えます。この謎はえぐみろいど企画の「入口」であることからEntranceという言葉を使うこと、EntranceならEが入ってるので略称がEGUI-QUIZとかになるようにしたいなあ、じゃあそんな感じでアクロニムにするかと適当に単語を拾ってきました。直訳したら「すげー非日常で有名なクイズへの入り口」とかいうわけわかめな感じになりましたがまあいいか。アタック25は有名なクイズ番組なので間違いじゃない。

 ともあれ、全ては公開前日に終わりました。ほんまに疲れました。

▶各謎の制作裏話

 全体の大きな流れが終わったところで、ここでは各小謎についてどういう意図があるのかという話をしていきます。正直8割くらいが僕の趣味の話になるので、興味のない方はここでお引き返し頂くことをお勧めいたします。基本的にステージ順に解説し、最後に全体構成の話をします。

・2番の問題(キャビア)
 デバッグ時に仮置きで作った問題です。そのまま採用と相成りました。
 あんまりこだわりは無いですが、「非検索問は難易度を意図的に落として勢いをつけさせる」という点からかなり簡単目にはしました。僕は小謎制作のセンスが絶望的なまでにないため、大体こういう系の奴の焼き直しになりがちなのはちょっと反省点です。

 実際、今回幾つかある反省点の内、大きく自覚してるのは小謎のクオリティ(この問題に限らず)だったりするので、小謎の外注の重要性を大きく自覚しました。皆さんもこういう企画を作る時はそういったところに目を向けて見たら良いんじゃないかと思います。

・4番の問題(トルコ)
 音楽が好きなので音楽の問題を入れました。
 最初は「メンデル」のところにまんまメンデルの肖像画を入れていたのですが、これが誰か分からないと詰む上に、多分出てこない人も多いだろうということで文章になりました。あと、原案だとモーツァルトとベートーベンは肖像画を引っ張ってきていたのですが、これも誰だか分からないと厳しいし、デバッグ時に音楽家だと思い至らない人も多かったので変えました。
 より親切に親切にした結果、検索の作業感だけが増していないと良いのですが……。

 ちなみに、葬送行進曲があることは後で気付いたので途中で足しました。最近Twitterで流行ったというサムシングに似ているらしいですが、別にそういう意図はありません。一番葬送だと分かりやすそうなのがこれでした。

・6番の問題(セル)
 これは初回の本デバッグの時から全く変わっていません。強いていうなら「単語の読み」っていう文言と、ビーカーのイラストを導線として配置したくらいのものです。

 「ことばの梯子」という遊びが好きなので取り入れてみました。実際難易度も低く、それなりに閃くことを要求するのでいい塩梅かなと。
 ことばの梯子を提唱したルイス・キャロルに感謝。でも現実では中々poorはrichにならないし、foolはwiseになりません。つらい。

・8番の問題(イスラム)
 どうも、QuizKnock好き好きマンです。どんなに疲れていても新作動画が出てたらその日にチェックするYouTuberの1組です。検索問を入れるなら折角だし個人の趣味に関わる問題があっても良いかな、と作りました。

 好きな動画は沢山ありますが、マジカルきのこは笑えるし、この謎解きが終わった後にでも見て和んでもらえたらいいかなぁと思ってチョイス。これは個人の趣味の押し付けとも言います。
 答えの制約は当然最初から決まっていたので運良く拾えないかなぁと動画を見ていたら、本当に幸運なことに隣接する周回でちゃんと拾えました。マジカルきのこ最高。本家マジカルバナナも最高。

・1番の問題(フォアグラ)
 どうも、ミリシタ好き好きマンです。どんなに疲れていても毎日欠かさずログインだけはするソシャゲの1つです。検索問を入れるなら折角だし個人の趣味に関わる問題があっても(略)。
 答えの制約がきつく、キャラクター名から文字を拾ってフォアグラが出来ないかなぁと、ひたすらニコニコ大百科を睨みつけていました。「所恵美」が「ぐ」を含んでいることが分かった瞬間快哉を挙げました。恵美お前最高やで。

 こうして実装を始めるわけですが、ここに1つこだわりを入れました。それは「一見しただけでは絶対解けないが、全体の情報を組み合わせると答えが確証を持って推測できる」という構造にするということです。この問題の答えが「フォアグラ」と、少し露骨な答えだったことからも、「この問題単体では正解が出せない」が、「真ん中の文字だけは分かる」という状態にし、最終問題を見た時に理解できるという構成になりました。

 知らない人は知らないジャンルなので、検索導線はそれなりに丁寧に張ったつもりです。「ミリオン なし ギター」とかで調べればジュリアは引っ掛かるし、そこから行けるかと。

