刀剣乱舞『春風桃李巵』の考察というか感想というか 其の3


其の3です

東京公演が千秋楽

そろそろみんな考察深まってきた頃ですね(?)

其の1とか2があるの? って人はそちらを先に見ていただければ幸いです


アテンション!


歌詞とかセリフとか走り書きしてます

ネタバレしかしてないのでまだ見てない人は撤退推奨

ついでにみほとせ、あおさく、パライソのことも話してます

なんなら花丸、ステの話もしてます

いろんな本丸の刀剣乱舞を浴びている人の妄言が書き連ねてあるので

事故に遭わないよう気をつけてください




本編の話③



「生きていれば、親しき者の死は避けられないもの。

父の代から仕えていた従臣、原田左馬助宗時、朝鮮出兵中、病に蝕まれ、29歳という若さでこの世を去ったのでございます」


原田宗時の死をとても嘆いた政宗は彌陀の名号を御句の上に置いた『国風六首』を詠んだのだとか

彌陀の名号とは「南無阿弥陀仏」のことで

俗っぽく言えば「南無阿弥陀仏」であいうえお作文を作った、みたいな感じ

わかりやすい代わりに風流も何もなくなるな……

双騎では「南(な)」の歌が取り上げられていた


夏衣

きつつなれにし

身なれども

別るる秋の

程ぞもの憂き


(意味:夏の衣に着なれた身ではあるが、その夏の衣と別れる秋は憂鬱である)


在原業平の句を踏まえた歌で、夏衣は宗時の暗喩


ちなみに他の五首は


「無(む)」
虫の音も 涙催す 夕ま暮れ 淋しき床の 起臥(きが)は憂し

「阿(あ)」
哀れげに 思うにつれぬ 世の習い 馴れにし夢の 別れをぞする

「弥(み)」
みるからに 猶哀れそう 筆の跡 今より後の 形見ならまし

「陀(だ)」
誰とても ついには行かん 道なれど 先立つ人の 身ぞ哀れなる

「仏(ぶ)」
吹き払う 嵐にもろき 萩の花 誰しも今や 猶まさるらん


他の五首は、曲の後ろで詠んでいるのが聞こえる

こちらの知識が求められているな……


そしてめちゃくちゃ原田宗時の死が堪えてるじゃん

野心家のイメージがあるって言ったけどそれだけじゃない

すごく繊細な心の持ち主だったんですね



弔いの歌を詠む政宗に鶴丸が

「あんたはなぜ歌う」

「お主はなぜ歌わぬ」


この頃の鶴丸は、歌を詠む心を持ち合わせていないのかな


大倶利伽羅に心を教えようとしていた割に、その心(感情)が苛立ちや悔しさっていう負のものばかりだったのもの気にかかっている

折れた仲間のことから立ち直れていないんだろう

鶴丸は驚きを求めていたずらをしかけたりふざけたりするやんちゃさが目立つけど

真白な見た目や振る舞いにはどこか儚さもある刀剣男士

この時の鶴丸の心は空っぽで、真っ暗な虚無が広がっている

そんな風に見えてしまった


(政宗)
涙枯れて

心渇き

嘆く声も掠れ


(鶴丸)
落ちてゆく

果てしれぬ穴の底

落ちてゆく

真っ暗な落とし穴



やっぱりここは、

政宗は宗時の死を悲しんでいて

鶴丸は折れた仲間のことを思い忍んでいる歌なのでは

そんな確信を持ち始めた

冒頭のあの落とし穴は、鶴丸自身が落ちていく真っ暗な穴だった


じゃあ、大倶利伽羅は……

いや、最後に言いますね



(政宗)
憤りに似た

(鶴丸)
虚無


「憤りに似た」に続く言葉が虚無、なの

憤りを通り過ぎて、何も感じない

それはやはり心が虚っぽになってしまっているってことなのでは?


