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ミタカの青大将

久しぶりに三鷹の人見街道を歩いていた。
片側一車線、両方で二車線のそれなりの道なのに歩道がない。
ないばかりか歩行者のエリアを示すラインすらなく、
にも関わらず、自転車通行を示す路上のサインが無機的に続いている。
歩行者としては、非常に肩身が狭い。

とはいえ、こんな事態にいちいち苛立っているかといえばそうでもなく、
三鷹をそれなりに歩いたことある人は心得ていようが、
これは三鷹の常なのである。
下連雀のあたりだって、たいがいなのである。
歩行者や自転車は、何とも肩身が狭い。
そんな構成の道が少なくない。
三鷹の道って、もともとそんな感じ。

きょうもちょっと歩いてそのことを思い出してきて、
諦観の境地に至った。

とはいえ、次々と自動車が傍らを通り過ぎていくなか、
歩道がないと、何とも肩身が狭い。

世の中の人はみんな歩行者なんだ、歩いてて何が悪い、
自動車を運転している人だって、車を降りればひとりの歩行者じゃないか、
置かれている境遇の違いで、クラクションを鳴らされる筋合いはない!

などと、車にドヤされたときに備えて過剰防衛気味に心構えを用意しつつ、
しかし、謙虚にひたすら路肩に寄って歩いていた。

すると、その途上にぐるぐる丸まっている存在が。
午後の日差しに、妙に輝いている。

それは、なんとアオダイショウ!

幼少の一時期、神奈川の山近くに暮らしていたので、
蛇の種類は、いちおう知っている。
登校の途中でマムシに遭ったら気をつけろ、ということで。

で、きょうのは、アオダイショウ。
マムシではないと判別したが、
気をつけて通らなければ。
かつ、車にも気をつけて、よける幅はできるだけ少なく…。

と、細心の注意を払って通り過ぎようとしたのに、
ヤツはその瞬間に口を大きく開けて威嚇してきた!
二度、三度と。

さすがに驚いた。

アオダイショウの口の中のピンク色を
きょうほどしっかり見たことはないだろう。

冷静に考えるなら、ヤツも本気で噛みつくつもりはなかったに違いない。
正直、最初の瞬間は「お前が?」と思った。
体も大きくないし。
大した毒もないから、いざ戦いが始まったら、蛇のほうが命を落とすかもしれない。

そんななかでの威嚇は、むしろ命をかけてのハッタリ。
立派なものである。
自分もかくありたい、と何か思っちゃた午後。

驚きすぎて、写真を撮れなかった(引き返して撮る気にもならなかった)。
アオダイショウ氏の完全勝利。





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