2020年1月の記事一覧
病と恋愛事情 二十七話 見舞い②
「こんにちは!」
言いながら見渡すと四人部屋。晃は入口から見て左側の手前に横になっていた。点滴をしている。何に効くのかな。
「おっ、麻沙美とさくらちゃん。来てくれたのか」
晃は元気がない。病気が悪化したのかもしれない。さくらがあたしより先に喋りだした。
「晃さん、大丈夫?」
彼は苦笑いを浮かべながら、
「あまり大丈夫じゃないな。すまんな、心配かけて」
あたしは売店で買ったものを手渡した。
「これ。
病と恋愛事情 二十八話 大切な部下
麻沙美とさくらちゃんがお見舞いに来てくれてから約一週間が経つ。俺は大分回復してきた。点滴と休養を取ったお陰だろう。横になっているとLINEがきた。すぐに開いてみると副店長の福原大介からだ。本文は、
[お疲れ様です。今からお見舞いに行っていいですか?]
というもの。暇だから大歓迎だ。
[お疲れ。良いぞ、待ってる]
今月のシフト表は持ってきてあるので引き出しから取り出して見た。
「今日の休みは…
病と恋愛事情 二十九話 友人夫婦の訪問
翌日になり、自分の置時計を見るといまは午後2時くらい。いまから面会が許される時間帯。だれかこないかなぁ。すると、ガラガラ声であらわれたのは母だった。入院の保証人になってもらった時に会ったとき以来だ。あいかわらず元気そう。
「晃」
「うん?」
「調子は良いんでしょ?」
母の言いかたは決め付けた言いかただ。良くない。
「俺だって一応入院患者だ。調子悪いときもあるよ」
そばにいる年輩の女性は、なぜ
病と恋愛事情 三十話 回診
勝と楓夫婦が気を遣ってかえった。気遣いのできる友人たちだ。俺はベッドのうえであぐらをかいて安藤医師を待った。
それからすこし経って安藤医師のたかめの声と、看護師の声が聞こえてきた。
「つぎは伊勢川さんかな?」
「はい、そうです」
たくさん患者がいるというのによくおぼえているなぁと、感心した。
安藤医師はすがたを見せながら、病室のかべをノックした。彼は笑みを浮かべていた。
「こんにちは。
病と恋愛事情 三十一話 退院
今日は月曜日。退院の日だ。でも、あいにくの雨。まるで、俺の退院をこばむかのように本降りになっている。俺はそんなのには負けない。退院すると決めているのだ。調子だってわるくないし。
いまは午前10時まえ。母はいつごろ来るのだろう。なにも言っていなかった。もしかして、面会時刻の午後2時以降に来るつもりなのか。それなら、まだまだだ。
気になってしかたがないので、俺は実家に電話をした。7回目の呼び
病と恋愛事情 三十二話 自画自賛と彼女の様子
スコールのような雨が去ったあと、陽が刺してきた。母が声を掛けてきた。
「晩御飯食べていったら?」
俺は麻沙美に会おうと考えていた。なので、
「いや、かえるよ。もうすこししたら送ってくれな」
母は不服そうに、
「なんだ、もう帰るのかい。ゆっくりしていけばいいのに」
そう言った母はすこし寂しそうだった。
「茶飲み友だちいないのか?」
「いないこともないけど、相手は旦那もいるから頻繁には会えない
病と恋愛事情 三十三話 彼女の笑顔
いまは壁に掛かっている時計を見ると、夜の10時30分ごろ。俺はまだ、麻沙美の家にいてさくらちゃんのパソコンを借り、小説の続きを書いていた。この作品の読者は、居間に横になって寝息をたてている。かわいい寝顔だ。
俺は結局1人でビールを飲んでいた。2パック買ったがまだ3本しか飲んでいない。麻沙美と2人で飲もうと思って買ってきたけれど当の本人は部屋で寝ている。まあ、具合いが悪いなら仕方ないな。そう思
病と恋愛事情 三十四話 悪戯な笑顔
俺と麻沙美は俺の車で総合病院に来た。いまの時刻は朝9時30分過ぎ。麻沙美の家からは約10分で着く。受付に来て保険証を出した。麻沙美は初めてかかるらしい。なので、問診票をクリップボードに挟んだものを受付の女性に渡された。名前や住所、電話番号や何科にかかるか、どういう症状なのか等を書きこんで再度受付に行き、問診票を返した。
周りを見ると、老若男女問わず、患者で溢れている。院内はクリーム色の壁で覆
病と恋愛事情 三十五話 茶髪でロングヘアーの女
久しぶりの麻沙美との情事は最高だった。病気が発症したころは、性行為なんかする気がなかったけれど、徐々によくなってきてする気になった。よかった。彼女ができて性行為ができなかったら悪い気がしてならない。いくら、病気のせいとはいえ。できないとしたらいっそのこと彼女などつくらないほうがいいと思う。まあ、性行為がすべてとはいわないけれど。精神的なつながりだけで果たしてつづくだろうか。俺には自信がない。性行
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