鶴丸は、憤りを感じる心があったはずだけど、何かがあって喪ったということでしょうか



(政宗)
哀しみに似た


(鶴丸)
驚き


かなしい驚き……

鶴丸にとっては何だったんだろう

「哀しみに似た驚き」ってフレーズが強すぎて、しばらく思考停止した


折れた誰かのこと、三日月宗近のこと、あるいはそれに関連した、冒頭の「先の任務」での何かかもしれない

あおさくで、三日月宗近を「機能」だと言った鶴丸も、この時点ではそこまで割り切れていなかったのかも


(政宗)
涙に濡れた袖を

(鶴丸)
足元を


(政宗、鶴丸)
照らす容赦のない月


今宵くらいは朧げであれ


(鶴丸)
朧げであれ




「知ってるか? 月は裏側を絶対に見せないらしい」

「ドーンと行ってバーン! ははははは、あながち間違ってなかっただろ。手紙を狙ってくるとは驚きだぜ。敵もなかなか風流だな」


言いながら、鶴丸が階段を登って、大倶利伽羅より高い位置に立つのが、なんだか視座の違いを表しているみたいで、見えている景色の違いを見せられているみたいで

鶴丸の眼には何が映っていたんだろう



「おそらく別の機会を狙ってくる。まだ終わってはいない」

「ああ」

「行くぞ」


ここで鶴丸が先に行くんだよね

今までは「敵の狙いはここじゃない。行くぞ」って大倶利伽羅が先を行っていたんだけど、ここから全部鶴丸が前を歩く

二人の中でのバランスというか、関係性ができあがりつつある感じがする

張り合う鶴丸もちょっと子どもっぽいところがある

大倶利伽羅が相手だからかな

こういうのを見ていると、パライソで鶴丸にピッタリくっついて行動していた大倶利伽羅も納得

ここで築いたものがパライソでの二振を作っていたんだね



時空は大坂の陣へ

天下分け目の大戦、関ヶ原の戦いの時、政宗は会津征伐へ乗り出していて参加できなかった

東北から大坂はあまりに遠かった


もう少し早く産まれていれば、ということではなく、場所やタイミングなんだなあ


「政宗は表舞台に出る機会を逃してしまったのです」

ここで宗乙の寿命が尽きて退場するという演出も

歴史の表舞台から姿を消した伊達政宗と重なった

天下を取る希望を無くした政宗はもはや死んだも同然の心境だったのではなかろうか



時代の波に

取り残され

何も成せぬまま

朽ち果ててゆくのか

私は埋もれ

せせらぎにまぎれて

聞こえたのは

心折れる音

私は埋もれ

折れていくだけ

いつか海へ

心の戯言



この隣で大倶利伽羅はひたすら刀を振っている

もう戦う意味を無くしてしまったと歌う政宗の隣で

使われない刀を研いでいる


そんなふうに見えて、切なさでまた前が見えない


この出陣の間、大倶利伽羅は隙あらば鍛錬している

自分の弱さを知るたびに、研鑽を積んで強くなろうとする姿勢を素直に尊敬した



人はみな

帰る波なれ名取川

我は残りて

瀬ぜの埋もれ木



心折れる音

(大倶利伽羅)
聞きたくなどない

(政宗)
心の戯言

(大倶利伽羅)
聞こえてたまるか

(政宗)
志はどこ

(大倶利伽羅)
たとえ見えなくとも

俺は

俺は

(政宗)
埋もれ木の戯言



大倶利伽羅は天下人への野心に燃える伊達政宗が好きだったんだな

戦い続けて欲しかっただろうな

それが大倶利伽羅の存在意義だったのかも


政宗さまが諦めたようにふっと笑って去った後、

大倶利伽羅がゆっくり時間をかけて納刀する

太平の世になって刀を置いた政宗に抵抗しているみたいに



「おお、こっからは海がよく見えるなあ!」

「……敵に動きがあった。いけるか?」


いくぞ、じゃなくて、いけるか?

多少は大倶利伽羅への気遣いがあるのか

鶴丸は大倶利伽羅に甘い……

冒頭の手合わせ見てもそう思うのか、って総ツッコミ喰らいそうだけど

自分の眼(まなこ)からはそう見えてしまうわけです

なんなら、鶴丸の大倶利伽羅に対する厳しさって、鶴丸が甘えられる相手を作るためだったんじゃないかとちょっと思っている

なんとなく、中の人の関係も相まってそう見えるのかな笑


「ああ」

ちょっと苛立ちを含んでいる?

