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“次”に向けてのスマホ選び。

2020年8月28日、PUBG MOBILEの日本公式大会である『PMJL SEASON 0』のグループステージの始まる前日に公式からこのような衝撃のツイートがありました。

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日本国内ではiPadを筆頭にしたタブレット端末の使用が認められているのに対して世界大会では昨年のPMCO 2019 Fall SplitではNEX 3が指定端末とされており、日本市場に参入すらしてないVivoという会社の端末に翻弄された結果として本来の強さを発揮できず、思ったような成績が残せずにいました。

次の『SEASON 1』からはスマートフォン端末限定となる、ということは群雄割拠の日本国内戦を“勝てる”スマホはいったいどれなのか? みなさん気になると思います。このnoteは「今から“勝てる”スマホに乗り換えて、2021年の春に開催されるであろう『SEASON 1』で優勝し、世界大会に出場できるように練習していきたいチームの皆様」に向けてのnoteです。


「90fps出るスマホがあるって聞いたんだけど?」

9月8日のアップデート後、PUBG MOBILE界隈を席巻した“90fps”というワード。公式で“90fps”出ることが確約されているスマートフォン端末はOneplus 8 / 8 Proとなっております。

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OnePlusはOPPO系列の会社で、欧州やアメリカ市場で高いシェアを誇っています。中華系企業といえばHuaweiがGoogle Play Storeを外されたことで日本でも話題になっていますが、OnePlusはその点に於いて“別格”の扱いを受けており、Android OSのアップデートも他のAndroid端末よりいち早く、GoogleスマホとしておなじみのPixelシリーズとほぼ同じタイミングで来るようになっています。ちょうど本稿を書いている9月9日(日本時間)、PixelシリーズとOnePlusシリーズにAndroid OSのメジャーアップデートである『Android 11』が配信開始されました。

“90Hz”に対応できるだけのスペックを持つスマホは他にもたくさんあるのになぜOnePlus 8 / 8 Proが本実装よりも1ヶ月も早く実装されたのか。それは先述した“別格”の部分にあります。

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Androidには大きく分けて、Google純正のもの(Pixelシリーズに搭載されているもの)、そのオープンソース版であるAOSP版Android、そしてそれを他の各社がカスタマイズして搭載した各社のAndroid (スキンやUIなどとも呼ばれます。例: Huawei EMUI など)があります。各社はこれにGoogleのサービスを使うための『Google Mobile Services』(GMS、Google Play Storeなどを含むGoogleのサービスを利用するためのプラットフォーム)をインストールして出荷する権利をGoogleから買って、一般的なAndroid端末として販売しているというのが現状です(Huaweiは米国政府の命令によってこの権利を剥奪されたために、同社のEMUIからGMSを取り除く必要がありました)。

その中でも、Google Pixelシリーズを含め、Googleが認証している『Android Enterprise Recommended』(AER) という特別なプログラムがあります。

AERは、Googleが定めた厳格な設計要件を満たした上で、それをGoogleが検証し、すべての要件を満たしていることを認証するプログラムです。これにはGoogleがPlay Store経由で配信しているセキュリティパッチレベルを常に最新に保つことや、Googleの提供するエンタープライズ向けサービスへの一貫した対応などが求められます。

 - https://www.android.com/intl/ja_jp/enterprise/

AER認証済み端末には富士通『ARROWS Be』など日本で知られたものもありますが、その中でもOnePlusはハイエンド端末である8シリーズで認証を受けており、PUBG Mobileが90Hz対応のテストプログラムを開始した段階で、AERの認証済み端末の中で90Hz対応であることが確約された唯一の端末となっていました。

 - OnePlus 8: https://androidenterprisepartners.withgoogle.com/device/#!/Nw4j0GG8UlfdBlscDtNG
 - OnePlus 8 Pro: https://androidenterprisepartners.withgoogle.com/device/#!/yCJSbW2Etu4Lpq8L8Gkr

このような背景から、Google Play Storeへ配信するゲームアプリとして、開発およびテスト環境として最も適切と思われたのがOnePlus 8シリーズだったわけです。

OnePlusは以前より公式でPUBG MOBILEの大会を開催している点も踏まえても“90fps”への迅速な対応は必然といえば必然かと思われますが、残念なことに日本市場への参入は未定です。OPPOちゃんはミドルレンジの端末ばかりだしている場合じゃないですよほんとに。これも日本の企業を守るための苦肉の策なんでしょうけど。

