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「フリースタイル言語学」

とある方のTwitterで紹介されていた、
異色の言語学者さんの本、

興味があったので、購入して読んでみました。

「フリースタイル言語学」川原繁人


もともと、
大学では言語学系を学んでいたので、
懐かしかったです✨


(「国語」には、文学畑と言語学畑があり、
 文学は高校まででも学べたけど、
 言語学は大学でしか学べなかったので、
 ゼミは言語学をとりました)

(2年生の時のゼミは方言学を、
 3~4年の卒論ゼミでは歌語の変遷を扱ったので、
 最終的には文学と言語学のあいのこみたいなところで遊んでいました)


言語学、とても楽しく、
一瞬、研究者になろうかな、と気の迷いが出た時期もあったのですが、

自分にはそこまでの才能はないな、と正しく現状認識をしたことと、


加えて、
理系ならともかく、
文系で研究者になると、

「その研究、いったい何の役に立つの?」
「それ、税金使って研究する意味ある?」

という問いをされるのは必至で、
(他人からも、そして自分自身でも)

それに耐えられるだけのメンタルはない。
と思ったのとで、
そちらの道は早々に諦め、

でも、「学ぶ」現場にはいたかったので、
高校の国語の先生になったのですが、


「フリースタイル言語学」の第6章が、
そのまま、

「私は世の中のお役に立てますか?」

という章で、


おおお!
私が、大学生の時に考えた問い!


と、引き込まれる思いで読みました。


結果、
言語学が、
めちゃくちゃ世の中のお役に立っていることが具体的に書かれており、

大学生の時の自分の問いが、
成仏したのでした。

うん。
言語学、お役に立つよね。
嬉しい。


文系科目を学んでいる人間なら
誰でもうっすら持っているんじゃないかなー。
「それ、何の役に立つの?」
という、胸を刺す問い。


6章で、
ALSの患者さんが、
声を失っても、
気管切開の前に録音しておいた「自分の声」で
介護者の方とコミュニケーションをとれるように
支援するマイボイスの取り組み、

「自分の声で、介護者(多くの場合は家族)とコミュニケーションが取れることの意味」

を、考えさせられました。


これから、手術で声を失うお母さんが、
2歳と4歳の娘に、
自分の声で絵本を読んであげたい。
自分の声で子ども達の成長を祝ってあげたい。
子どもの成長に合わせて、その都度、自分の声でメッセージを伝えたい。
そうやって、「自分の声」を残すための取り組みの支援のお話、

そして、現在の日本の医療制度では、
「自分の声」が「贅沢品」とみなされるため、
税金による補助がおりない現実についても描かれていました。


文系科目の多くって、
「生きるって、何?」
について問われ、考えることが多いように感じます。

確かに、考えなくても生きてはいける。
でも、考えた方が、人生が深くなるような問い。


この本、
言語学者さんのエッセイということで、
難しいのかなー?と思ったら、
非常に読みやすく、

「俗世のことに興味を持たない、浮世離れした存在」
というステレオタイプな「研究者」のイメージをぶち壊してくれる良書でした。

言語学や、
言葉に興味のある方にはオススメです😊

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