黒髪ロング

小さい頃、お母さんはよく私の髪をとかしてくれた

「綺麗な髪だから、いつまでも大切にするのよ」

お母さんは私によくこう言った
私は、お母さんの言いつけを守って黒くて長い、サラサラの髪を守り続けてきた

大きくなり、私は反抗期を迎えた
お母さんの言いつけを破り、髪を派手な色に染めた
学校にも行かなくなり、家にも帰らなくなった
それでもお母さんは、見捨てる事なく私の事を思ってくれていた
それを知ったのは、お母さんが体を壊して入院してからだった

痩せて弱々しくなったお母さんは、私の髪をとかしてくれていた頃とはまるで別人のようだった
私もお母さんも、あの頃から随分と容姿が変わってしまっていた

あの幸せだった頃に少しでも戻りたくて、私は髪を黒く染めた
その姿をお母さんに見せようとしたその日に、お母さんは天国へ行ってしまった

それから私は、黒髪のロングをずっと守り続けている
いつまでも、お母さんの事を忘れないように…

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