ノコスダイスディレクターズノート

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12 Feb 19, 5:22am
sugiki/Tack @sugiki
いつもお世話になっております。
Engamesの杉木です。

Engamesで日本の同人ゲームの商業化事業を行うことを検討しており、nokosu diceを出版出来ないかと考えております。
もし、ご興味がありましたら、一度お話させて頂けませんでしょうか。

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このダイレクトメッセージから全ては始まりました。この記事は、昨月Engamesにて出版しました『ノコスダイス』のディレクターズノートです。

※この記事は上杉カレー@dbs_curryさんが主宰される「Board Game Design Advent Calendar 2019」の記事です。

・製造の経過

ボードゲームを製品として完成させるまでには、おおよそ以下の工程をたどると思われます。

・企画→デベロップ→原稿作成→製造

今回のノコスダイスのプロジェクトでの各工程について、記します。


・企画

 ノコスダイスという、ゲームマーケットから生まれた名作トリテを、どうすればいかにインパクトがある形で市場流通させることができるだろうか。そもそも、作者のyskさんはOKしてくれるのだろうか。結果的に、拍子抜けするくらいすんなりとyskさんからぜひお願いしたいとのお話をいただき、やはりゲームマーケットにて発売するのが綺麗だろうということで、秋ゲムマを目標に動くことに。体制としては、普段よりEngamesのプロジェクトに参画いただいている別府さいさんにアートワーク全般、グラフィックデザインをお願いし、yskさんにデベロップにご協力いただくことに。全体のマネジメントは私の方でということでスタートしました。


・デベロップ

ノコスダイスの商業化にあたって、デベロップの焦点としたのは、3人プレイ時のバランスと、0トリック宣言のタイミングでした。

3人プレイのバランスを検討するにあたって、まずは4人プレイのノコスダイスがいかに均整のとれているものであるかをお話する必要があります。ノコスダイスの4人プレイにおいてのキーワード。それは『期待値が3.5』です。このゲームではあらゆる期待値が3.5になっているのです。

4人で14トリックを取り合うので、1人あたりの獲得トリック数の期待値は3.5、その他、ダイスの出目、カードのランクの期待値といったものがすべて3.5になっているのです。では、なるべくこの均整のとれた状態を3人プレイでも再現できないかと考えるのが、デベロップの腕の見せどころというもので、、、といろいろ考えてみたものの、結論としては同人版の際と同じルールに落ち着きました(^-^)/。

では、均整どうこうは置いといて、3人プレイ時に抜くランクを7ではなく、0にする、あるいは思い切って真ん中あたりの数値を抜いてしまうとどうなるかという、指針が元になったというよりはどうなるのが興味があってという方向性の変更をかけてテストプレイした結果、そこまでプレイ感が変わらなかったため、そのままに。

一方、0トリック宣言のタイミングについては、変更を入れました。こちらについては、SNS上で賛否両論上がっておりますが、デベロップの意図としては以下のようなものがありました。

まず、変更内容についておさらいすると、同人版の際は、ダイスが3つ以上手元に残っている際に0トリック宣言が可能としていましたが、製品版においては、ダイスドラフト終了後、1つめのトリックが開始される前にと、0トリック宣言ができるタイミングを前倒しし、0トリック宣言成功ボーナスをつけるというものです。

この変更により、0トリック宣言ができるタイミングに関して『ダイスが3つ以上』という条件を認識し、覚えておくという必要がなくなりました。よくよく考えてみればダイスが2つのときにも0トリック宣言が可能となると、強すぎるのでそんなわけが無いという類推は容易にできるものの、とはいえ、では3つのときなのか、4つのときなのかということはやはり覚えておかなくてはなりません。これはプレイアビリティを下げているという判断です。

また、ドラフト終了後、ただちに0トリック宣言を行うことで、トリックに入る前に0トリック宣言をしたプレイヤーとその他のプレイヤーの間に、1対他の構造が生まれ、パーティーゲーム感が増します。ノコスダイスをもう少しポップな形で遊んでもらいたいという思いがあったため、このような変更を行いました。