「当然だ」というニュアンスもあるけど、それだけじゃないんだよ


「よし」

前を歩く鶴丸と、ついていく大倶利伽羅


どこかで見たような構図になってきた



伊達政宗が書状を持たせ、支倉使節団を派遣する

次の遡行軍の狙いがこの手紙


でもその前に伊達政宗が石巻の海で詠んだという漢詩を鶴丸と大倶利伽羅で詠む

(原文)
青天涵碧海
碧海接青天
海外更無海
向天莫問天

五言絶句だけど韻を踏んでいない、のに最後が「海」か「天」なので見た目が綺麗

漢詩は別に詳しくないけど、めっちゃおしゃれ〜と思った


(書き下し文)
青天碧海に涵(ひた)し
碧海青天に接す
海外更に海なく
天に向(む)かいて天を問う莫(なか)れ

(現代語訳)
青い空は碧い海に影を映し、碧い海は青い空につながっている。海は果てしなくどこまでも広がり、その向こうに別の海は無い。その海を覆う天はどこまで広がっているかと、天に向かって尋ねてみても詮無いこと。海も天も果てしないのである。

cf.宮城教育大学紀要『伊達政宗漢詩校釈』島森 哲男


なんか泣きそうになるんだよね、ここのシーン

なんでだろう

鶴と伽羅の前に広大な海が見えるんだよな〜

石巻市の旧名が「月ノ浦」(つきのうら)っていうのもあって

伊達と伊達の刀と三日月宗近が綺麗に重なる



世は戦を終え平穏が訪れた


青葉の山から見下す海

世界へ広がる海

語って聞かせてしんぜよう

この政宗の夢

この海にあの船に託す

でっかいでっかい野望

お主に問いたいことがある

この国の中心はどこだ

どーこーだ

どこだと思う?

鯱鉾立ちしても何しても

奥州は所詮僻地

天下狙おうにも遠すぎる

政宗はひなびと

世界の海のど真ん中

潮の流れに導かれ

大きな夢の

でっかい野望の

船出

渡れ渡れ大陸へ

届け届け架け橋

海の向こうに描いた夢

一度折れても

何度折れても

見続けるのだ

最後の夢

終いの野望

この政宗の最後の夢



「しぶといよなあ、人間ってのは。あっぱれだよ」

ここの鶴丸の笑顔大好きだーーーー!!!!!

やっと、あおさくやパライソで見たことある鶴丸になったなあ


そして政宗さま歌うまっ

食い気味の拍手が起こるのも頷ける

圧倒的歌唱力で殴られる

刀ミュとかってあんまり劇中で拍手起こらないというか、拍手せず、静かに観劇しましょうみたいな雰囲気がある気がしてるんだけど

そんな空気を押しのけるくらい、圧倒的歌唱力……



「敵の狙いは」

「あれだ!」


二人息ピッタリになってるじゃん〜〜〜

この辺から元からない語彙力がさらになくなってくる


この「手紙ひとつで歴史が変わる」可能性に気づけていた鶴丸国永ってやっぱり洞察力と想像力が凄まじい

江水だと、山姥切国広が「大勢に影響はない」とスルーしてしまった事象だから

もしあそこに鶴丸がいたら、放棄された世界にならなかったのかもしれない

どうだろう、山姥切国広も気づいていたのかもしれないな

その上で、自分が犠牲になる(折れる)ことでなんとかなるなら、それでもいいと思っていたのかも

江水の話は一旦置いておいて、手紙を奪いに来た時間遡行軍と対峙する鶴丸国永


「さあ、大舞台の始まりだ!」

祝いに来たのか

世界への門出

こいつは一興

粋な演出華々しく散れ

それそれそれ

まさか終わりかい

出帆の祝辞

せっかくだから楽しもうぜ

華々しく舞え

餞の踊り

それそれそれ


「はは、遅い遅い!」


鶴丸捌けて大倶利伽羅が登場すると曲調がガラッと変わる

華やかで派手だったのが華美さはないが力強さのある曲になる

ここの一連のシーンが好きすぎてディレイのデータ擦り切れてたと思う



腹に据えろ

気を散らすな

目の前の敵を倒すのみ


「その心がけ、悪くない」

「一人で十分とは言わないのかい」

「不十分は承知している! だがやらせてくれ!」


ここの曲めっちゃいい、龍が見える(語彙力)

