上京した女の話 10

私は、夫には恵まれたが、男運は悪い。うだつの上がらない五十男から標的にされているふしがある。仕事も人間関係も不得手、しかも尊大で粘着質という五十男から狙われている気がする。気がする、ではない。げんにちょっとした被害に遭っているのだ。発言小町に投稿しようかとも思うが、また格好のお説教の標的になるのも嫌だ。どうしたものか。

それはともかく、カップヌードルの知人から電話があった。いわく、「今日の新聞に、ローファームも裁判官も大変」という記事があったが親戚女子は息災か、というものだった。何やら裁判官は転勤続きで近親者の死に目にも会えず、判事補の二割欠員が続いているのだという。親戚女子は出藍の誉れにも見えるが、私からみたらかつてのガングロギャルと大して変わらない印象ばかりだ。あとは、整形しすぎだ。もともと美形なのだから変な小細工はよしたほうがいいのに。しかしそこでカップヌードルの男が「プロは心身のメンテナンスが大事だから」と先方の肩を持つ。「結婚したいの?」と聞くと、「五秒で離縁されると思う」と言い出して旗幟不鮮明なので、これだから似非インテリ風情は理屈ばかりつけて行動に移さないのだとの感を強くする。

彼はカップヌードルをまたすすっている。本人によれば、カップヌードルにもそれぞれ個性があるそうだ。なんでも製造時の周波数と電磁気によって味が変わるのだという。そんな仮説を立てる暇があったら早く婚活しろ、もうデッドラインだぞ、と言っても聞かない。仕方ないから私は私の原稿に戻る。