2020年創作まとめ

こんにちは。2年振りのNote投稿および創作TALKさんの企画参加になります、空き缶です。
2020年の創作まとめということで、自分用に今年の進捗を書き連ねたいと思います。

この2年間、自分としては重要なライフイベントが目白押しでした。
就活に、大学院卒業に、就職。
今年は社会人一年目ということで仕事に慣れるだけでも大変でしたし、そんな中でもよく創作に取り組んだんじゃないかなと思う部分もありますが、今自分が目指している目標から考えれば全然だめ、進捗は思わしくない状況です。
現実を直視するためにも、一つずつ書いていきます。

〈3月-5月〉
無事大学院を卒業できることになり、新たなスタートを切ることになったわけですが、自分の胸にあったのは6年間の大学生活への郷愁よりも、コロナ禍の中での入社に対する不安よりも、まず「やっと落ち着いて小説が書ける」という希望でした。
これまで僕は短編小説を何本か書いていて、次の目標は長編小説を完成させ、公募に出すことでした。(2018年創作まとめ参照)
しかし2019年は就活の地獄から始まり、修士論文を書き上げるために一秒でも長く大学院で実験に没頭する必要がありました。
大学院というのはその名前からわかる通り、少年院と同様の収容施設であり、所属する学生は研究という名の労働を最低2年間課せられます。
休日もろくに無く、生活は割とギリギリでした。書くチャンスはもちろんあったわけですが、自分にとって小説を書くというのはそんな生活の中でストレスの解消にはならず、むしろ自分の文章力のなさと正面から立ち向かう、非常に辛い作業でした。「書かなければ」という焦りはやがて「どうせこんな状態ではいい作品なんて書けない」という諦めへと変わり、どんどん創作のモチベーションが下がっていきました。

しかし2020年3月、晴れて研究漬けの生活から解放され、春休みになりました。4月からは働き始めましたが、この頃は緊急事態宣言もあり在宅で研修だったため、時間が予想以上にある。お金をもらったあげくに週休二日もらえるとは、社会人ってなんて素晴らしいんだろうとブラックさに慣れきった自分は思いました。

また、物語を書いてみよう。

コロナ禍は日本社会に深刻なダメージを与えていますが、自分にとっては、この決意の後押しをしてくれたという点でラッキーな一面もありました。


自分のそれまでの創作スタイルは、良い作品に触れて感化されたときや、たまたまやる気になったときに突発的に書く、というものでした。しかし長編を完成させる上では毎日コツコツ書き進めることが必要だと考え、執筆を習慣づけるためにあらゆる工夫を重ねました。
新居では創作に集中できるような環境作り(夢のL字型デスク、デュアルディスプレイ)を整え、自分の創作の手本となる作品には惜しみなく投資しました。
毎日500字を目標に、就業後の執筆を続け、緊急事態宣言が出たこともありGWは丸一日キーボードを叩き続けました。
結局この時期までに書きためていた原稿はほぼすべてリライトし、2-3万字の進捗があったと思います。遅筆な自分にとってはなかなかの快挙ですし、なにより書くことを習慣にできたのがとても達成感がありました。

ただ、1日500字。守れない日もあったけれど、これをコンスタントに3ヶ月続けたのに、休日なんかは2000 字くらい書く日もあったのに、進捗が3万字以下。計算が合わないですよね。
つまり、僕は物語の序盤をこの期間に何度も書き直していました。いくら書いても、理想の作品に、理想の文章にならなかったのです。

〈6月〉
自分の長編作品は、すでに書かれているいくつかの作品のエッセンスを混ぜ込んだものにしたいと思っています。
自分にとっての理想を体現する大切な小説を、自分流に落とし込みたい。
前記事でも述べた通り、そのキーワードの一つが「非現実的な青春への郷愁」であり、読者を作品世界に引き込むトリガーです。

実体のないこの曖昧な概念は、必ずしも作品のストーリーやキャラクターによって成り立つだけではなくて、作者が選び取る表現の一つ一つが、それを演出しています。

特に自分がバイブルとしている「いなくなれ、群青」(河野裕、新潮文庫NEX)や「三日間の幸福」(三秋縋、メディアワークス文庫) は、作者の磨き抜かれた感性と文章力が独特の世界観を構築しています。

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どうやったら自分にもこれができるだろうか。

書き上げた文章について、呻きながらdelキーを叩き続けていた僕は、いつもこれを自問自答していたように思います。

確かに、自分の書いた文章と自分が目指す文章には乖離がある。でもそこの差を埋めるプロセスがわからない。

もちろんこれは当たり前の話です。小説を読んだだけでそれと同レベルの文章が書けるなら苦労はない。その境地に誰しもが辿り着けるわけではないからこそ、プロ作家というのは特別なのだと、わかっていました。

でも、自分が最初に書き上げる長編作品に、一切の妥協はしたくない。だって、自分が尊敬してやまない「いなくなれ、群青」にすら、「面白くない」という人はいるのだ。万人受けする作品なんてありえないからこそ、作者が妥協してしまった瞬間に、それは駄作に落ちるんじゃないか。

そんな悩みは巡り巡って、「自分は誰かの心を動かせる小説が書けるのだろうか? 努力の量や経験値ではなく、センスがもうダメなのではないか?」というふうにこじれていきました。