大倶利伽羅の殺陣、刀を使わないステゴロアクション入ってるのが素晴らしい

しかも右手も左手も使って遡行軍殴るの

かっこいい、推し、かっこいい

なりふり構わず使えるもの全て使ってる感じ



(鶴丸)
腹を据えろ

気を散らすな

目の前の敵を必ず倒せ


「必ずだ!」


また、戦う大倶利伽羅を上から見下ろしている鶴丸の構図

でも「俺一人で十分だ」のときと比べて、大倶利伽羅を見守っている温かさを感じる

ここの大倶利伽羅を照らす照明がめっちゃかっこよくて、多分大倶利伽羅の村民じゃなくても惚れると思う

曲が一瞬音消えて、二つのライトが背を向けた大倶利伽羅にあたるんだけど、ほんっとに良い

良すぎて語彙力失うので、これ以上、特に情報は増えない

とにかく観てくれ


華々しく戦え

初陣の仕切り直しだ


これ粋だよね〜
「初陣の仕切り直しだ」って言葉選びがお洒落すぎる

やっぱ伽羅に甘い……


やりきった大倶利伽羅かっこいい、好き

惚れる、元々惚れてるけど


「やるじゃねえか。まあまだ驚くほどじゃないがな」

そこへさらに時間遡行軍が現れる


で、敵に斬りかかられそうになる大倶利伽羅を鶴丸が「伽羅坊!」って突き飛ばして助ける


ここ「待って!? ドッ」って叫んだ

伽羅のことを守りたい存在って思ってたって明確に言われて、わかってたけど頭抱えた

顕現したてでいきなり殴って、鶴丸何考えてるの? ってなったけど、鶴丸なりに伽羅のことを大事に育てていたんだなって


力を増した時間遡行軍に斬られ、倒れ込む鶴丸国永

え、折れーー!?


大倶利伽羅の雰囲気変わる、衝撃と後から怒り

照明の演出が良くてね、ここも

伽羅に白い光が当たってるの


真っ暗に白い一筋の光

鶴丸の白と傷の赤、大倶利伽羅の黒と赤がよく映えるコントラスト


印象的なシーンはたくさんあるけど、ここは圧倒的

円盤出るまでにn回脳内再生すると思う


ノールックで敵を斬る大倶利伽羅、覚醒したっていう表現として最高

真剣必殺してる、それか特になってる

怒り狂いながら敵を斬り倒すけど、これは、鶴丸への思いの強さが伝わってしまったよ

いきなり殴られて、わけわからんまま任務に駆り出されて、飛脚やらされて、そうする中でもちゃんと鶴丸への信頼は生まれていたんだな


大倶利伽羅自身も、そういう鶴丸への感情を自覚した場面でもあると思う

敵を全部倒して、鶴丸に一歩ずつ近づく伽羅


「驚いたか? 伽羅坊」


ぱって起き上がる鶴丸

怪我の割にピンピンしてた、ように見せるのがうまい


流石にちょっと悪趣味すぎないか

って思ったけど、実はかなりの深手を追っていたんだろうな

本当に傷を負った時のSEだったんだよね

あるいは、破壊されてて、御守り効果で破壊を免れた可能性もあるな……

破壊ボイスなかったから違うかな

いや、もしかしたら破壊ボイスでPTSDになる審神者への配慮で省略しただけかも

実際、刀ステのジョ伝はしっかり心の傷になってる審神者がここにいるから


とにかく、自分の重篤さをなんとかごまかすためにああいう振る舞いをしたんじゃないかな

殴りかかる大倶利伽羅とその拳を手で受け止める鶴丸

この怒りは負の感情じゃなくて、愛だよ〜〜〜〜

心配したんだぞっていう大倶利伽羅の優しさが見えて、もう好きすぎて無理

生きててよかったっていう安堵が、あの拳には握られてる


「悪い、冗談がすぎた」

鶴丸は悪い驚きを進んで仕掛けるような性格じゃないと思うんだ

ここもすぐに詫びるし、遡行軍に斬られて意識が飛んでしまった、とか

驚かそうとは意図していなかったドッキリなんじゃないかな


「さあ、いくかあ。いつまでもこの格好じゃサマにならないからな」

このセリフ、なんか引っかかる……

鶴丸は「衣装は白一色でいいのさ。戦場で赤く染まって鶴らしくなるだろ?」と言っているから

血で衣装が濡れることを「サマにならない」って表現にするかなあ

むしろ鶴らしく「サマになっている」んじゃないかい?

