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【連載小説】一途な気持ち 6話 仕事のやり方

#一途な気持ち

 検査の結果、父は脳出血だという。処置が早くて一命をとりとめた。あそこで俺が父が倒れたことに気付かなかったら、どうなっていただろう。脳出血という病気は、俺には馴染みがない。なので、ネットで見てみた。どうやら後遺症が残るらしい。代表的なものとして、運動麻痺、感覚障害、言語障害、嚥下障害があるらしい。記事を読んでみたけれど、難しくてよくわからなかった。

 平均入院日数は100日くらいらしい。そんなにいないのか、3ヶ月とちょっとだ。仕事に支障が出るかもしれない。母親がいるけれど、親父ほど仕事はできないだろう。今は夏真っ盛りだから、凄く忙しい時期だ。とんだ痛手だ。

 その夜、俺は母親と話し合った。今後の父のことと、仕事のこと。俺が思い付いたのは、じいちゃんなら仕事を覚えているかもしれない。母親にそう言うと、
「あ! おじいちゃんね。訊いてみようか」
 今の時刻は20時30分くらい。じいちゃんは部屋でばあちゃんと2人でいてテレビを観ていた。NHKでニュースが放送されていたので、それをソファに座って。俺が来たことに気付いて喋り出した。
「おお、どうした、大輔。わしらの部屋に来るなんて珍しいじゃないか」
 ばあちゃんもこちらに向き、
「あら、大輔。ほんと珍しいね」
「親父が入院しちゃったから、一通り仕事覚えてる人がいなくてさ。じいちゃんなら知ってるかと思って来たのさ」
「うーん、わしの古いやり方でよければ覚えているけど、それじゃあまずいだろ?」
「そうだねえ、どうしようかなぁ……」
 じいちゃんは言った。
「それこそお前、外国に行って農業の勉強してきたんだろ? それを活かせばいいじゃないか」
「それは親父にも言われているけど、海外の方法じゃだめだっていうんだ」
「なんでだ?」
 俺は頭を左右に振って、
「わからない。自分のやり方が1番だと思ってるんじゃないかな」
「でも、今はそんなことも言ってられないだろう?」
「そうなんだよねえ」
「それか、去年やったことを思い出しつつやってみるか」
「まあ、それが1番なんだわ」
 じいちゃんは結論を言った。
「じゃあ、そうしよう。変にやり方変えても信二しんじが復帰した時まずいだろう」
 
 親父は本当に復帰できるのだろうか。後遺症が残るかもしれないというのに。その時はその時だな。親父がもし、働けなくなったら、俺のやり方に方向転換することにする。もちろん、親父の許可を得てからだけど。

                             つづく……

 

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