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アイドルにボイトレが必要だと思う理由(環境編)

年が明けましたね。みなさま2022年もよろしくお願いいたします。
私は今年も生徒さんの発声や歌を、それぞれの理想に近づけられるように精進いたします。

さて、前回アイドルにボイトレが必要だと思う理由(高音・声量編)を書きましたが、今回はその続きの環境編です。
あくまで、ボイストレーナーとして約70組ほどのアイドルさんと関わらせていただいたり、解剖学や音声学を学ぶ中で日々個人的に思うことを書いているつもりです。自身の経験もちょっと入ってます。
決して不安を煽ったり、ボイトレを受けないことが悪いと言いたいわけではありませんのでご理解いただけますと幸いです。
アイドルや運営の皆さんには、この記事を読んで「ボイトレではこういうことをやるんだな」と知っていただいたり、実際私の教室に限らずボイトレをどこかで受ける際に「このような悩みや問題点があるからこうしてほしい」などトレーナーへ細かいオーダーをしたい時に役立つといいなと思っております。
アイドルファンの皆さんが読む場合には「アイドル、こんな過酷な環境下で頑張って歌って踊ってるんだなあ!すげえ!やっぱアイドルすき!尊い!」と加速してもらえますと嬉しいですね。

前置きが長くなりましたが本題です。

ここでいう『環境』というものはアイドルの日々の活動に関するものです。
思った以上に過酷だなと感じるかもしれませんが説明させていただきます。

アイドルの活動はやはり代表的なものですと歌って踊ってのライブでしょう。
実際にレッスンに来てくれているアイドルちゃんたちにライブの頻度を尋ねると、
コンスタントに週に2〜3回、時には1日に複数回講演をする『2回し』なる日もあるようです。

だいたい1公演20〜30分のことが多いようで、週に3回ライブがあるとして単純計算で1ヶ月あたり300〜400分前後全力で歌って踊ってをしていることになります。
プラス、長時間のレッスンがありますので歌って踊っている時間だけでも相当な時間量になります。

これもレッスン中のヒアリングで多く寄せられる意見ですが、ライブ会場での音声チェックリハーサルというものの時間が取れないことが少なくないようです。
音声チェックリハーサルでは「中音(なかおと)」といって、普段お客さんが演奏を聴いているフロア向けのスピーカーではなく、演者向けのスピーカーから出る音のバランスの調整をしています。ステージ真ん中、アイドルに向かって置いてあるスピーカーは「ころがし」などと言われそこそこ有名ですかね。
(ライブアイドルはイヤモニをつけてのパフォーマンスはごく稀ですので基本的にはスピーカーを通して自分の歌声やオケを聴くことになります。)

例えば、リハーサルの際にオケ(ボーカルのない伴奏や「かぶせ」と言ってメンバーの声がうっすら乗ったもの)が大きすぎて、自分の歌声が全く聞こえなかったとします。その場合はPAさん(音響屋さん)に合図をして、歌唱がしやすいレベルまでオケの音量を下げる、もしくは自分の声の返しの音量を上げるという調整をします。
つまり音声チェックができないままぶっつけで本番に臨むと、オケと自分の声のバランスが悪くて音程やリズムが取りづらいままパフォーマンスをしなくてはならない可能性があるということです。
プロのPAさんが会場にいてくれる場合はもちろんあらかじめ歌いやすいバランスにしてくれていたり、その場で臨機応変に変えてくれますが、経験上やはり会場によって歌いやすい・歌いにくいがあるのは確かです。
特にオケが大きすぎ、もしくは自分の声が小さすぎの場合は、音程を取るために叫ぶように歌わなければならないことも多々あります。
これがアイドルの歌唱環境が過酷な理由の一つ目です。

それからもうライブとセットで定番化して来た「特典会」。
ライブ後、体や喉を休ませる暇もなくすぐに特典会にうつるケースも珍しくありません。もちろん普段顔を合わせることがなかなかできないファンの方に直接感謝を伝えられる大切な機会の一つなので外すことはできません。
しかし、実際に現場を知っている人ならご存知かとは思いますが、ガヤガヤとした会場でお話をするとなるとかなり声を張らないと会話が成立しないんですよね。
しかも最近は新型コロナウイルス対策で、マスク+アクリル板などの仕切り隔てることがあたりまえになって来ていますから、従来よりもより声量が必要です。
それに加えアイドルはファンとおしゃべりする時に(というか女性は?)どうしても一番喉が楽な音域(至適音域)よりも少し高めの声を出してしまいがちなのでこれも実は多少なりとも負担となります。

そして最近新しく活動の一環としてポピュラーになってきたのが「showroom」「イチナナLive」「ミクチャ」などのライブ配信です。
基本的に長時間の配信をみんな頑張っていますね。
アイテムを投げてもらえるととつい嬉しくて、上記の至適音域をかなり逸脱した声で連続したリアクションを取っている様子もよく見受けられます(ボイストレーナー目線のドライな書き方になってしまい申し訳ありません泣)。
実際、最近はライバーさんがよく喉の調子を悪くしてしまうので発声指導や声の衛生管理指導をお願いしますとオファーをいただくことも増えて来ました。

このように発声環境のみを見てみても、アイドルはかなり喉を酷使しているということをご理解いただけるかと思います。

レッスンでは、正しい発声の指導はもちろん、日常生活で気をつけられる喉の守り方をレクチャーしたりテキストでお渡ししています。
必要以上にがなり、どなりをしなくていいように周波数計を見ながらマイクに乗りやすい声を探すなんていうオタクなこともやっております。。

「声帯結節やポリープ、発声障害などで活動をお休みしなくてはならない」なんてことが起こる前に予防できるよう私も生徒さんの声をよく聞いて、場合によっては全く声を出さないレッスンをしたり、医療機関への受診を勧めることもあります。

もはや「自分自身のケアをして健康的に活動をする」という心構えがアイドル活動をする上では必須かもしれませんね。




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