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イマドキのeスポーツチームの“公式サイト”について考える。

(このnoteは令和3年1月6日現在の情報で書かれています)

結論を先に書きます。

映えるカッコイイホームページを作ったなら中身もちゃんと作ってくださいよ某チーム。って話です。

これからつらつらと書きますがいちばん読んでほしい人には届かないんだろうなァ(というかこれまでのnote読んでいただけていたら考えられないようなSNS上での発言を見てしまっているので複雑な気持ち。まあ巡り巡って困るのは本人なのでいいんですけど)。

・序論。

Twitter,Instagram,Facebook,and more...数多のSNSが犇めくこの令和黎明期。ネットで人気の商品をテレビ番組の1コーナーで紹介するような風潮。“公式サイト”のない個人商店も見られるようになってきました。Googleで検索するとツイッターやインスタのアカウントに誘導されるとか、食べログとかぐるなびのページが上位に表示されるとか。

電子機器とともに人生を歩んできたデジタルネイティブたる我々世代(個人差はあります)としては「別に公式アカウントがあればよくない?」と思ってしまいがちですが、我々よりも上の世代(これもまた個人差があるので十把一絡げにするのもよくないなと思いますが、便宜上)はGoogleなりYahoo!なりで上位の検索結果にヒットする“公式サイト”を『チームの看板』として見てくるわけです。続いて各種SNSの運営状況であったり(投稿が1ヶ月前までで止まっているのは論外)、個人の活動(選手のみではなく)であったりします。

と、ここまで書いてきたけど自分も専門家というわけではないので、この世のすべてがそう動いていると決めつけているわけではなく、まあこういう風に見てくる人もいるやもしれんので気を付けような、ぐらいのニュアンスで書いています。よろしくお願いします。


・本論。

Webサイト(ホームページ)はその団体の顔。今や銀行の融資でもWebサイトの体裁が重要視される時代です。PMJLの審査にあたってもWebサイトの出来具合は確実に調査されたはずです。されたはずなんですが、というお話です。

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世界を見渡してみると、いわゆる発展途上国で技術的には劣るはずのインドネシアやタイなどの強豪チームも、(そこそこ)きちんとしたWebサイトを持っていて、自分たちから積極的に情報発信していこうという姿勢が見られます。画像ペライチばーんと貼って終了、みたいなのを想像していたら結構しっかりしていてびっくりしたんですよ。

そして、日本の某1位(何のとは言いません)のWebサイトを見ると、これがすごくて2000年代初頭に流行ったtableレイアウトみたいなことをしていて愕然としました。

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今どきのモダンなWebサイトはHTMLのスタンダードを守って作るのが鉄則で、HTMLタグは文書の意味付けに使うというのが大原則です。ですから、例えば ul, li というタグは箇条書きを作るのに使うわけで、レイアウトの調整には使わないというのが基本中の基本なわけです。

これがですね、某1位のWebサイトはリキッドレイアウトと呼ばれる、画面解像度に依存しないために使われるそこそこモダンなレイアウト手法を使っているのですが、ソースを見るとデザインの調整のために無限の ul, li が展開されていて、ちょっとHTMLを知っている人なら誰でも頭を抱えるような出来具合でした。つまり、リキッドレイアウトを本当にパーツを配置するためだけに使っていて、画面解像度のことなんて考えていないんですね。

一昔前、HTMLは構文を検査するツールであるHTML-lintを通ればいいと考えられていた時代がありました。でも、最近はGoogleのSearch Console (旧Webmaster tools)などのように、実際のブラウザがどのように表示したかをチェックして問題点を指摘してくれるサービスがあります。そういうものを活用して、きちんとHTMLの意味付けを考えた上で完成→公開としたほうがよいでしょう。

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そして、もうひとつ大きな問題があって、そもそもこのサイト、機能していないんです。というのも、たとえば普通は Sponsor って書いてあったら押せばスポンサーの一覧が見られるわけじゃないですか。ないんです。だって、リンクが張られてないんですもの。


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ところで、ファンクラブは〝f**u**nclub〟ではなくて、〝fanclub〟ですね……

このサイトをGoogleがどういうふうに見ているか、site: 構文を使って検索した結果がこうです。

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そもそもサブページが一切ないですね。ペライチなんです。「どうですか、うちはこんなかっこいいWebサイトを持っていますよ!」って見せるには最高だと思います。何も知らない人なら「あっその虫の名前らしい巣のデザインでチーム名にも合ってますね!」ってなるとは思うんですよ。でもこれ、実際に中身はなにもないわけですし、例えばテキストリーダーに読ませたら無限に箇条書きがあるだけですから、読めないんです。視覚に障害がある人を馬鹿にしているんですかねという話です。そもそもスポンサーの一覧すらないわけですから、スポンサーの皆様も怒っていいんですよ(相互に名前を出して広告しましょうねって話でやってるわけですから)。