 先に書いた通り、インク謎がパネル謎になった時に一番割りを喰った問題です。つらい。

・3番の問題(チュウゴク)
 この問題自体は非検索ですが、検索謎が多いがゆえの弊害がデバッグでは発生しました。
 あるデバッガーの話です。その人は3rdの問題を見て「残り一つ」を調べる時に、ひょっとして前の問題に別解があるのではないかと解釈して調べ始めました。そしたら ”china” には「陶磁器」という意味があることが分かり、そこから迷走を始めてしまうという事態が発生したのです。

 いらんミスリードは避けたいので、「国」という文字が微妙に見えるようにして国名であることを強調しました。「日」が見えているのは「日本語」であることを示唆するつもりでしたが、別に分からなくても支障はないと思います。

・7番の問題(サイエンス)
 先に全部書きました。新しく付け足すことは無いです。

・9番の問題(ホトケ)
 これも特に新しく付け足すことは無いですね。

・5番の問題(4つ答えが出るやつ)
 「答えは残り一つ」という、めちゃくちゃ突き放した態度を取ってくる謎です。解き方については解説記事を参照のこと。ENIGMA No.0の核でありラス謎です。ちなみにこの問題を見た人の反応は様々で、吹き出す人や、やばいとだけ呟く人、これは解けないだろと諦めの色を浮かべる人。いや、多種多様で素敵でした。

・1st~3rdの問題/全体構成
 元々最終フェイズは全部黒塗りの問題画像が並ぶ予定だったので、「頭の文字を拾え」って指示文も隠れてる予定だったから、拾う文字の場所に規則性を持たせて推測させようと思ってたんですよね。だから、お尻、真ん中、頭っていう順番になってました。

 まあ結局そこにインクが落ちることは無くなったのでこれは原案の名残だと思って下さい。出てくる言葉が所々無理やりなのはそのせいです。松たか子の「時の舟」はこじつけですが、謎を解いて狂気的なクイズ番組から脱出できた人を送り出すような歌詞があった(曲解)ので急遽ストーリーに足しました。

▶「クリア画像」

 クリアした方は一度目にしていると思いますが、全ての謎を解き最終回答を入力すると、こんなクリア画像を見ることができます。

画像3

 えー、なんやねんこれ。と思う人もいるでしょう。実際制作LINEでも「人類には早すぎる」「誰がついてこられるんだ」といった意見も出ていましたが、まあこのまま実装しました。以下にどういう経緯でこれが実装されたのかという話を書いていきます。

 事の発端はLINEでこんな発言があったことです。

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 あー、妙案ですね。当時の僕も何故か凄いノリ気で返してます。で、僕はここから「真ん中が埋まると意外性があって面白い」クリア画像を作ることを迫られるわけです。

 3時間後の僕は、絶望していました。そうです、過去の自分より未来の自分の方が賢いなんていうのは嘘なんです。何も思いつかない時は何も思いつきません。仕方がないので他人に頼ります。

 デバッグをしてくれた、頑張り屋でセンスの良い後輩に相談をしました。この人はエニグロの外部の人ですが、結構個人的に色々手伝ってもらっている優秀な人です。彼も彼なりに色んなアイデアを考えてくれたようで、まずはこんなアイデアをくれました。

画像6

 あー、熱盛! 旬は過ぎた感じあるけど悪くないじゃん。
 まあでも、紆余曲折あってこの案は没になりました(権利とかのサムシング)。その旨を後輩に伝えると、しばし思案した後、次のようなアイデアをくれました。

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 こいつ、天才か……? すぐに画像を作ります。

 うーん……、いざ作ってみたら微妙かもしれん。まあ一応こういうの作ったよっていって共有してみるか。それはアカンと言われたら没にすりゃ……

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画像9

 めっちゃ好評だったわ。勝ち。これにします。

 弁解しておくと、この時点での僕たちは制作のしすぎで頭が終わっていたため、これが本当に面白いのかどうかの判断が出来ない状態でした。結果、全ての実装が終わった後に「これ人類に理解できるのか……?」という意見が出始めるわけですが、もう後には引けません。

 反応を見る限り、あながち凄く不評ってわけでも無いので良かったのかもしれません。結果オーライ。
 ともあれ、この案をくれた後輩君には後生感謝を続けるでしょう。ありがとう。

▶まとめと謝辞

 斯くして嵐のような数日間が過ぎ去りました。画像作成とデバッグとWeb実装を行ったり来たりしてたらいつの間にか終わっていた、って感じです。

 今回の制作で最も僕が意識していたのは、定期的にデバッグを挟む、ということです。その根底には「この謎は他人に楽しんでもらうために作っている」という考え方が根底にあります(偉そうに何を、と思われるかもしれませんが……)。当たり前のことです、誰でもそうでしょう。でも敢えてこれが言いたいんです。
 単に知識を試すのなら僕はミリシタの問題の右上を消して、文字をもっと見えにくくしています。そうしないのは、それが難しいというよりは理不尽という領域に入るからで、それが到底面白い謎になるとは思えなかったからです。だから僕は、難しいと理不尽のギリギリを通ってもらえるように、他人の目を通し続けました。こういう、自分が面白いと思ったものを、他人にも面白いと思って貰える努力は欠かしてはならないことだと思います。

