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友情と恋愛 4話 祖母の死去

 今は午後7時30分過ぎ。俺は健太にLINEを送った。

<ホテルのキャンセル料を半分はらえ!>

と。勢いよく<!> を付けて。返事はすぐにきた。

<いくらだよ?>

 俺は、おっ! 払う気があるのだな、と思った。まあ、当たり前だが。

<4200円だ>

 少しの間があり、

<高いな>

 と、きた。

<仕方ないだろ! お前のせいだ!>

 また健太は黙った。図星だからだろう。

<いつまでに払えばいいんだ?>

<明日までだ>

<……わかった>

<俺の寮まで持ってきてくれよ>

 そう言って、電話を切った。

 そういえば、あいつ、俺の寮の場所知っているのか? 来たことないはずだ。なぜ、健太は、寮の場所知らない、と言わないのだ。本当に、払いに来る気はあるのか?もう一度LINEした。

<健太、俺がいる寮の場所、知らないだろ?>

 何をしているのか知らないが、今日はLINEの返信がなかった。まあ、明日でもいいや、と思い明日も仕事なので寝ることにした。

 翌日。

 七時にスマホのアラームが鳴った。

 よく見てみると、LINEが来ていた。きっと、健太からだろう。LINEを開いてみた。相手は親からだった。意外だ、滅多に連絡を寄越さないのに。

<竜也、おばあちゃんが亡くなった。今日、仕事終わってからでいいから、帰って来て>

 何! ばあちゃんが……。俺は急に悲しくなってきた。悲しみを堪えて俺は、

<わかった>

 と、LINEを送った。

 ばあちゃんには、俺が学生の頃、世話になった。

 小遣いもくれたし、俺が、風邪をひいて寝込んでいると、母親よりも早く様子を見にきてくれて看病してくれた。

 優しい人だった。

 とりあえず、仕事に行かなくては。会社にも三~四日休むと言わなければならない。給料が減ってしまうけど、仕方ない。まさか、通夜や告別式を欠席して、仕事に行くわけにいかないだろう。大好きなばあちゃんが亡くなったんだ、参加しないと。

 昼休憩の時間になり、ばあちゃんのことが気になり、母親の携帯に電話をかけた。遺体ではあるが、もう家に来ているのか、ということを訊いた。すると、すでに葬儀屋が来て横になっている状態らしい。入棺前におくりびとが来て、からだを綺麗に拭くのは明日の午前中だから、その場に立ち会うことはできる。

 昼ご飯を食べ終わってから、自室で横になっていた。ばあちゃんとの思い出が脳裏をよぎる。俺は果たして、ばあちゃんが火葬場で焼かれ、骨になってしまった場面で平常心でいられるだろうか……。自信がない。でも、そんな時だから泣くのは許されるだろう。

 そんなことを考えている内に、十三時五分前になっていた。そろそろ、工場に行くか、と思い立ち上がって向かった。

 十七時になり、班長にばあちゃんが亡くなったから、休む旨を話した。ボソッと、

「この忙しい時に」

と、言われたので、

「仕方ないじゃないですか!」

とつい、怒鳴ってしまった。班長は黙っていた。

 まずかったかな、と思ったけど後の祭り。

「ずいぶんと態度がでかいな」

 と、言われ、今度は俺が黙る番だ。無言でいると、

「何だ、さっきの勢いはどうした」

 そう言われムカついた。短気な俺だけど、反抗するのは我慢した。そして、俺は何事もなかったかのように、工場の外に、

「お疲れ様でした」

 と、言いながら出た。

 パートのおばちゃんが後を追いかけて来て、

「竜也君!」

 俺は何も言わずに振り向いた。

 険しい表情だったからか、おばちゃんは俺の顔を凝視した。

「何スか?」

「今、班長に怒鳴ったでしょう、謝ってきなさい!」

 このババア、頭おかしいんじゃないか。悪いのは向こうだ、なぜ、俺が謝らなくちゃいけないのだ。そう思ったので、

「それは、無理です。悪いのは、班長だから」

 そう言った。だが、

「それにしたって、上司なんだから。まずいよ。今後の関係が心配じゃないの?」

 言われたが、

「いいんだ、俺は今から実家に帰るから、急いでるんだ」

 苛々しながら言い返した。おばちゃんは、呆れたのかわからないけれど、去っていく俺にそれ以上何も言わなかった。

 俺は、実家に帰る準備を始めた。

 服、ジーンズ、靴下、下着を数枚ずつ二つのバッグに入れて、とりあえず車に積んだ。もう一度、部屋に戻り、スマホと財布と煙草と鍵を持って部屋を出た。

 煙草を一本取り出し、火を点けた。車のエンジンをかけ、出発した。

 ラッシュアワーだからだろう、交通量が多い。気をつけて運転しないと事故ったら大変だ。

 煙草はすでに吸い終わっている。

 喉が渇いたので、コンビニに寄り、コーラを買った。

 晩飯は実家で食おう。今夜のおかずは何かな。俺だけ食いたいおかずを買うわけにいかないしな。身内は、両親・妹・伯父さん・伯母さん達か。あと、従兄弟もいた。伯父さんとはFacebookをやっていて、俺も伯父さんと友達になっているのでその話題で話せるから楽しい。伯父さんも、俺も元気が取り得なので盛り上がって楽しい。でも、今回は、ばあちゃんが亡くなって集まるわけだから、あんまり賑やかにはできないだろう。

 運転中、睡魔に襲われた。危うくセンターラインをはみ出しそうになるのを堪えた。そういうことが何度かあった。

 その時、LINEがきた。

 誰からだろう?

 本当は駄目だが、信号が赤になった時、見てみた。

 健太からだ。内容は、

<今からキャンセル料、払いに行っていいか?>

 と、いうもの。俺は信号をちらちら見ながら、返事を打った。

<今、実家に向かってるんだ。ばあちゃんが亡くなったから>

 対向車と、バックミラーを見たが、パトカーの姿はない。

 そこまで打って送信した。数分でLINEがきた。健太からだろう。もう、走り出してしまったので、実家に着いてから見ることにする。


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