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OnePlus以外にもグラフィック設定の画面で“90fps”表記のある端末はある(ほんとうに90fps出ているかはさておき)と思いますが、OnePlusも含めて言えることとして「技適の通っていない端末を公式大会に持ち込んだときに公式側がどんな対応をするかわからない」という問題があります。その場で失格の可能性も否定しきれません。

そもそも技適の通っていない端末を日本国内で使うのはめちゃくちゃリスキー(いつ訴えられてもおかしくないので実験目的として総務省に180日間の認可をもらいましょう)だし、壊れたときに自分で直せる自信がある人だけが使ってほしいです。どんなに高機能でも大事な大会の前に動かなくなってしまっては元も子もありません。キャリアモデル(またはキャリアで販売されている端末のSIMフリーモデル)の利点は、メーカー側に修理交換対応をしてもらえるところでもあります。


「結局iPhoneが最強なんでしょ?」

2020年9月9日現在までに販売されているiPhoneは“90fps”に対応していません。対応していないというよりは対応できない、という方が正しいでしょうか。これから先、運営側がどんなに頑張っても実装されません。iPad Proが対応しているのは運営側として「iPadを使用しているプレイヤーが多い」という現状は把握しており、ハードウェアとしても実現できるものだったからでしょう。

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どうして“90fps”に対応できないのか。これを説明するために、まず“fps”とはなんぞや? というところからお話ししていきましょう。fpsとは frame per second の略で、1秒間に何枚のフレームを更新することができるかを示す値です。いわゆるFPSゲーム(こちらは First Person Shooter の略)とは別の概念で、ゲームのほうを大文字で記すのが通例です。

フレームの更新とは、要するに画面に描画する内容を書き改めることで、グラフィックを処理するプロセッサであるGPU (Soc=System on a chip=やチップセットとも言い表されることがあります)が、画面へ何回の更新命令を送る能力があるかを示す値ということになります。フレームレートなどとも呼ばれます。

次に、それを受け取る側の画面(LCDやOLEDなどの実際人間が目にするパネル)の能力を表す値として、よく言われる言葉ではリフレッシュレート、単位としては“Hz”(Hertz)があります。こちらはパネル側が何回画面の内容を更新することができるかの値となります。昨今のハイエンドスマートフォンでは、『120Hzディスプレイの搭載』がトレンドです。

つまり、GPU側のフレームレートとパネル側のリフレッシュレートは別の概念であり、今回のPUBG Mobileの場合は、GPU側に90フレーム/秒の画面更新を要求してパネル側がそれ(90回/秒)を描画するわけなので、パネルが90Hz(以上の)表示に対応しているかどうかが重要となってきます。

その意味で、iPhoneシリーズは今に至るまでリフレッシュレートが最大でも60Hzのパネルを採用してきており、それ以上のパネルを搭載した機種はリリースしてきませんでした。これは、Appleの設計哲学としては、要点として「人間の網膜は、Retinaディスプレイ(およそ326ppi=pixels per inch=)程度の表示密度かつ30Hz程度のリフレッシュレートしか認識できない」というものがあるからです。

なお、これは“スタンド込みで100万円”ということでも話題となったプロ向けディスプレイ、『Apple Pro Display XDR』でも一貫しており、最大60Hzまでの表示となっています。

 - https://www.apple.com/jp/pro-display-xdr/specs/

では、なぜ60Hz以上の対応が必要になるのかと言うと、ビデオカメラなどの映像機器が240fps程度の映像を記録できるようになってきており、主にハイエンド機器からのトップダウンでこれを再生できるようにしていく必要があるからです。

Appleのリリースする機器の中では、『iPad Pro (2020)』だけが120Hz対応のディスプレイ(ProMotionと呼ばれます)を持っており、映像業界の現場におけるモニター用などとしても活用されています。こうして制作された映像を再生する際に、高いリフレッシュレートを採用したパネルを持つ端末が必要となってくるわけです。つまり、Appleはプロフェッショナルが採用する映像機器としてはiPad Proがファーストであると考えているわけですね。ちなみに、『iPad Pro (2019)』は90Hzで、それ以外のiPadは60Hzです。

