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パンツ脱がせていいですか

友達と2人で旅行中、トイレに並んでいると立ち往生している親子がいた。車椅子に乗ったお母さんと、押している息子さん。えらく慌ててるのでなんでだろうと考えた。

“あ、性別が違うから入れないのか!多目的トイレないし”と気付いたので「よかったらわたし一緒に行ってきましょうか?」と声をかけた。

40代後半くらいの息子さんは「でも、でも」と迷っていたけどお母さんはもう限界っぽかった。「気をつけた方がいい事と、してほしい事を教えてください。」と息子さんに尋ねた。服の着脱が1人で出来ないので、便座に座るときに脱がせてあげてほしいとのこと。用を足すのと拭くのはできます、と。

このときわたしも友達もオムツの子どもが2人いたので全く抵抗がなかった。(フラグが立った)

息子さんに「じゃ、任せてください!」と軽く挨拶をして、車椅子を押してトイレの中に入った。息子さんは何度も何度も頭を下げた。かなり不安そうな顔をしている。



…ぐっ…車椅子おも!!!!
びっくりした…こんなに重いのか車椅子。便座に辿り着くまで「間に合いますか!おしっこ間に合いますか!」と声をかけまくったらお母さんは笑ってた。

やっと個室の前について、体を持ち上げる。
……いや、おもたっ!!!大人の体、重っ!!!!
ごめんなさい子どもと同じように考えて!ごめんなさいー!!(もちろん声には出してない)

友達と一緒に体を持ち上げて、腕を肩に回して支えたところでハッと気が付いた。
“見ず知らずの女にズボンを脱がされるのは恥ずかしいんじゃなかろうか”

「あのう…今更ですけど脱がしてもいいですか?」お母さん、また笑ってた。「いえいえ、情けないわよね、ありがとね」なにが情けないのかさっぱり分からなかったので「よかったです!脱がします!」と遠慮なくズボンを脱がせた。

「あの!パンツは!!!パンツも脱がせて大丈夫ですか!!」

「お願いします笑」

もうなんか楽しくなって、3人でずっと笑ってた。

さすがに用を足すときは恥ずかしいと思ったのでドアを閉めて外に出た。「なにかあったら中からノックして下さいね!」と伝えてから。なのにこっちからトントントントン叩いて「大丈夫ですかー!大丈夫ですかー!」と何度も声をかけてしまい、あれじゃたぶん、おしっこめっちゃ出にくかったと思う。

しばらくして「お願いしますぅ〜」と聞こえたので中に戻ってパンツとズボンを履かせ、車椅子に戻し、息子さんの元へ連れて行った。息子さん、立ったままソワソワした様子で待ってた。「ごめんなさい、本当にごめんなさい、ありがとうございます」とずっと頭を下げていた。

えええーーーーい!!表を上げーーい!!
面倒なんて思ってないし良いことをしたとも思ってない。ただ、貴重な体験ではあった。いつ身の回りに起きてもおかしくない、当たり前のこと。でも実は友達は少し抵抗があったようで、全く躊躇しないわたしを見て「やっぱり好き♡」と思ったそうな。

わたしは目の前で起きたことにただ対応しただけ。でもこうして書いたってことは、ちょっと嬉しかったんだろなと思う。てへ。

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