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アイドルにボイトレが必要だと思う理由(高音・声量編)

たくさんのアイドルさんのボイトレを担当している身として、そして自分がアイドルだったころの記憶と照らし合わせながら、アイドルにボイトレが必要だと考える理由を書いていきます。
ポジショントークでは!?と捉えられてしまう可能性もありますので、なるべく論理的に説明していきます。

①高音や声量を「根性」だけでなんとかしようとしてしまうから
これは自分自身にも思い当たる節がありまくり、また普段ライブ回数の多いアイドルさんたちの声を聴きながら常々思っております。
私はいつもレッスンの初回は生徒さんのヒアリングから始めておりますが、お悩みとして最も多いのが「高音が出ない(苦しい・ひっくり返ってしまう)」次いで「声量が足りない」というものです。
そもそもアイドルの楽曲は普通のJポップの女性シンガーよりも最高音が高く設定されている傾向が高いです。
最近は様々なコンセプトを持つアイドルさんが増えましたが、やはり『アイドル=明るい・元気』というイメージをそのまま楽曲に当てはめることが多いのでどうしてもキーが高く、なるのだと思っています(さらにアップテンポであることが多いので難易度があがったり)。
そして「元気!明るい!」歌唱を求められるため、とんでもない高音域を「地声で出す」ことを要求されます。
我々ボイストレーナーは、難しい言い方をすると「レジスターリングを移行する」と言って『この音域は地声だけど、このあたりからは地声に聴こえるけど丸々地声ではない声帯の使い方に徐々に変えていくんだよね〜』っていうことを知っていますが(先生によってはミックスボイスと言ったりしますね。地声ですごい高いところまで歌えちゃう歌手は自然にこれをやっていると思われます。)
このことを知らない場合はどんな高さまでも頑張って地声で張り上げる!と、気合いと根性、パワー頼りの発声に傾いて癖付いていきます。

その結果、声帯が重たく分厚いままパワー頼りで高音まで引っ張り上げていくことで
・いわゆる喉締め発声といった聴き苦しい声
・ピッチが届かない
・ひっくり返ってヒョロヒョロのファルセットに急激に切り替わってしまう
・音量の調整やビブラートなどコントロールが不可能に
・本人も顔を歪めるほど体感が苦しい
etc…

という問題が起こります。何を隠そう私自身も全くもって上記に当てはまっておりました。
この状態が続くと、過緊張発声を引き起こしたり、長時間歌えないなどの弊害を引き起こします。

私の経験上、アイドル歴が長く頑張り屋さんな子ほどこの傾向が強いような気がしています。
過緊張を緩めるエクササイズをしてから低音〜高音までを繋げるためのエクササイズをしてあげると一回目のレッスンで感覚を掴んでいく生徒さんもたくさんいます(私は年単位でなおすのにかかっているので一発でできちゃう子うらやましいです・・)。
だいたい皆さん「高音が楽だった」とか「新感覚でぶっちゃけどうなってんのかわからない」とかいって帰っていきます。笑
もちろん、音階練習で一番本人が感覚を掴みやすいツールでやった結果なので、すぐに楽曲に落とし込めるわけではなく、ここからその感覚を元に練習をしていく必要があります。
とにかく今までの張り上げとは全然違うんだということを、理屈と感覚セットで覚えてもらうようにしています。

つまり高音発声は『気合い・根性・パワー一択!!』ではなく
『テクニック・バランス感覚』の方が近いということです。
筋トレをガシガシというよりは、どちらかといえば自転車に乗ったり、お箸を使ったりする練習のイメージでしょうか。
ボイトレでは、その人にあった自転車の補助輪や、みんなが子供の時に使ったお箸練習用の輪っかみたいなやつをスッと差し出すみたいなことをやっています。

声量に関しても、多少筋トレ的要素が必要な場合もありますが、テクニックで解決していきます。
気合いと根性で培ってしまった過緊張によって声帯がうまく使えず声量が逆に落ちてしまっているケースも少ないですがありえます。
アイドルの元気系の楽曲はオケも強めなので、オケに負けないように頑張って声を張っていることが多いですからね。
アイドルってすごいんですよほんと。


まだ全然「アイドルがボイトレをした方がいいと思う理由」があるのですが、①だけ結構長くなってしまったため、②以降も近いうちに公開します!

お読みいただきありがとうございました。







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