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世界一わかりやすいiPadの話。

9月16日(日本時間)、第4世代 iPad Air (2020)、第8世代 iPad (2020)が発表されました。先に発表されていたiPad Pro (2020)と昨年3月に発表済みの第5世代iPad mini (2019)を加え、これですべてのiPadファミリがリフレッシュされたことになります。

で、結局これらは何なのかという話をわかりやすく解説していきます。

なんで新型Airは120Hz対応じゃなかったのじゃ

iPad AirはとてもiPad Proに酷似しており、しばしば比較の対象となっていますが、比較者のみなさんが忘れていることがあります。iPad Airは結局のところIPS方式のLCD(液晶)を積んでいるのです。iPad ProはOLED(有機EL)です。

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LCDは高リフレッシュレートに対応することが難しく、特に視差の少なく鮮やかな発色が特徴のIPS方式ではそれが顕著です。そして、LCDは何よりOLEDの数倍コストが安いのです。だから、廉価版のiPad Airに搭載されました。現代のOLEDはLCDに比べて薄いので、ProよりAirのほうが分厚くなったのです。

iPad Proはこれまで映像業界でたくさん使われてきました。カメラのモニタや音響のサンプリング、そして動画チェック用などと様々な用途で使われているのです。しかし、それだけにはiPad Proは高すぎて、そこにそこそこ安価で実用上充分なAirを出したので、Airは実際にはAppleが映像業界にこびを売ってこれからもよろしくねって話なんです。

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特にゲーマーの皆さんは高リフレッシュレートを求めがちですが、iPad Airとかいう格安端末がそんなものに対応するわけがなく、この先のアップデートで対応とかいうこともないので、安心してiPad Proを買ってください。

無印iPadとは何なのか

頭脳としてA14 Bionicという新型のSoCを搭載するiPad Airと比べて、2世代古くiPhone XSと同等となるA12 Bionic搭載の無印iPadですが、これは何のために残ったのかという疑問を皆さん持たれていると思います。普通に考えて、ユーザーインタフェースは統一したほうがいいのですから、ホームボタンのあるiPadが残る道理がありません。

と、考えた皆さんはAppleのキーノートを実際何も見ておらず、何も理解していません。この、無印iPadこそがiPad最大のアップデートです。iPad Airとか実情としてはおまけなんです。

では、iPadとは何なのか。これは皆さんが楽しみに見ていたはずのキーノートですべて語られています。それを理解するには、Apple Watchのキーノート部分をよく見ればいいのです。Apple Watchは今回何のためにアップデートされたのか。あのAppleの映像には再三子供が使うシーンが練り込まれていたのを覚えておいでではないでしょうか。

Appleは特に米国の教育市場で当初はiPadで覇権を握っていたものの、ここ数年はChromebookの大躍進でかなり苦しんでいます。なぜか。キーボードもなく頑丈さも持っていないiPadは教育市場ではコストが高く嫌われがちだったからです。

iPadは、その先代である第7世代iPadからSoCのA12 Bionicしか変わっていません。それはAppleがもう半ば見捨てているからでも何でもなく、コストを下げるためです。実際に日本では3万円台半ばから買うことができます。

Smart KeyboardやApple Pencilが出てきていて、今のiPadは組み合わせ次第でChromebookを超える拡張性を持ち合わせるようになりました。何が問題だったのかというと、価格だけなんです。だから、コストを下げる努力をして、それはSoCのリフレッシュだけでもう完成されているということだったのです。

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そこに加えて、今度からは新しいApple Watch SEと連携して子供のモニタリングが簡単にできるようになりました。WatchはiPadのネットワーク接続を利用して、親に随時子供の状況を伝えることができます。体育をサボっていないか、授業中どれだけ筆記をしたか、そういうことがモニタリングできるというキーノートを皆さんは見たはずです。

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つまるところiPadは、Apple Watch SEという子供向けガジェットの能力を最大限に引き出すための存在なのです。電子書籍リーダーにも使えなかった初代iPadからめきめきと成長し、ついにはiPodに音楽ソースを供給するための周辺機器としてリリースされたmac miniのような立ち位置に至ったわけです。iPad自身は主軸ではない、という戦略の変化を読み解けなかった数多の大手メディアのライターたちは正直ゴミカスです。

iPhoneは、ARM搭載Macは、なぜ発表されなかったのじゃ

Appleは、今も書いたように何か戦略的なガジェットの周辺機器として、他社であればそれ単独で主軸の戦力となるようなガジェットをリリースすることがとても多い企業です。だから、それを派手にイベントを開いて発表することが多いのです。

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よく素人ライターはイキって「Appleのデザイン哲学が」とか「新たの価値の創造が」とか小難しいことを書くんですが、AppleがWWDCやEventsのキーノートで言っていることはシンプルに、戦略的物資の発表だけなんです。

では、ここで答えが簡単になりまして、今のiPhoneやMacはそんな価値があるのかという話です。ないんです。iPhoneはもう革新を生み出すことはできないデバイスになりました。Macだってもう正直なところiPadやiPhoneのための開発環境としてしか活躍できないのです。それほど、iPadやiPhoneの能力値は高く、アプリだって何でもあるんです。

ほど遠くない未来に、仮にiPhone 12と呼ばれるデバイスが発表されることでしょう。しかしそれは、今回のApple WatchとiPadのようにその存在を大きく盛り上げるほどのものではないはずです。本体サイズが変わって新たな機能が提供されるかもしれません。でも、それだけのことで戦略的転換というほどの大がかりな発表にはならないと思われます。

そして、年末にはARM搭載Macがリリースされることでしょう。これも、Appleにとってはシンプルな改革でしかなく、まずはその値段や性能にフィーチャーした発表が執り行われると思います。それだけIntelからApple Siliconへの移行は静かにスムーズに行われるはずです。なぜなら、AppleにとってはMacがiPhone、iPad、Apple WatchとSoCが共通になるだけの話なのですから。そしてそれは、WWDCで発表されたように開発者がAppleのエコシステムにおけるシステム開発をしやすくなるということだけであって、これも戦略的な転換ではないんです。

今年は、iPadがiPhoneの周辺機器であった立ち位置から、Apple Watchの周辺機器になるという従属関係の転換をもう成し遂げています。願わくば来年は、iPad Proが新たな価値を創造することを願って、ではそれは何なのか楽しみに待つことにいたしましょう。

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