まあ、戦場で赤く染まるのは自分の血で、ってことじゃなく返り血でって意味だろうから、言葉通りに受け取ってもいいのかも知れないけど

そうするとやっぱり致命傷を負ってたんだろうなって思う


「無事に出帆したようだな。いい旅をーーーー!!!」

「いい旅にはならない。慶長遣欧使節は失敗に終わる。支倉六右衛門常長は無念の最期を」

「わかってるよ、歴史ではそう語られてるんだろ。だが、案外向こうでは楽しく旅してたかもしれないぜ。日の本一の筆まめ武将伊達政宗の手紙が、世界一広い海を渡るんだ。それだけでワクワクするだろ」

「……そうだな!」


ここ、すごく好き

鶴丸に同意してくれる大倶利伽羅も大好き

史実ではどうあれ、託された手紙を届け、楽しそうに旅してる支倉常長を見てたら報われた気持ちになる

伝えられている事実はあるのかもしれないけど、ハッピーエンドを想像したっていいだろって鶴丸が言ってくれることで救われる

やっと、前向きで強い鶴丸の表情になった気がする

何かから立ち直れたんだろうな

あの鶴丸国永の気持ちが落ちるような出来事って一体なんなんだろう

いつか描かれるんですかね

その時はこっちも覚悟しないといけません


青き空

青き海

碧海にとけ

青天につながる

空も海も一つ

雨も土も一つ

潮の流れに導かれ

日の本の外へ

海を渡る手紙

希望

運べ運べ大陸へ

届け届け届け



最期、スペインに渡った使節団が宴をしているのを政宗が見ている構図で終わるんだけど、伊達政宗の物語の最後としてはハッピーエンドだな

史実は詳しくないけど、こっちの方が、救いがあって好き

歴史でどう語られているかは別として、救われる結末にしてくれてありがとう



「見ろ、伽羅坊。月が食われていくぜ」


音もなく(音もなく)

欠けていく(欠けていく)

見えなく(再び)

なっていく(満ちるため)

光と影が並ぶ

一直線に

影を落とすのは

己が光を遮るから

そのことを忘れるな決して

全て影に覆われると

現れる赤き月

漆黒の闇に

真白な光に

浮かび上がる赤

影を落とす赤

綺麗だ


影があるから、光もよりいっそう輝く

その影も、自分自身であることを忘れるな

2振りが終盤、デュエットでこの歌を歌うのは、価値観を共有できるようになったからこそなのかな


そして、全てが影に覆われたとき、見えるのは

漆黒の闇の中でも、真っ白な光の中でも、はっきり見える綺麗な赤い月

伽羅(黒)にも鶴丸(白)にも映える、綺麗な赤


ああ、これで冒頭の真白の鳥メロディで歌った歌が回収された

ぽかりと浮かぶ赤なんだよって思ってた

鶴丸の白と大倶利伽羅の黒と、月の赤

政宗公の前立て、三日月宗近

伊達政宗の「月」と「独眼」がものすごく丁寧に物語に落とし込まれていて

観れば観るほど味わい深い舞台だと思う

この公演が無事に大千秋楽まで駆け抜けられることを切に願ってる


大倶利伽羅「行くぞ」

鶴丸「ああ」


おや、大倶利伽羅が先に行くの?

鶴丸は気の無い返事してるなあ、と思ったら

「少しはいい面構えになったな」

で呼び止めて

「置いてくぞ」

でやっぱり鶴丸が先を行く


この二振はなんでずっとどっちが先に行くかで張り合うのかな!?