改善案としては、こういうレイアウトにしたいならグリッドレイアウト(CSS Grid)にすることと、意味のないタグ付けはやめて描きたいものは背景画像やHTML Canvasを使って描画しましょうってところでしょうか。もちろん、サブページをきちんと作ることも重要ですよ。あと、最初のEnterページは何も意味を持っていないので要らないですね。工事中かと思われてブラウザバックされるだけですよ。

ぼくらが海外の強豪チームを見て、どんな人達なんだろうって検索してWebサイトやSNSを見に行くように、彼らもまた日本の強豪とはどんなチームなんだろうと見に来ているはずなんですよ。そこでこんなしょぼいことをされていたら、なんだ日本ってゴミじゃんって思われて終了なんです。SNSはそこそこ“プロなんだから変なことを言わない”ということが周知されてはいます。でも、Webサイトはプロチームなのに小学生が宿題で書いたような出来でいいのでしょうか。もっと自分たちが1位に輝いたという実績に責任を持って、きちんとしたものを作ったほうがよいと思います。Webサイトをさんざんいろんなことに気を使って仕事として毎日作っている身としては「こんなものでも60万とか(※この価格は相場から推定した適当な数値ですよ)貰えてるんだ、その仕事楽でいいな」って思いました(ご依頼、お待ちしてます☆)。

次はSSL証明書の話ですよ。

SSL証明書は、そのサイトがその団体(や委託先の認証団体)によって認証済みで、サーバーとクライアントを行き来するすべてのデータが第三者に傍受されないよう暗号化して通信されることを証明するものです。最近は常時SSL化というのがホットワードで、特に個人情報などを扱わない場面でもSSL証明書を持ったサーバーから発信するという慣例が形成されつつあります。

SSL証明書は基本的に有償で年間15,000円とかかかるのですが、これを個人ユーザーなどで負担が大きいという人のためにLet's Encrypt https://letsencrypt.org/ という非営利団体の無償のWebサービスがありまして、常時SSL化という流れを大きく推進させました。

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ただね、これをそこそこの収益がある(ドコモから選手の年俸350万円を保障されるほどの)営利団体が堂々と使っているのはかっこ悪くないですか。SSL証明書は誰でもWebブラウザのアドレスバーの鍵マークなどから見ることができます。そこにLet's Encryptって書いてあったら、ああこの団体はそういうところの経費をケチるんだって思います。いや、もしかしたらLet's EncryptにDonateしているのかもしれないけど。

GoogleやVeriSign (Symantec)のSSL証明書は確かに高いのですが、例えばスポンシングを考えている企業の担当者が見に来たとして、まずこういうところに経費をかけているかを気にすると思うんですね。そういう安心材料をきちんと担保しておいたほうがよいのではないでしょうか。

とある大手出版グループが擁するプロチームなどはこのあたりもしっかりしていて、ああ違いはこういう場面でも現れるのだなと感じました。上のほうで書いたWebデザインも含めて、プロチームを長く運営していく気があるのならもう少しこういうところに気を払ってお金をかけたほうがいいと思います。そのほうが好印象です。


・結論。

「eスポーツに投資するぞい!」という人のすべてがその“eスポーツ”に対して詳しいというわけではありません。むしろPUBG MOBILEは「えぇ……人を撃ち殺すゲームなの……」みたいな層があると思います。そういう人たちに「うるせー!!! さっさと金出せや!!!!!!!」って言って金を巻き上げられれば楽なんですけどそういうわけにもいかない(その場はいけたとしても継続的にやっていけない)ので。業界的にもイメージダウンだしね。「なんだかわからないけど儲かるんでしょ? じゃあお金出したるわ」ぐらいの認識の人ばかりではないし「有り金全部溶かしてeスポーツに人生を賭けています!」という奉仕精神あふれる人ばかりでもないわけです。

PJSのスポンサー各社の方々が並々ならぬ努力で周囲の理解を勝ち得ていった過程は、様々な記事で読みとれることであります。人類みなeスポーツプレイヤーならとんとん拍子で話が進んだんだろうなァ。

まだまだ世間の目は厳しいからこそ、上位チームが(ゲームばかりをやっているのではなく、外向きにも)ちゃんとしている姿を見せることが今後のためになるのではないかと思うわけですよ。頑張らねばならないのは選手だけではなく、オーナーやアナリストもスタッフも、“公式サイト”の作成を依頼された担当者も、その看板をいっしょに支えている自覚を持ってほしいナ。

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