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煙草

煙草を吸いはじめたのは、2年半付き合った彼と別れてからだった。
それまで彼に止められていたことを、全てやってしまおうと思った。ピアスを開けて、煙草を吸った。

はじめて吸った煙草はバイブスという銘柄で、ネットで知り合った男の子にプレゼントしてもらった。すごく甘くてバニラの香りが強烈な煙草だった。あのときはカラオケで煙草が吸えたのが懐かしい。
煙草は吸えたのに、ラブホは教えてあげたのは交換みたいで面白かった。ひどい交換である。

そのあとはやっぱり甘い煙草に走って、ガラムを吸っていた。煙草を吸い始めたときにミリ数が大きいものにはしりがちなのはよくあることと思う。

しかしガラムは非常に臭いのでピースを吸い始めた。こちらもなかなかのミリ数であった。よく臭いと親に怒られた。たまに甘いのが恋しくなって、ブラックデビルのカカオを吸った。

そのあと、好きな人の煙草を真似るようになった。好きな人がかわるごとに、ハイライト、赤マル。なんとなくそろえたくなってしまう。あの人の香りという感じ。

ある日、煙草を嫌っていた元彼が煙草を吸いたいというのでわたしの煙草をあげた。彼は私が好きな人を真似て吸っていた煙草を吸うようになった。なんとも言えない征服感と、もう元に戻れない雰囲気がすれちがって、変な気持ちだった。

旦那になる人と付き合い始めたとき、彼にもう今までのようには会えないと告げた。やっぱり好きだったと言われた。彼も私と同じだったのかもしれない。

あれから日が経った。旦那もラッキーストライクを吸うが、わたしはネットで教わったラークのクラシックマイルドを吸うようになった。もう煙草の真似はしない。真似をしなくても繋がっていられるような確かさがあって、今は安心している。

久しぶりに元彼と会ったことがあったが、彼はキャメルとかセッターを吸うみたいだった。もう彼も別の彼女がいる。しっかりとした距離感があって、やっぱり安心した。

でも、今でもたまに、赤マル、ハイライト、ブラックデビルなんかを吸ってみると、なんだか甘やかで懐かしい気持ちになる。もうすぐ本格的に秋になる。この身一つで生きていた頃と同じ季節だ。柔らかい光のなかで煙草を吸うのが好きだ。

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