パライソを見る限り、大倶利伽羅が折れてあげたっぽいけどね

kawaiiしか出てこない



年老いた伊達政宗が花見酒をしているんだけど、幻想的で歌もめっちゃ素敵


はらはらよよと

はらはらよよと

うつつはどちら

夢はこちら

西か東か


このへんで心の中の榎本さんが「北へー!」って叫んだことは内緒

こんないい歌の最中になんてこと考えてるんだ



天か海か

うつつはこちら

夢はどちら

右か左か

白か黒か

それとも赤か

花の巵覗き込み

口に任せて一人歌

はらはらよよと

はらはらよよと

春の麗に迷い込み

きみは旅人

誰の待ち人


もしかしなくても『醉餘口號』を匂わせてる

今回の双騎のタイトルである「春風桃李巵」の元になった漢詩の題名で、意味は「酔った後口ずさんだ詩」

本編でたくさん歌を詠んでいたのに、タイトルの漢詩は詠まずに映像で魅せてくるの、本当にかっこよくて素晴らしくてため息が出るくらい


ちなみに『醉餘口號』の原文と訳はこんな感じ


四十年前少壮時

功名聊復自私期

老來不識干戈事

只把春風桃李卮


四十年前、若く血気盛んなころは

功績で名をあげよう(そうできる)と自らにこっそり期待していた

(しかし)歳をとってくると、戦のことはわからなくなってくる

ただ春風のなかで桃や李の花を楽しみながら盃を手に取るだけだ


この本編で描かれてきた政宗公像まんまの歌だな

この漢詩がずっとこの物語の中心だった


曇りなき

心の月を先立てて

浮世(憂き世)の闇を

照らしてぞゆく



これは政宗の辞世の句

政宗の一生を見届けた



うつつはどちら

夢はあちら


春風の中、巵を傾ける政宗が情緒的で、日本人ならみんな好きな光景

命が尽きたことを、御簾を下ろすことで表現するのも趣深い

命が尽きる瞬間の表現も細やかで好き



曇りなき

心の月を先立てて

憂き世の闇を

照らしてぞゆく


大倶利伽羅が政宗の辞世の句を口にする


形見のような感覚なんだろうか

「いい歌だよなあ」って鶴丸も言う

「そうだな」

歌を詠む心を持っている二振……

元主の辞世の句を大切にしてくれる二振を見ていたらまた泣きそうになった

今回はみほとせやあおさくみたいに歴史上の人物の一生に寄り添ったというより、手紙のある場所を渡り歩いたという感じだから

どれくらいの時間を政宗と過ごしたのかはわからない

政宗を見守っていた、と表現する方が正しい気もする


「最初の、こと初めは」


一文字一文字

私の物語の

ことはじめ


もう一つがこれです

「京へ出立する折に

殿からいただいたお守り」


「古い、手習」


殿の心宿る

お守り


鶴丸国永が愛姫を歌うんだけど、鶴丸を残しつつ、愛姫に寄り添っていて、素晴らしい表現なんです

辞世の句っていう政宗最期の手紙から

手習いっていう政宗最初の手紙に繋げるのも、エモーショナルがすぎる


古い手習いを愛姫がずっと大切にお守りにしていたのも

二人の深い絆を感じて涙腺決壊

本当の二人が歴史でどうだったと言われているかは別にして、いや別にしなくても

お互いを大切に思っていたのは真実だったんだなと


古びた紙の上

綴られた歌や手紙

誰かの物語

書き留めることで

誰かが受け取ることで

隠された思いは

「確かに残っている」


政宗にもらった歌の扇子を閉じる大倶利伽羅


これは、大倶利伽羅の成長を描いているけど

同時に、大倶利伽羅と鶴丸国永が心を手に入れる物語だとも思う


「伽羅坊、きみから見てもいい面構えになったと思わないかい?」

「どうせまた出陣させるんだろ。ならあの頑固者あたりと組ませてみたらどうだい」


頑固者って誰???


石切丸かな〜と思ったけど「心根の優しい男」だし、みほとせは大倶利伽羅とにっかり青江の二振で遠征中にトラブルに見舞われたんだから、石切丸と組まされているわけではない

みほとせに繋がっているなら組んだ相手はにっかり青江ってことになるけど……

にっかりは頑固者ではない、ぞ?


またいつか大倶利伽羅の話見れたりするのかなーなんて



「ありがとな」

「どうしたんです、急に」

「俺もいい面構えになっただろ」


ありがとな、は何に対してのお礼かなって思ったけど

大倶利伽羅と二人で出陣させてくれてありがとうってことでいいんだよね

そこで得られたもの、あるいは吹っ切れたことへの感謝かな



「ああ、そういや月が欠けていくのを見た。裏側は見られなかったがな」


三日月宗近の真意は読めないって言っている……んだよね

これ、パライソでは「月の裏側ってところかな」って言うんだけど

それは三日月のことを割り切れたからってこと?



一人鍛錬している大倶利伽羅に手合わせを誘う鶴丸


「馴れ合うつもりはない」

「そう言うなって」


この声色と刀を抜く動作で、大倶利伽羅を黙らせて手合わせに持ち込む鶴丸は、伽羅坊の扱いに慣れている、好きだ


「よーし、行くぜ」


で、消える鶴丸


冒頭に自分で掘った落とし穴に自分で嵌る


花丸本丸の鶴丸じゃん、もうかわいい

冒頭で墓を掘ってるんだとか言ってたの信じられないな

でも、仮に自分の墓を掘っていたんだとして

それを忘れて、うっかり落ちたんだとしたら

墓穴のことなんて考えなくてよくなってる鶴丸は伽羅との任務で救われたんだなと


「誰だよ、こんなところに落とし穴掘ったの〜!?」

「お前以外に誰がいる」


大倶利伽羅に引き上げてもらう鶴丸

ここ、大倶利伽羅の手をパチンと打って掴むんだけど

隻手音声の問答を回収してて

鶴丸にとっての頼れる誰かに大倶利伽羅は成長してくれたんだなあと思った

何かがあって、暗い穴の中にいるような精神状態だった鶴丸が、大倶利伽羅によってそこから抜け出せたってことでしょう?

