上京した女の話 3

二度目の冬が来た。東京は文化施設がたくさんある。そんなことは上京する前から知っていたが、実際に住んでみると本当にたくさんある。いや、正確に言えば、ある「らしい」。SNSで各種文化施設の気配を感じ取るだけで一日が終わることが多いのがやや残念だ。

そのSNSにはマニキュアが素敵な女子がいる。文章も素敵だから人気者だろうと思うが、それを自慢しないところがまたスタイリッシュだ。私と歳は近いはずだが、私は手を見せないことにしている。マニキュアが下手だからではない。学校の図画工作では作品を褒めてもらっていたからマニキュアも上手にできるはずだ。わたしがそれをしないのは、手の肌が同時に映り込むからだ。しばらく飲食関連で洗い物をよくしていたので手の肌に引け目がある。

そんな話をすると、みな「気にならない」と言う。だがそうだろうか。油汚れが落ちていない気がする。このべたつきの悩みを話すと、「もうその仕事は終わったから」とか「気にしすぎだから」と言われる。たしかに以前よりはましになった気がする。いや、それでもべたつく。今日は通院日だったから主治医に相談した。すると「むしろガサガサですよ。ワセリンを処方しましょうか」と言い始めた。ガサガサしているのは医者の感受性のほうではないか。私は早々に話を切り上げて戸外へ出た。

今年は暖冬だと言うが、日が落ちるのは早い。風も寒い。だが、まだ少し時間はある。本屋に行って、待ちに待った復刊の文庫本を買おう。