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【連載小説】一途な気持ち 14話 心の準備

#一途な気持ち #心の準備

 じいちゃんが俺の親父を見て、
「なんだか忠、痩せたのか。ばあさん、そう思わないか?」
 と訊いた。するとばあちゃんは答えた。
「そう言われてみれば痩せたように見えるね」
 じいちゃんは更にしゃべった。
「忠、ずーっと点滴で栄養を体にいれてるのかな。もちろん栄養以外にも薬の点滴はしているんだろうけど」

 俺は覚悟を決めてもらおうと思い、弟とじいちゃん、ばあちゃんを病室の外に出てもらった。病室から少し離れたところに移動した。じいちゃんは、
「なんだ、大輔。どうしたっていうんだ」
 と不思議そうな顔をして言った。今度は俺が話しだした。
「誠二とじいちゃんとばあちゃんの三人に覚悟してもらうために言うけど、主治医が言うには余命三ヶ月らしいんだ」
 誠二は、
「え! マジで!?」
 と驚いた様子で俺を見ていた。じいちゃんは、
「本当か!? その話し」
 と、言った。俺はじいちゃんをまっすぐ見据えて、
「主治医から聞いた話だ。嘘を言ってどうする」
 そう伝えた。ばあちゃんはなにも言わず既に涙を流していた。俺も泣きたくなってきたが、なんとか堪えた。親父がこんなことになったからには、長男の俺がしっかりしなければ。泣いてなんかいられない。
「俺が今言ったのは三人に親父の死を覚悟してもらうためなんだ。突然、亡くなったら気持ちのやり場に困るだろ」
 誠二は、
「確かに事前に知れて覚悟はできた。教えてくれてよかった。これで急激なショックはないかもしれないな」
 と、言い俺は訊いた。
「じいちゃんやばあちゃんはどうだ? 覚悟はできたか?」
 じいちゃんは暗い表情をしながら言った。
「わしやばあさんは、忠は治るものだと話していたからそんな事態になってるとは知らなかった。今は覚悟というか、ショックのほうがおおきいな。ばあさんも同じだと思う。どうだ? ばあさん」
 今度はばあちゃんが喋り出した。
「確かにショックだね……今は」
 俺は言った。
「今はショックでも、親父が亡くなって急なショックより覚悟ができてるほうがいいと思うんだ」
 じいちゃんは、
「まあ……そうだな。なんていう病名だ?」
 と質問した。
「脳出血だよ」
 ばあちゃんは嗚咽を漏らしながら喋った。
「……なんで……こんなことに……ワシらより先に逝くかもしれないなんて……でも前もって教えてくれたから心の準備はできそうだよ。ありがとね……」
 俺の考えは間違えじゃなかったみたいだ。

 田下律子は何をしているだろうか。不意に思い付いた。帰ったらメールをしてみよう。元気にしていると思うが。

                            つづく……

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