このようないきさつから、PUBG MobileはiPhoneの高リフレッシュレート表示を諦めざるを得ず、iPad Pro限定で90fps表示に対応することにしたわけです。

なお、テレビの世界では“疑似120Hz”とか“疑似240Hz”という映像補完技術があり、一般に24~30fps程度であるテレビ用映像の、フレーム間をつなぐ画像をAIで作り出してスムーズに表示させる機能を持った製品が売られています。見ていると確かにスムーズなようが気がしてきますので、気になる方は家電量販店の店頭などでお試しください。

人間の目の処理能力としてはリフレッシュレート30Hz程度であるとAppleは考えている、と先に書きました。つまり、GPUやパネルがいくら高レートに対応していても、我々の目はそのすべてを受け取ることができません。ではなぜ映像を補完してまで高レートにしていく必要があるのでしょう。これはパネル側が画面を書き換える際に垂直同期(VSYNC)や水平同期(HSYNC)という信号処理を行っていて、これは1ドットごとの画像を書き換える方向のことなのですが、人間の目がその途中の画像を捉えてしまうからです。書き換え途中の中途半端な画像をできるだけ見てしまわないよう、高レートにしていく必要があるのです。

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日本時間で2020年9月16日の午前2時からAppleの発表会が予定されており、ここでみなさん待望の“5G”対応のiPhone 12が大々的に発表されるのではないかと予想されています。例年通りなら9月末に発売されるのではないでしょうか。このiPhone 12がおそらく“90fps”に対応する最初のiPhoneになるのでは? と思います。ここまで設計工学云々書いてきましたが、他のスマホが120Hz対応! を謳っているところでトップシェアを誇るiPhoneが非対応を貫くことは難しいでしょう。すげー高いんだろうなぁ、お値段。


「ゲーミングスマホって何が違うの?」

かつてBlackShark2という端末が界隈で話題になりましたね。増田社長元気かなぁ。ハイエンド端末としては格安の49800円という金額も売りの一つでありました。日本はとにかくスマホが高いんですよ。

ゲーミングスマホが他のスマホと比べて優れている点としては排熱性能の高さにあります。ゲームをしているとどうしても端末が発熱してしまいそれが原因でタッチバグを誘発してしまうものなのですが、ゲーミングスマホは内部の排熱機構がとっても優秀なので長時間の使用にも耐えられるのです。

PUBG MOBILEの大会は予選でも1日に5試合と長丁場の戦いを強いられます。ゲーミングスマホはバッテリーも大容量なので最後まで電池切れの心配がありません。たとえ充電を忘れてしまっていても高速充電に対応しているので安心です。

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先ほど“90fps”の話をしましたが、BlackShark2の後継であるBlackShark3が対応しているとの情報が出回っています。こちらのBlackShark3は技適を取得しており、合法的に国内での使用が認められているのですが日本での発売は未定。BlackSharkはXiaomi系の会社なのでもしかしたらXiaomiがau辺りを通じて販売してくれるかもしれないし増田社長が密かに動いてくれているのかもしれないという淡い期待を抱いていますが果たして。

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他に“90fps”が対応していてなおかつ技適を取得している端末としてはZTEがNubiaというブランドで販売しているRedMagic 5が挙げられます。こちらもキャリアモデルはなく、もし購入したいのであればグローバル版を個人輸入するという形にはなってしまいます。


「プロチームが宣伝しているアレってどうなの?」

DetonatioN GamingにSHARPが、SCARZにSONYが、REJECTに富士通がスポンサーとして付いてくれたので、内国産スマホがゲーミング分野に力を入れてくれる日がようやく来てくれたかー! と喜んでいましたが、率直に申し上げると大陸スマホに勝てる日はまだまだ遠そうです。それが何年後になるのかはわかりませんが、その時が来るまでスポンサーを続けてほしいなと思います。

日本人は「Made in JAPANが大好きで中国製や韓国製の製品が大嫌い」という人が(特に年配の方に)多い気がします。安かろう悪かろうのイメージがいまだに根強く、何かとケチをつけがち。この辺に関しては過去のnoteで苦言を呈したのでここではこれぐらいにしておきますが、端末代金を安くする企業努力も必要なのではないかと思いますよ。

