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考察:【会話の最初に質問してはいけない理由】について。


 以前、こんなツイートを見つけたのですが、案の定炎上しており。

 リプライ欄ではなく引用一覧を見ればわかるのですが、まあまあ荒れております。画像を引用して「そんなに全男性が話を繋げたり広げたりできないようなコミュ力なし人間か?」とツイートした人間が共感のインプを呼んだりしていました。

 しかし私は、「この図は正しいことを指摘している」と思っています。そして、「この図を見て『全男性が見るべき』と感じる人間の気持ちも理解できる」と思っています。今回は私がこのツイートを見て行った考察について述べようと思います。




0.前提

 元ツイ元画像全肯定で始めた直後で申し訳ないですが、元画像の比喩表現についてはかなり下手だと思っています。該当箇所は以下の2点です。

①上例で「遮断」を行っている質問は図示されている質問ではない

② 上例と下例で女の発話内容が異なる


1.【会話の最初に質問してはいけない理由】…『会話の制御権』について


 元ツイの図から読み取れる通り、上のケースで女が不満を覚えているのは「どこに?」という質問がなされたことではなく、『話す予定であったことについて話すことがないまま発話機会を逸した』ことです。

 他人の話を聞いていて何か質問事項が生じるとき、多くの場合それは下記のどちらかでしょう。

A.相手の口述内容を理解する上での疑問
B.自身の知的好奇心から生じた内容への疑問

 Aの疑問は聞き手が話し手の口述内容を理解するために必要となるので話し手の口述を「遮断」することにはなりませんが、Bの疑問を挟んでしまうと話し手は自身の話したいことを話すより前に聞き手の知りたいことを話さなければいけなくなってしまいます。つまり、話し手がしたい話をしている空間において、話し手にBの疑問を投げるのは「遮断」と同等の行為となるのです。会話の主軸が「話し手の話したいこと」から「聞き手の聞きたいこと」に変わってしまうので、『会話の制御権が奪われる』と形容してもよいでしょう。

 元ツイの画像上例では、男が「☆どこに?」「★何食べた?」と聞いています。
 確かに、☆はAの疑問に相当するのでこの質問単体が遮断の機能を持つという判断は誤りでしょう。(※前提①)しかし、★では会話の制御権が話し手から聞き手に奪われているため、これはBの疑問による「遮断」に相当すると思われます。この行為を問題視しているのです。
 元画像のタイトルを厳密に示すなら、これは【最初に質問をしてはいけない】ではなく【本題に入る前に会話の制御権を強制剥奪する質問を投げるな】でしょう。この画像を作成した人は、この画像を見る人間個々にその弁別をさせることが難しいと踏んだ上で「質問する行為そのもの」を非推奨としているのかもしれません。
 つまり、この画像で示したいことは「☆が遮断たり得るか」ではなく『会話の制御権を奪わないでほしい』という話なのです。ですから、☆そのものの内容是非について論じている人は論外です。

 前提②でも書いた通り、上例と下例で違う話をしているせいで伝わりづらいというのは間違いなくあるので、『会話の制御権云々』をこの図から一発で汲み取れというのが難しいのはその通りだと思います。制御権奪取がなければ起き得た会話を下例とすればよかったのではないかと思うのですけどね。


2.【全男性が学ぶべきこと】…『自己開示』について


 さて、ではなぜそれが「全男性が学ぶべき」とされるのか。なぜ全人類ではなく、「全日本人男性」とされたのか。ここにも、隠れた前提が二つほどあると考えられます。

 ・女性の方がエピソード共有型の会話干渉を行うことが多いため(=男性が聞き手となるケースが多いため)
 ・二者の交際/婚姻関係を前提とするため

 一つ目はまあいいでしょう。「自身/周囲の人間が相当するか」を脇に置けば、このイメージはある程度多くの人間が共有しているとおもいます。
 加えるとするなら、上記の前提で「女性がうまく人に聞かせる話し方を身につけること」より「男性がより良い聞き手となること」がハックとして重要な理由が明確にあることくらいでしょうか。交際婚姻市場においては女性は、女性であるという一点である程度のバフを持っています。対外スペックが同等な異性二者については、女性の方に選択権があることが多いでしょう。「ある男性がより良い聞き手となること」は、そうした場合に選ばれる決定打となりうるため、ハックとしても実用的なのです。

 重要なのが二つ目の点です。本題のコミュニケーション方式が重視されるのは、主に交際相手や結婚相手を相手にしている時になります。
 それはなぜか? 答えは、この図で非推奨としていることが起きてしまった時に何が付随して発生するかを考えるとわかります。ある二者間で『自身の発話時に聞き手が会話の制御権を強制剥奪する』という失敗体験が話し手に何度も発生すると、話し手の行動はどう変化するか? 多くの場合、学習性無力感により話し手は発話そのものをやめてしまいます。話し手から聞き手に向けた、発話による自己開示が行われなくなってしまうのです。
 そしてこのような行動変容が起きた時にもっとも影響が大きいのはどんなケースか? そう。二者が交際/婚姻などの特殊な拘束力を持つ名義関係だった場合、「一方が他方への自己開示をやめる」ということは副次的なトラブルを生みかねません。最悪の場合、名義関係の破綻を引き起こします。破局や離婚です。
 先述の通り、交際婚姻市場における対外スペックが同等な男女二者については、女性により多くの選択権があります。一度締結した名義関係にトラブルが発生した場合、それによってより窮するのは男性であることが多いと言えるでしょう。そのため、「女性より男性の方がより当該概念を理解しておく必要性が高い」と言えるのです。

 これはあくまで推測ですが、元画像の投稿者の夫が「男性が見るべき」としたのは、『無自覚的な会話の制御権剥奪行為により女性の選好基準から脱落する男性』の例に心当たりがあったからではないでしょうか。本人もしくは知人でこのようなケースを目の当たりにしていれば、当該概念はより多くの男性が習得しておくべきだと考えるはずです。
 実際、私も話し手として自己開示のモチベーションを削ぎ落とされるパターンを多く体験してきました。(挙句のツイッタラー/noter化です)プライベートな信用を獲得していく段階のコミュニケーションにおいて、もっとも重要なのは「会話を繋げて広げること」でも「より多くの情報を引き出すこと」でもありません。「成功体験を得ること」です。それを理解しないまま当該図示事例に安易にケチをつける人が多い現状こそ、投稿者の夫が憂えた状況そのものといえるのではないでしょうか。



3.余談


 インプ稼ぎのネタツイにマジレス乙、と思うかもしれませんが、メンヘラの経験上「こいつと付き合うのはねーな」と思う理由の七割はこれです。(残り三割は見た目です)
 周りに優秀な聞き手が多い人ほど明示的に意識しないことだと思うので、けっこうこの画像は学びのある話だと思うのですが。

 皆さんはいかがでしたか?

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