 また、どうしても1人で作っているとアイデアの限界もすぐに来ます。他人の意見を吸収する場としてのデバッグも大事にすることで、1人では思いつけないようなものが作れる、ということもあります。事実、これがアタック25の形式まで落とし込めたのは他人の多大な協力があってこそでした。

 当日、戦々恐々としながら感想を待っていたのですが、僕の想いが通じたのか皆様の感想は温かい物が大半でした。僕が作りたかったもの、面白いと思ったものがちゃんと世に出て評価されるということが初めてだったので、脳がオーバーフローしていましたが、今になってかなり嬉しいです。本当にありがとうございました。
 「一見解けないように見えるが、情報を組み合わせることで全貌が明らかになる」というタイプの謎は僕の好みでもあるので、それを褒めていただけるというのは制作者冥利に尽きます。

 最後になりますが、この謎を作るにあたってデバッグ及び改良案を出してくれたえぐみろいどのメンバー、不慣れにもかかわらず助けてくれた非謎クラの友人たち、Web実装の参考にさせていただいた諸記事の作者様、そしてこの謎を解いて下さった全ての方々に感謝を申し上げます。

~~~以下、制作陣コメント~~~

みそかつ
 知らんうちにチュートリアルブロックが完成してて感動しました。クイズよりでインク謎というやや人を選ぶ形式でありながらも解ける難易度で出来ていたのでギルド戦の入り口として完璧だなと思いました。P的にはジュリアが謎に登場したので満足です。ミリシタはいいぞ!

山下
 強い人なら序盤で察せてサクサククリアできる難易度と、意味不明すぎる上にネタバレはするなと言われて悶々とするクリア画像、どこをとっても名作です。チュートリアルのくせしていきなり突き放した感じのラス謎でしたが、全てつながったときの快感は本当に最高なんじゃないでしょうか。
ちなみに地中海クルーズを提案したのは僕です。我ながらお気に入りの味付けです。

寺さん
 「予行演習的なNo.0あったらいいよね~」とか言ってたら謎でありながらQUIZらしいナイスなコンテンツを出してきたおじさんに?????ってなりました。しかも、実装もやっておきましたって言われ完成していたので、う~んプロ!(特に自分はWeb実装をやるといいつつもひそかにNo.0を作ろうかなと画策していたので悔しさもあり)
 検索謎でありしかもクイズという特性上、検索が強く必要になるものなので”謎解き”をしたい人にとってはストレスになりうる(しかもそこに好みのわかれるインク謎要素もある)のにも関わらず、ストレス要素を控えめにしたおじさんの実装力には脱帽です。

ひっと
 手に入れたパネルでだんだんCLEARが見えるようにしましょ、って提案しましたが、まさか「Connichiwan! Sayonalion!」が返ってくるとは思っていませんでした。天才だと思ったのですが、人類はついてこれなかったのでしょうか。皆様は優しいのでネタバレに配慮してくれたのだと考えておくことにします。

どるふ
 突然生えてきたチュートリアル、デバッグしてみたら超面白くてびっくりしました。検索謎ながらもラス謎の構造が閃きに振り切ってるの大好きです。解けないと永遠に終われないというクイズ番組の設定もえぐい。

りーふ
 三名数の残り一つを答えるというクイズ頻出パターンを大謎に落とし込むアイデアめっちゃ良くないですか?めっちゃ良いですよね?!
 公式から事前発表していた「うちの謎はエグさに全振りする」という意味不明な記述を一発で理解させるヤバ設定と、これからの激闘を予感させるような歯ごたえのある謎で、チュートリアルとして抜群なブロックだったと思います。

かめ
 チュートリアルブロックとは関係ないですが、おじさんはアドリブ力がめっちゃあって司会とかに実は向いています。もっとやって欲しいなあ。こういうクイズ番組の司会とかもおじさんらしさが出て面白くなること間違いなしです。本人は基本謙遜していますが、作れと言われたわけでもないのに謎を作ってちゃんと完成させることの出来る人は意外と少ないので貴重な人材です。

k5
 みんなしてチュートリアルを作りたいよねー、と言いながら誰も作らないパターンだと思っていたので、突然デバッグが始まって驚きました。こういう時にシレっと動ける人は本当にすごいと思います。内容もすばらしいので尚更です。

driving
 公開数日前にようやく解いたのですが、えらい面白かったです。隠れないで〜って思っていましたが、しっかり隠れて最後突き放された時はワクワクしましたね。意味不明なアイコンを理解した時も、意味不明なストーリーを読んでいる時も、エグミの香りを感じられました。あとデバッグめっちゃ重ねているのが本当にえらい。見習っていきたいです。

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