「シン・仮面ライダー」のあれこれの批判を呼んで思ったこと

賛否両論、否が多いのは知っていたけれど


Amazon プライムに入るつもりはなかったのに、うっかり手違いで入ってしまい、入ってしまったらなら無料映画を観ようと思い立ち、先日「シン・仮面ライダー」を観ました。

公開時から賛否両論で庵野監督の『シン』シリーズにしては最低の観客動員数だったとか、いろいろよくない評判を聞いていたのでどんなものかと思ってたけれど、結論として観てよかった。
観た後の余韻というか感動が冷めやらぬ感がすごいので、とりあえずこの気持ちを文章にしておきます。

多少ネタバレありのため、お気を付けて。

正直なところ、私は他の庵野監督作品をほぼ観たことありません。『エヴァンゲリオン』のTVシリーズをちょっと観た程度。
ただの、昭和の仮面ライダーファン、石ノ森先生ファンです。原作と言っても、TVシリーズのライダーと石ノ森先生のライダーもまた違うし、特に元の仮面ライダーと設定やあれこれが違うという点はまったく気にならなかった。

「シン・仮面ライダー」の批判意見をいくつか読んだけれど、やはり登場人物の心情描写が薄っぺらで感情移入できない、展開が唐突すぎる、という感想が多いですね。

言われてみれば、確かにそうかもなのですが、なんというか自分としては「ファン目線フィルター」が濃厚にかかっているせいか、特にダメダメとは思いませんでした。

目を覆いたくなったのは、血しぶきがビシバシ飛ぶ場面。生々しすぎる…。戦闘シーンに関しても、結構厳しい指摘をされてます。TVシリーズの曲が流れたり、いきなり昭和に戻ったような演出が随所にあって、若干の違和感は否めないものの、嬉しさのほうが勝ってました。
やはり、「ファン目線フィルター」が…以下省略。

ただ、緑川博士と本郷さんの関係が語られず、本郷さんを改造したことに緑川博士が何の罪悪感もない様子だったのはちょっとびっくりでした。
そんな体にしてしまって申し訳ないという気持ちを少しでも示して欲しかった。むしろ「きみのために力を与えてやった」的な態度だったので、博士の株は下がったぞ、と。

ルリ子さんは美しくて強くて、好きだなこういう女の人。
「仮面ライダー THE FIRST」でも、本郷さんとあすかさん(名前はルリ子でなく「緑川あすか」だった)の関わりはわりと微妙だったし、本作のほうが二人の結びつきがしっかり描かれていて好感が持てました。

終盤の手前で、ルリ子さんが着替えをする場面、着替えただけでシャワーは浴びれなかったのかなとか、しょうもないことが心配でした。服は洗濯できたみたいだけど。
あ、別にシャワーシーンが見たかったわけじゃないです。

本郷さんが優しすぎる性格だったり、一文字さんの自由さだったり、基本的な部分はちゃんと踏襲されているので、ビジュアル的に最初は馴染めなかった(ヒゲはやめてくれ…と)ものの、物語が進んでいくうちにキャラ的にも好きになっていきました。
深紅のマフラーもいい味出してた。でもルリ子さん、いつもあの赤いマフラー持ち歩いてるんだろうか。用意がいいですね…??

「ケイ」は「ロボット刑事 」のKだし、チョウオーグは「イナズマン」だし、イチローは「キカイダー」の01だし、ショッカーライダーとか、オールドファンヘのサービス満載。
チョウオーグのダブルタイフーンを見たときは、そこまでやってくれるかと感激しましたよ。

本郷さんと一文字さんの掛け合いもよかった。「一文字くん」と言う本郷さんに「そこは呼び捨てだ」と返す一文字さん。
そういえば、「仮面ライダー THE FIRST」か「仮面ライダー THE NEXT」だったか覚えてないけど、本郷さんが一文字さんに「俺以外友達いないだろ」なんて言ってたな。

もうね、「本郷!」「一文字!」と呼び合うだけで感涙してしまって、細かいことはどーでもいいんだよ、になるため、観終わった後はただただ感動が残っているだけです。

一文字さんの「ショッカーの敵、人類の味方」や「お見せしよう」の台詞は「あー、もう最高」としか言えない。
マスクから吐血する描写なども、やっぱり村枝先生の「仮面ライダーSPIRITS」だったようで。コウモリオーグとのバトルも、「SPIRITS」の第1話が頭をよぎったし。
ルリ子さんが一文字さんをパリハライズするくだりも、「新SPRITS」を思い起こさせます。
エンディングクレジットに村枝先生の名前があって成程と思った次第。

マスクのリニューアルは桜島1号や新2号を意識してるのでしょう。
ファンの感極まるポイントを的確に突いてくる。

おやっさん、もとい立花さんや滝さんの立ち位置もサプライズで嬉しかった。最後の最後でやってくれるとはまた憎い。

ラストシーンは、TV版ではなく石ノ森先生のマンガ版を彷彿とさせて、とてもリスペクトが感じられました。
石ノ森先生作品の特徴として、孤高のヒーローというのは大切な要素で、「シン・仮面ライダー」もそこが丁寧に押さえられてます。

1号2号ライダーはリアルタイムでTVを観てたものの、なにせ幼稚園児だったため、正直あまり覚えてません。でも、仮面ライダーという存在は、その頃から魂に深く刻まれたのだと思う。きっとこの先も、生きている限り。

庵野監督、ありがとうございます。この作品を観れてよかった。

オールドファンの方でも賛否あるでしょうし、私も手放しで否の打ちどころがないとは言わないけれど、何度でも観たい映画のひとつになりました。

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