つまりNOMADOプロジェクトとは何なのか?
前回までの記事では、NOMADOプロジェクトの実証実験について書いてきました。
この記事では原点に立ち返り、NOMADOプロジェクトは何のために生まれたのか?ツナガルはプロジェクトを通して何を実現したいのか?ということに、改めてお答えしようと思います。
コロナが浮き彫りにした社会の壁
2020年、新型コロナウイルスによって私たちの生活は一変しました。
これをきっかけに、世間では「社会課題が顕在化した」と言われるように。
貧困、差別、暴力、地域格差ーー。
さまざまな課題をパンデミックは浮き彫りにしました。
人と人との交流が遮断され、帰省や旅行、友人との会食など、コロナ前は当たり前にできていたことができなくなりました。
広い視野で見わたすと、言語、人種、宗教、職業、経済格差、障がいなど、コミュニティを隔てる壁は以前より大きくなり、孤独を感じる人たちが増えたんじゃないかと感じるんです。
鬱蒼とした日々が続き、混沌が社会全体を覆う反面、状況を打開し光を見つけようとするレジリエンス(復元力)もわたしたちは持ち合わせているはずです。
その原動力となるのは、思いやることや、つながりを求める人間としての性質です。
思いやりが連鎖する社会をつくる
ツナガルのメンバーは、海外から日本に来たメンバーや海外留学経験者も多く、そもそも、メンバーの大半は旅が大好き。
そんな旅人集団だからこそ備わっている、未知の世界との出会いによって自分の価値観が変わる感覚。相手の文化が自分の内に取り込まれ、想像可能な世界が拡がる。それこそが思いやりが連鎖する社会をつくるのではないかと考えています。
今の閉鎖的な社会で失われかけている、人と人をつなげ、「人生を変える出会いを作ること」が必要とされている社会になったのだと感じています。
NOMADOプロジェクトは、遠い存在と思っていた人やコミュニティをつなげ、社会の壁に穴をあける。そして抱える課題を改善に導き、お互いが豊かになることを目指したい。
これがプロジェクトを通じて実現したい、ツナガルのビジョンです。
次の課題はテクノロジーの進化と体験の深化
今回のフランスでの実証実験を踏まえて、双方向のコミュニケーションを活性化するための技術やソフトウェアの導入の検討を進めています。
例えば通訳を介さずとも相互にコミュニケーションができる技術の導入、あるいは感情や感性を表現するデバイスの追加、音の指向性や解像度の改善、視線に追従するカメラの導入などが考えられます。
このあたりは技術パートナーとともに研究と開発を行う予定です。
体験デザインやファシリテーションの面は、個々の学校や生徒の特性に合わせて、深く事前ヒアリングを行い、事前の共通理解を育む時間と、事後のリアルな体験が生まれるまでの時系列を計算しています。
メンバーであり博士のBalléの研究分野でもある「関係デザイン」の理論について、鋭意執筆中ですので発表をお待ち下さい。