折しも6月になって出社するようになり、また生活が忙しくなり始めます。

意地で書き続けてはいたものの、煮詰まることが多くなってくるなと感じていたある日、こんなツイートを拝見しました。

実は以前から綿津見さんが主催される企画は気になっていたのですが、学生時代は多忙を極めていたため締切に間に合わせることができませんでした。

このときも、長編の制作に追われているため暇というわけではなかったですが、息抜きがてらここで寄り道するのもいいかもしれないと自分を説得しました。何よりこういう企画に一回くらい参加してみたかったのです。

そういうわけで、長編は一旦おいておき、テーマである「非現実的な青春への郷愁」はそのまま受け継いだ短編「群青の夏、命尽きても」の執筆に6月は没頭することになるのでした。

〈7月〉

自分はアマチュア作家の中でも、完成させた作品がかなり少ない方なのですが、以前にも夏のお話は書いていました。

2年前の夏、「平成最後」をテーマにした作品で、今読むのはかなり恥ずかしいですが、当時はそれなりに手応えがあった作品です。(何を隠そうこれが綿津見さんの企画に間に合わなかった作品でした……)

「群青の夏、命尽きても」はこれと似た空気感のお話であったため、最低限の目標として、質・量ともにこの作品を超えるものであろうと決めました。あくまで執筆の際の目標ですけどね。

実際、短編というか中編くらいの文字数であったため、ワンシーンを切り取るようなお話とちがって、長編のように展開の緩急や伏線の回収なんていう要素もかなり意識したと思います。

7月の頭くらいには無事完成して、7月18日にweb夏企画に提出しました。

自己評価でいえば、完成から時が経つにつれて冷静に見られるようになっていて、う〜んまあ60点くらいかな…………という感じなのですが、それでもこの瞬間の全部を詰め込みました。

web夏企画の本当にありがたかった点は、主催の綿津見さんが素敵なHPや宣伝用の画像、手書きの感想文など、数々の工夫を凝らしてくださったことで本当に多くの方に作品を読んでいただけたことです。

カクヨムはPV数がわかる仕様なのですが、今までの自分の作品の中で文字通りケタ違いの閲覧数でしたし、評価していただけることも少なからずありました。

また、読んでくださった方の中にはご丁寧に感想をしたためてくださる方もいらっしゃって、その中には涙が出そうなコメントもありました。自分の位置を見失いかけていた僕にとって、希望になるようなコメントもありました。すべてスクショして保存してあります。

自分のベンチマークになるような作品を一つ作れたこと、それに思わぬ反響をいただけたこと、どちらも大変嬉しくて、参加してよかったなあとしみじみと思います。

〈8-12月〉

正直ここまででこの記事の内容はほとんど終わりで、2020年の後半はまた長編の執筆にコツコツと取り組んでいました。

その中で知人に文章を見て貰うことも何回かあり、一つ大きな気づきだったのは、「自分はストーリーありきでキャラクターを軽視する癖がある」ということです。

特に長編を書いていると、物語を矛盾なく前に進めるために、キャラクターに取って貰う行動や口にして貰う発言というのがたくさんあります。ただ、その場その場で「このキャラならこうしたアクションがふさわしい」という制約があるはずで、僕はここを一貫できていない傾向がありました。

物語の展開に合わせてキャラの行動を柔軟に変えるのは目先の矛盾を解消する一方で、読者からすれば感情移入しづらさを生み出す重大な違和感に成り得ます。

それに気づいてからは、登場人物の設定をもう一度深掘りして、行動原理や価値観を整理していきました。スローガンは「キャラに責任を持つ作者になる」。

またもう一点、「書き直したくなっても、ひとまず先に進む」ことにも気をつけています。

自分の目標は妥協しない作品を作ることですが、実は公募の締切が近づいてきています。ただでさえ短編執筆に一ヵ月費やしているため、もう無駄に書き直している時間はありません。

12月31日時点で、現在の進捗は78965字。公募の締切が4月上旬で、今の目算では12万字くらいかかるのではないかと思っています。

これに山のような推敲箇所があることを考えると、ちょっと先のことを考えるのも怖いくらいですが……まずは全力を尽くすことを2021年の課題にします。

さて、どう締めようかと思って2年前の自分の投稿を見ると、「本年はここで筆を置かせていただきます」となっていますね。

当然ですが、今の自分には筆を置いている余裕などありません。活動をまとめておきたい気持ちがあったのでクオリティ無視でNoteを書き散らしてしまいましたが、今からまた執筆に戻りたいと思います。ここまで読んでいただきありがとうございます。

今年も大変お世話になりました。

来年には何らかの報告がまたできますように。

空き缶


〈おまけ〉
創作まとめといえば、実は小説だけでなくて今年は作曲にも少し挑戦したのでした。
元から曲作りには興味があったのですが、専用の機材もないしコード進行などの知識もない。あと小説忙しいし……と行動に移せない状態でした。
ただ、自分の好きなOrangestarさんの楽曲を聴いていたある日、

「これコード進行めちゃめちゃ単純じゃないか?」

と気づいたのです。
Orangestarさんは単一のコード進行を繰り返して曲を作ることで有名なのですが、これ和音マジで4つだけじゃん……それでこんなエモい曲作れるのか……と衝撃を受けました。

というわけで、やり方もへったくれもなく、Orangestarさんのある代表曲のコードをそのまま流用し、メロディー部分をつけてみました。

ピアノしかないし作曲と呼べるのかは怪しいですが、記念すべき自作曲第一弾として、2020年の成果に数えてもいいんじゃないかなと思っています。ちなみに元の曲とは全く違う雰囲気になりました。コードって奥が深い。

タイトルは「夏風の思い出」。
「群青の夏、命尽きても」の世界をイメージしてメロディーを選びました。
せっかくですので聴いていただけると幸いです。


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