R5Gは120Hzのリフレッシュレートに対応しているのでもしかしたら夢の“90fps”の実装が一番現実的ではありますが、世界的シェアで見たときに全く売れていないSHARPの端末よりは過去に世界大会のスポンサーとなってくれたGALAXYの方が優先順位は高そうな気がしています。


「スマホ限定にしてもオフラインなら確認しようがないしタブレットで参加する奴いるでしょ」

iPadはiPad用のアプリストアになっています。同じアイコンでも表示されるアプリが違うんですよね。

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これがiPhoneで見たときの2020年9月9日現在のランキングです。初音のミクさんの新しい音ゲーがリリースされたんですね。

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こちらはiPadで見たときのランキングです。ちらほらと違うアプリが入っているのがわかりますね。

では、どのようにiPhone用アプリとiPad用アプリを区別しているのでしょうか。答えは“バイナリ”です。

バイナリとは何でしょうか。ここで言うバイナリとは、プロセッサ(CPU)が解釈するためにプログラムのソースコードを変換したものです。

Windowsを使う方は、アプリケーションで最近『32ビット版』(i386)や『64ビット版』(x64)などの区別があることをご存じかもしれません。Macを使う方はほとんど意識したことがないと思いますが、それでもついこの間「MacがIntelからApple Silicone (ARM)への移行」というニュースを目にしたのではないでしょうか。古くは10年ほど前、「PowerPCからIntelへの移行」もありましたし、iPhoneやiPadでも実は32ビット端末がサポート外になるという事象が、数年前に起きました。もしかしたら、お気に入りのアプリが使えなくなった経験があるかもしれません。

こうして、ときにCPUを意識させられることがあるのは、そのCPUのアーキテクチャによってプログラムの変換方法、つまりバイナリが異なるからです。Windowsでは配布されるアプリケーションが最初からCPUアーキテクチャごとにわけられていたり、インストーラが区別してそのアーキテクチャ用のバイナリをインストールしたりしています。

Appleはもう少しスマートで、“ユニバーサルアプリ”という考え方を採用していて、これはいくつものアーキテクチャ用のバイナリを1つのパッケージにまとめたものをアプリケーションとして提供する技術です。たとえばmacOSだと、OS 9より以前のPowerPCプロセッサ、OS X 10.9より以前のIntel 32ビットプロセッサやIntel 64ビットプロセッサ、そしてこの年末から採用されるARM64プロセッサのためのバイナリを1つのパッケージにまとめることができます。

iPhone/iPad OSでも同じです。もう含めることができなくなってしまった32ビットARM、現在主流の64ビットARMの2種類に加え、さらにiPhone/iPadそれぞれ用のバイナリを含めることができます。iPhoneとiPadをわける必要があるのは、画面サイズがいくら違っても操作感が同一なAndroidとは違い、iPad用アプリにはiPad用アプリの流儀があるから(つまり別アーキテクチャと見なされるから)です。さらにはwatchOS用のバイナリも含めることができますが、しかしこれは我々の目にはほぼ触れず、App Storeで1つのアプリに見えるようになっています。

このように、AppleはCPUやバイナリの違いをエンドユーザーに意識させないよう、プログラマに対して差違吸収のためのテクノロジを提供しています。詳しい方は『Losetta』という用語を聞いたことがあるかもしれません。Losettaのような仕組みを通して、我々はバイナリの違いを意識しませんが、システム側としては明確に違うものとして実行されています。

これはApp Storeなどのマーケットのバックエンドでもそうですし、開発者がコードを通して見たシステムについてもそうです。バイナリによって区別が可能で、エコシステムとして区別が可能だからこそ、このようなマーケットの仕組みとなっているのです。

要は「アプリ内部でスマホとタブレットの区別がつくからタブレット端末であることを検知して追い出すような設定にできるよ!」ってことです。GG。

開発側は(まともな開発陣ならば)様々な端末でゲームの動作確認を行なっています。今回のアップデートでの“90fps”への対応も、日本国内で販売されていてなおかつ表示できるだけのスペックのある端末ならば順次実装されていくことでしょう。そうあってほしいです。

資金はあるはずなのに左右に謎の帯を表示してしまうようなソシャゲは、開発陣がまともではないのかあるいは開発スタッフに資金が回っていないんじゃないですかね? ディ○イトワー○スお前のことだよ。宝具演出にこだわるよりさっさとiPhone X以降に表示される謎の帯をなんとかしてくださいよ。

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