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『Unua Libro』の英訳本『An Attempt towards an International Language』

『An Attempt towards an International Language, by Dr. Esperanto』は、ザメンホフによる最初のエスペラント学習書、通称『Unua Libro』の初期英訳本の一つ(*1)で、アメリカで最初のエスペランティストとされるHenry Phillips, Jr. (*2)が訳している。1889年出版、訳者前書きは1888年9月17日付。
内容はネット上で見ることができる。
・Google Books
https://books.google.co.jp/books?id=I6d4Ju_3-AcC
・Internet Archive
https://archive.org/details/anattempttoward00philgoog/page/n4/mode/2up
・ウィキメディア・コモンズ
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/21/An_attempt_towards_an_international_language.pdf

今回はこの本についてあれこれ。

〇1889年6月29日付の英字新聞『The Japan Weekly Mail』に、「Asiatic Society of Japan」(日本アジア協会;1872年に外国人を中心に横浜で創立された日本文化の研究団体)の報告が載っており、
https://books.google.co.jp/books?id=GiZDAQAAIAAJ&pg=PA632
これによると、『An Attempt ...』が訳者のHenry Phillips, Jr. 本人から寄贈されている。実際にこの本でエスペラントを学んだ者がいたかどうかはわからないが、1889年時点で日本に『UnuaLibro』の英訳本が存在していたことは間違いない。

〇また、1896年3月発行の『帝國大学圖書館洋書目録. 上巻』に、著者「Esperanto」として『An Attempt ...』が載っており、帝国大学図書館で所蔵されてたことがわかる。
https://books.google.co.jp/books?id=IUNBAQAAMAAJ&pg=PA149
ちなみにその下の『Lingua: an international Language for purposes of commerce and science』も計画言語。著者のGeorge Hendersonは、この「Lingua」のほかにも 「Anglo-franca」 「Latinesce」という言語を創案したが、のちにエスペランティストになった(*3)そうだ。
残念ながら、OPACで確認する限り2冊とも現在の東京大学附属図書館では持っていない。

〇現在、国内で『An Attempt ...』の所蔵を確認できたのは国立国会図書館(関西館)のみ。
https://id.ndl.go.jp/bib/000006445639
国会図書館で購入したのか、それとも誰かから寄贈されたのか、どのような経緯で受け入れたのだろう。蔵書印などがあって旧蔵者がわかったらおもしろいなぁと思っているが、古い資料のため図書館間貸出しの対象外で、直接見に行くしかない。もし関西館に行かれる方がいたらぜひ確認してきてほしい。

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(*1)他には、Julian Steinhaus訳『Dr. Esperanto's International Tongue』、 Richard Geoghegan訳『Dr. Esperanto's International Language』がある。

(*2)Henry Phillips, Jr. については以下参照。
「Henry Phillips, Jr. (1938-1895) La unua esperantisto en Ameriko」
https://bulteno.esperanto-usa.org/a/1980/08/51-phillips/
「An 1888 Critic of Esperanto — The First American Esperantist」
http://impofthediverse.blogspot.com/2015/05/an-1888-critic-of-esperanto.html

(*3)Vikipedio「George Henderson」
https://eo.wikipedia.org/wiki/George_Henderson

(本文、注ともリンクの最終確認日は2023.7.22)

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