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病と恋愛事情 最終話 意外な場所での告白

 翌日、兄貴は1番最初に昨夜寝落ちたくせに1番最後に目を覚ました。その頃には既に朝飯を食べる準備が出来ていた。

今日、俺は仕事だ。母は兄貴を起こした。あと5分……。と寝ぼけているようだ。

「俺は一旦自宅に戻ってから仕事に行くわ」

「わかったよ、朝ご飯食べて行かないの?」

「朝ご飯はいらないよ。ありがとうな」

そっか、いってらっしゃい、と言って送り出してくれた。

俺は自宅に帰って来ながらあることを考えていた。今の時刻は午前7時30分頃。麻沙美は起きているだろうか。遅番や夜勤もあるからどうだろう。

自宅に着いてLINEを送った。麻沙美に。

[おはよう! 起きてるか? 近々、さくらちゃんも含めて食事をしにいかないか? 話したいことがあるんだ」

すぐに返事は来なかった。8時を過ぎたので俺は出勤した。

 昼休みになり、スマホを確認した。今日はいつになくお客さんが来てスマホを見る時間さえなかった。LINEがきていた。内容は、

[返事遅くなってごめんね。今日夜勤だから寝てた。あたしは休みの日か夜勤明けの夜ならいいよ]

俺はすぐに返信した。

[そうなんだ。明日の夜はどうだ? 7時頃]

少し時間をおいてから、

[うん、いいよ。さくらもその時間なら家にいるから]

[わかった。その時間に迎えに行くから]

兄貴はどうなっただろう。訊いてみようと思いLINEを送った。

[あれから母さんと話したか? 婚約したということ]

返事は割と早く返ってきた。

[さっき話したぞ。母さん、喜んでたわ]

俺は、おーっ! と思い、

[良かったな。フィアンセ、大事にしろよ]

と、送信した。

[お前もがんばれよ! 彼女だいじにしろよ!]

言い返された、と思い俺はふき出してしまった。

 翌日の夜――

 俺は緊張していた。らしくない、と自分でも思う。なぜ、緊張しているかというと、これからとても大切なことを彼女につたえようとしているから。この機をのがしたら俺の人生はどうなるだろう。

 今の時刻は夜7時30分ごろ。これから麻沙美と一緒に向かおうとしているところはパスタがおいしいと有名な店。混んでいるだろうか。予約はいらないはずだから電話はしていない。

 とりあえず彼女の家に行こう。話は会ってから。マイカーに乗り出発した。空を見上げると星が見えた。この分だと明日は晴れかな。冬の夜の空気は凛としていて気持ちがいい。でも、長居をするとさむくなってしまう。かぜをひかないように気を付けないと。体調管理も仕事のうちだから。

 麻沙美たちのいるアパートに着いたころには車の中はまだ寒いままだった。いつもの場所に俺は車を停め車から降りて家のチャイムを鳴らした。ちなみに今の俺の服装は青いセーターの上に黒っぽいジャケットを羽織り、その上から黒いダウンジャケットを着ている。下はブルージーンズだ。靴は黒いスニーカーだ。最初に出てきたのはさくらちゃんだ。ピンクのセーターの上にネイビーのピーコートを羽織っていて、下はひざ下丈の紺色のスカートをはいている。あとから出て来た麻沙美はネイビーのワンピースをきて、その上から白いダッフルコートをきている。少し寒そうに見えたのは気のせいか。

「こんばんは、晃さん」

そう言ったのはさくらちゃんだ。相変わらず麻沙美に似て綺麗な子だ。

「オッス! さくらちゃん。元気か?」

「元気だよ!」

微笑みながらそう言った。

「おっ! 麻沙美。行くぞ」

うん、とブーツを履きながら言った。

「どこのお店に行くの?」

俺はにやにやしながら、

「行けばわかるよ」

「晃さん、もしかしてステーキ?」

さくらちゃんは目を輝かせながら喋っている。

俺はあえて返事をしなかった。返事を待っているのか、さくらちゃんの視線が痛い。まあ、いい。連れて行けば分かる。

助手席に麻沙美が乗り、後部座席にさくらちゃんが乗った。俺が運転席に乗るとさくらちゃんは、

「レッツゴー!」

と、叫んだ。俺と麻沙美は、

「おー!」

と返事をした。

もう少しで夜8時になろうとしていた。確かあそこのパスタ屋は夜中の12時までやっていたはず。

パスタ屋には8時30分頃着いた。国道沿いにあるパスタ屋を走りながら見て駐車場に車を停めた。建物の中は真っ暗闇でどうやら今日は休みのようだ。

「あら、休みだ」

「そうね。でも、お洒落なお店ね」

と、麻沙美は行った。

俺はほかにお洒落な店を知らない。どうしよう。

「ところで何か話があったの?」

「……ああ。ある」

「ここで話せる?」

俺は考えた。ここでか。

「本当はもっと雰囲気のあるところで言いたかったけど、まあ、3人きりだからここでもいいかもな」

麻沙美は黙っている。

「麻沙美とさくらちゃんに訊くわ。まず、さくらちゃんから。」

俺はさくらちゃんの目を見ながら言った。

「俺をお父さんって思えるか?」

「えっ! ん……。いつかはこういう日がくるとは思ってた」

「覚悟はできたてたのか」

うん、と笑顔だった。

「じゃあ、麻沙美に」

はい、と緊張している模様。俺も緊張してきた。

「俺と……俺と結婚してくれないか」

少しの沈黙のあと、

「はい、よろしくお願いします」

俺は一安心した。本当によかった。断られるかと思ったから。

「今まで晃さんと呼んでそれで慣れていたから、お父さんと呼ぶのは何か照れるな」

と、さくらちゃんは言った。

「徐々に慣れてくれたらいいよ」

彼女は頷いた。

 これからは1人じゃなく3人での生活になる。どんな生活になることやら。でも、笑いの絶えない家庭にしたいな。俺はそう思った。

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