さらに、ドラフト終了後すぐに、そのような重大な(しかし稀にしか起こらない)意思決定ポイントがあることにより、ドラフトにより緊張感が生まれます。トランプ決定のためのダイスドラフトはこのゲームの中の大事なプロセスではあるのですが、やや焦点がぼやけていることは否めません。そこに、よりダイスの強い弱いを意識してのドラフトの必要性を入れ込むデベロップをかけることにより、ドラフトも緊張感を持って行えるようにできたかと思います。


・原稿作成

ノコスダイスは、箱、カード44枚、ダイス25個、ダイスバッグ1個、説明書1枚からなっています。

中でも、ダイスに関しては、デザイナーであるyskさんのこだわりから、木製ダイス、しかも可能であれば、Spielmaterialで売っている、ユーロゲームによくあるダイスを再現してほしいとのリクエストがありました。また、色弱対応も検討することにしまして、結果、ダイスをノコスダイス専用にオリジナルで設計することにしました。

ダイスの色弱対策は、赤と緑、青と紫という色弱の方にとっては見分けがしずらい2色に対して、白と黒という異なる出目の色をつけることにより実現ができました。製造過程において、青に黒、紫に白としていましたが、ダイスそのものの色味とのバランスから、青に白、紫に黒という変更を加えました。

カードも、色弱対応と、右利き左利き対応を行うため、カードの中心に対して左右に同じ情報を対称に載せるデザインとしました。

パッケージはシンプルかつ、深みを持っており、なにか惹きつけられるような箱表に。箱裏はトリックテイキングというややもするとメカニクスの説明に入ってしまいたくなりがちなジャンルであるところを、プレイによって体験できる感情の動きや昂りにフィーチャーした形での説明文を書くことで、異なる層へのアプローチも試みました。このようなアプローチを、私は『ずらし』と呼んでおり、製品を作る際に明確に意識しています。このゲームのメインの購入層では無いところに向けて訴求力のある作りにして、認知度、販売数を高めていくのです。


・製造

工場として選定したのは、Panda Game Manufacturing. (通称:パンダ)。

世界の工場とも呼ばれる中国、特にその中でもボードゲーム製造業者が密集しているのが上海および香港、そして香港の中国側対岸である深センで、今回、工場として選定したのは、Panda Game Manufacturing. (通称:パンダ)。深センにメインの工場があります。

パンダの特徴はなんと言っても、コンポーネントの高いクオリティと、そのマネジメント。特にアカウントマネージャーが全員ゲーマーである(!)ことから、プロジェクトをすすめる際に発注側が伝えたいこと、実現したいことに対する理解度がとてつもなく高いです。ただ、作らされているのではなく、良いゲームをちゃんと作ろうとしている感じがします。

Engamesとしては最初の出版プロジェクト、『アナクロニー』日本語版のときよりお付き合いがある工場で、『ウイングスパン』や『サイズ-大鎌戦役-』などのヒット作をはじめとして、BGGtop100の3割ほどは、この工場で製造されています。

工場の選定においては、コスト面から中国を選ぶことは決めており、その中でも、初めて一から原稿を作ることもあって、とにかく、安定性を求めました。

パンダのプロジェクトマネジメントは大変しっかりしており、工程ごとのチェックポイントも非常に細かく定められています。また、定期的なオンラインでのミーティングによるサポートもあり、パンダのやり方に従っていれば、大きなトラブルになることなくゲームの製造が行えるのではないかと思います。そのため、同人ゲームでも、大きな部数を刷り、ある程度納期に余裕がある場合には、ぜひ検討してみてもらいたい工場です。紹介できます。ミニマムは1,500部からです。


と、各工程に関してただつらつらと書いたのみになってしまいましたが、ノコスダイスのディレクターズノートにかえさせていただきます。


※お詫び

現在、ノコスダイスは市場流通数が少なく、完売となっております。二次入荷分が来週もしくは年明け早々の流通となり、以後は流通が安定するかと思います。


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