パライソで、鶴丸は大倶利伽羅に甘いし、大倶利伽羅も鶴丸に甘いなって思ってたけど、二人の絆はこの時点から固く結ばれていたんだな……



「いや、しっかし驚きだぜ。まさか自分の作った落とし穴に落っこちるとはな」

「驚いたのはこっちだ」

「なんだ」「いや」

「なんだ」「いーや?」


大倶利伽羅に驚きを与えられたことに驚く鶴丸

驚きを、というか

大倶利伽羅が自ら自分の感情を明確に表現するのは本編通してこれが初めて

この驚きは「伊達政宗の刀だった大倶利伽羅」としての感情じゃなくて

刀剣男士である大倶利伽羅自身の感情


確かに「これが悔しさ……」とかは言ってたけど、心が動くことに慣れたというか

自然に己の心の動きを言葉にしてくれたことが嬉しかったんじゃなかろうか


「さあて、どうすっかなこの穴」「埋めろ」「ええ!? せっかく掘ったのに!?」「埋めろ、迷惑だ」「ええ〜〜埋めるの〜」


言うの我慢してたんだけど、牧島さんの大倶利伽羅の滑舌がとても素晴らしいなと思っていて

「迷惑だ」とかが顕著なんだけど「meiwaku」の「ei」二重母音の部分、めちゃくちゃはっきり「い」の発音をしてくれるのが

古風で真面目な大倶利伽羅っぽくて最高だなと

逆に今風に言えば「めーわく」って表記が一番近い発音になるのかな


この滑舌、ポテンシャルなの? 有識者教えてください

いずれにせよ大好きです


また鍛錬に戻る大倶利伽羅
黙ってこっそり帰ろうとする鶴丸に「逃げる気か」って止めるんだけど、彼は背中にも目があるのか?

描かれなかった以外にも、鶴丸との出陣で相当苦労しただろうな


「ほら、道具が必要だろ。素手で埋めるのは難儀だからな。だが……逃げるかもしれないな!」「おい! ……くそっ」


ここは「(一緒に来てくれないと)逃げるかもしれないな」って言ってるようにしか聞こえない

実際大倶利伽羅も後を追いかけてあげる

優しい……

一緒に来て欲しいなら素直にそう言え、鶴丸〜

どっちもかわいい、可愛すぎる


パライソを見た時、伊達双騎が見えた(幻覚)けど、伊達双騎を見てもパライソが浮かぶ

こういうことの積み重ねがパライソの「敵わねえな、伽羅坊には」という発言に繋がっていくんだな

今振り返ると「敵わねえな、伽羅坊には」のセリフの重みがすごく変わるじゃん



ここで暗転してから『刀剣乱舞』


歌詞はパンフに載ってるからじっくり読む

何回聞いても大倶利伽羅が「烈日背にして」って言ってるようにしか聞こえない地獄のような聴力してる自分が恨めしい


最後、御簾の向こうで立つ二振が高貴

これ天才の構図で、画面の前でも思い切り拍手した

届かないけどね笑


双騎のボリュームじゃないし、見ているだけで体力使った

政宗さまは別格で歌がうますぎるとして、大倶利伽羅こんなにも歌唱力で殴打してきてたっけ?

元々とても歌声好きだったけど、さらに高みへ行っていないか

鶴丸は伸びやかで素敵だし、唐橋さんは言わずもがな、めっちゃ完成度高くないか、このミュージカル


あー最高だな、早く円盤欲しいなー

円盤届いたら毎日観たいなー

はい、とまあ本編はこれでおしまいだけど、この後2部があるのでそっちの話は次でします!

長々とありがとうございました!

考察とか言ってるけどただの妄言

でも、誰かが受け取ることで隠された思いが残るらしいのでよろしくお願いします


次で最後

最後はもっと限界オタクの戯言みが増してると思います




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