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四十ピースのジグソーパズルと、二千ピースのジグソーパズル。
どちらの完成が難しいかは聞くまでもない。

片手に収まるほどの大きさの中に、繊細さと大胆さが詰まっている。
pimlico(以下、ピムリコ)作品を構成する主なパーツはパズルピースよりはるかに小さいビーズだ。
一つ一つのビーズはかぎ針編みで編み込まれている。
代表作のswingシリーズは、ドレスの裾を持ち上げて勢いよく踊るようなうねりが特徴だ。
軸の周りでくるくる回転させることができるスカート部分は、どの角度から見ても楽しい。
それぞれの作品に付けられた名前は、身に着ける人物を連想する楽しみを見る側に与えてくれる。

ピムリコの作風は、模倣が極めて難しいディテールと、日本人が躊躇いがちな色を大胆に組み合わせ、それらを見事に調和させているところにある。
それぞれの色を構成するビーズの一粒一粒は微妙に色合いが異なるのだから驚きだ。
一つ一つの色の粒をまとまった集合体にして、形を整えながら仕上げることを想像すると気が遠くなる。

アメリカで育った日々、スコットランドの美術大学で培った色彩感覚と表現に対する多角的な視野は、pimlicoブランドを独自のものとする礎(いしずえ)となっている。
人間様々な経歴があるもので、制作者の坂井さんは、数年前までは貿易関連会社の重要ポストに就いていたという。

身体を装飾するアクセサリーへの魅力、そして、趣味として続けていた編み物の限りない表現の幅に魅力を感じたことが制作のきっかけだった。
彼女のアクセサリー制作は糸遊びを楽しむことの延長線上にある。

ピムリコの作品は全て一点ものだ。
糸やビーズの素材に合わせ、編み方や配置は様々。全く同じ仕様のものは作れない。
ビーズやその他パーツは輸入しているものもあり、数も限られる。
制作の際は、立体的でどの角度から見ても美しく、主役級でありながらシンプルな装いにも合う上品なデザインにすることを意識している。
着けたときの重さや耳元で鳴る音を考えつつの制作は塩梅が難しいことだろう。

作品は全て自分一人で制作している。
工程が非常に多く、一日に最大二セットしか制作できないため、輸入ビーズのグレードアップに伴い今月から値段の見直しを行っている。
一度に多くは作れないが、作品を見てくれる人それぞれのお気に入りを作れるまで制作を続けたいと彼女は話す。
今は新しいシリーズ制作にも力を入れている。

ヘアアクセサリーや、バッグにも坂井さんの視線は向けられている。
pimlico = ピアス(イヤリング) でなくても良いのではないか、と思うそうだ。
ビーズ編みの可能性を広げたいという彼女の飽くなき探究心は、尽きることはない。
ピムリコのビーズ編みは、進化し続けてゆく。

pimlico
繊細さの中に大胆さ
キュートなだけじゃないユニークなビーズ編みアクセサリー
maya sakai


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