アズサノコト 其の壱

※当作品は「イツモノコト」、「カワッタコト」での主人公・梓の過去のできごとについて描写したものとなります。




梓の過去。中学時代。
当時美術部だった梓はキャンバスに絵を描いている

梓 「できた…」

顧問の先生が入ってくる


顧問「おお東雲、まだ残ってたのか」

梓 「先生!やっと描けました!」

顧問「どれどれ…おぉ!」

梓 「どう、ですか?」

顧問、絵と照らし合わせながら部屋中をチェックしている

顧問「…この空間の縁取り、リアルに近いようで描いた本人独自の芸術性が垣間見えるタッチ、そして何よりも…絵への愛情が溢れる繊細で優しい色使い…素晴らしい!!」

梓「提出が遅くなって本当にすみません」

顧問「いやいや!これほどの物を描くには時間がかかって当然だ!君は本当に絵を愛してるんだな」

梓「小さい頃から絵を描くのが好きなんです。この白い空間には実際に存在する物も、自分の頭の中だけにある物も全てを具現化して生み出せる。白いキャンバスはどんな色にも染められるからはっきりとその世界を創る事ができる…時々思うんです。自由っていうのはキャンバスの中にあるんじゃないかって…キャンバスの中に住む事が出来たら、どれだけ幸せなんだろう…」

顧問「…東雲?」

梓 「 あ、なんでもないです…私帰りますね」

顧問「?ああ…」

顧問はける

場転。梓の家

梓 「 …ただいま」


梓の母、花江が来る


花江「…どこに行ってたの」

梓 「 どこって…学校に」

花江、梓にビンタ

花江「どうしてこんな時間に帰って来るの?おかしいでしょ!授業はこんな遅くまで
やってないでしょ!?」

梓「ご…ごめんなさい…部活でね、提出する絵を書いてて」

花江、梓を痛めつける

花江「部活はやめろって言ったでしょ!あんたのするべき事は家事よ。私に全部押し付けてどういうつもりよ!私はあんたを産んだんだからその恩を返しなさい。それが今あんたのしなくちゃいけない事でしょ!!」

梓「 そ…そうだよね…ごめんなさい…お母さんが大変な思いをしてるのに私ったらバカだよね…」

花江「全くよ。本当あんた、父さんに似てるよ。どうせあんたも私を捨てるつもりでいるんでしょ?悪い所ばっかり似て…ふざけんじゃないわよ!!」

花江、梓に暴力

梓「 ごめんなさい…ごめんなさい…お父さんみたいになんか絶対にならないから…お母さんを支えるから…私、何かお手伝いするよ。何したらいいかな…?」

花江、手を止めてご機嫌になる

花江「それじゃあまずご飯を作ってもらおうかしら。食べ終わったら洗い物して部屋の掃除をして、洗濯と、風呂掃除もしてもらおうかしら。早めに全部終わらせるのよ」

梓「 …はい…わかりました」

花江「しっかりやるのよ?私への親孝行だと思ってね」

梓「 …は、はい…」

花江「声が小さい!!」

花江、梓にビンタ

梓「 はい!!…ごめんなさい…」

花江「ぼさっとしてないでさっさとやりなさい」

花江、部屋を出る。

梓「ごめんなさい…ごめんなさい…」


物語はアズサノコト其の弐へ続く…

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