コミティア課題を振り返る

ひらめき☆マンガ教室第3期受講生の吉田屋敷です。
コミティア課題?何の話?それはここに全部描いてある↓
https://twitter.com/hiraman03b/status/1203993308751638528?s=20

10月末から始まり、2/9までの短くない期間のなかで、楽しかった・つらかったなど波はある。振り返って、2択で答えてと言われれば、楽しくなかったと答える。不甲斐なく、悔しく、結果には満足できない。
もっと売れると思っていた。200部売り切るつもりでやっていた。考えが甘い・取り組みが足りない・そんな出来じゃないということは、理想と現実のギャップをリーダー兼編集長として受け止めている自分自身がわかっている。

本の出来はいいと思っている。それで満足できないということは、自分の作った本が「多くの読者に読まれる」ことにこだわるようになったからかもしれない。
『デート 特集:両片想い』というテーマは、売り上げを出す・読者に手に取ってもらうことを目標にして決まった。以下はSlackでの吉田の発言の引用。

「何」に対するアンサーが「デート」なのか…。
「デート」がテーマであることの大義名分のようなものを考えてみました。長いです。
デートって色々あるよねってのは大前提として、あえて「非対称な関係からの営み」として捉えます。
「誘う人」と「誘われる人」ってことです。
誘う人は相手に好意があって、自分の好意に気づいてもらう・受け入れてもらうために工夫する。
誘われる人は相手の好意を推し量る。相手からの好意を受け入れられるかジャッジする。
緊張がただよう時間を過ごし、終わるころには何かしらの答えがでる。
「また二人ででかけよう」「もっと踏み込んだ関係になりましょう」「楽しかった。でもこれ以上は結構」
これ、漫画家と読者の関係と似ています。
「この漫画は誰が読むんですか?」と我々は最近耳にタコができるくらい問いかけられています。
読者がいないと漫画は成立しない。
誘う相手がいないとデートはできない。
気持ちを伝えるために、構成を考え、ネームを練り、絵柄を整える様は、
さながらデートプランを練り、身だしなみを整え、意中の相手に声をかけるようです。
読者が面白い漫画を求めるのは、デートに誘われるのを待っているってとこでしょうか。(読者には各々好みのタイプがある)
デートと漫画を紐づけるために「非対称な関係からの営み」としました。
仮想の課題文を設定してみるとわかりやすいかもしれません。
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課題8:「デートに誘ってください」
読者をデートに誘うつもりでデートをえがいてください。
プランもなしに連れまわしては、相手を疲れさせるだけです。またの機会はないでしょう。
見た目がすべてとは言いませんが、それなりに整えたほうがいいでしょう。相手が面食いならちゃんと綺麗になってください。
言っていることがわからないと気持ちは伝わりません。吹き出し、フォントは適切ですか?
あなたは誰をデートに誘おうとしていますか?
誰もいないところに手を差し出していてはいつまでもお出かけできません。
意中の人と出かけるための創意工夫を見せてください。
よろしくおねがいします。
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うーん、デートを考えることは漫画について考えることなのだ!という大義名分として書いてみましたが、
コミティアでどう売り出すかとはあまり関係なさそうな文章になりました。
これを表テーマにしてしまうと、結局各々自由に漫画を描くことになるので、あくま裏テーマって感じですかね。
とはいえ、読者を強く意識するためのフックとして、「デート」というのはありだと改めて強く感じました。
改めまして「デート」というテーマに対して、全員賛成であると判断します。
全員、デートの漫画を描きましょう。
〇〇さんの投稿に便乗して話を進めます。

いま考えることの優先順位↓
1 広報として効果があるか?(とにかく売ること、フックとなるもの)→売上バトルに勝つ
2 自分たちの考えを出せるか?(自分たちだからできること)→創作に自分たちが満足する
3 実際問題できるのかどうか?(主にスケジュールと役割分担)→同人誌を完成させる(実作業の優先順位はこれが一番ですね)

ここにきてこの前の打ち上げを思い出していたんですが、
「各々の考えをひとつにすることは難しいだろう。しかし『売る』という目的の元では歩み寄れるのではないか」
という話がありました。
「売れそう」というのは、コミティアまでの期間を正気で乗り切るためにとても大事なポイントだと思います。
「売れそう」なテーマを設定できていれば、広報等の方向性も考えやすく、原稿以外の活動もやりやすいです。
「デート」から一歩踏み込んだ、売るための、勝つための具体的なテーマは必要です。設定しましょう。
ここまでに上がったものの中では、「両片思い」が、最もチームBをまとめあげるパワーがあると感じています。

「両片思い」、描いてみませんか?

ぼくたちがひらめきマンガ教室で毎月あたえられる課題は、毎回テーマがあるとはいえ、結局どのように描きたいか、どのようになりたいかは各受講生の意思に委ねられています。
PDFの課題概要の以下の文↓
5.制作した作品を同人誌というかたちで出版し、自ら販売まで行うことで、インディペンデントな作家としての能力を培います。
とあります。
ここにきて馬鹿正直に課題文をなぞるのもどうかと思いますが、引用して考えるならば今回の課題は、本気で売りにいこうとすればするほど経験としてのリターンが大きいでしょう。(たとえ失敗したとしても)

やがてひらめきマンガ教室を出ていって、どのように創作を続けていくかは人それぞれでしょうが、受講生であるいま、チームでのコミティア参加で何を受けとれるだろうか考えたとき、このように取り組んでみるのもいいんじゃないでしょうか。

ここまでの文章だといやいや「両片思い」に身を投げてみようと言っているみたいに思われるかもしれませんがそういうことではありません。
チームBは「両片思い」で漫画を描けるメンバーが揃っていると思います。

結論
「売れそう」だし「いい本」になりそうだから、「両片思い」ありじゃないですか?
一メンバーとして、〇〇さん提案の「両片思い」に賛成します。

仮決定したテーマでアクセルを踏むための大義名分をごちゃごちゃと考えていることがわかる。メンバーから意見を集め、チームとして納得できる答えを模索する中で「読者に届くかどうか」を強く意識するようになった。自分はもともとそういう人間ではない。

編集という立場になってわかることも多かった。「頼むから完成させられるボリュームの原稿を持ってきてくれ」「テーマに沿ったキャッチーなエンタメを描いてきてくれる人は本当にありがたい」「〆切に遅れてなんの連絡もないのは本当にむかつく」「〆切をやぶるのは本当によくない」いずれもこれまでの授業で講師の先生方が仰っていることと重なるが、頭で理解するのと経験として食らわされるのとではわけがちがう。
残酷な判断をしていることに気づくこともあった。たとえば〆切を大幅に超過した原稿を待っているとする。作家の作業を待つ理由は、教室の同期としてともに切磋琢磨している情による優しさではない。編集長としての責任感でもない。その作家の描いているマンガが面白く、合同誌に欠かせないというそれだけの理由だった。つまらなかったら切っていた。
自分が作家として商業デビューを目指すとき、同人誌の編集長の立場で経験したことすべてが返ってくるだろう。自分の取り組みを見つめなおすいい機会になった。

カリキュラムの中で、同人誌制作課題は「割に合わない」ものになっていると思う。
受講生のモチベーションの差が激しい。主観だが、作家としての立場を越えて編集・販売の立場まで積極的に取り組もうとしたのは、30人以上の受講生のうちで3割もいないだろう。2割すら怪しい。積極的に見えたとしても、作家としての取り組みの枠を出ないものだったりする。
結果、積極的に取り組もうとした人の負担は大きくなる。前のめりに取り組んだとしても結果がついてくる補償はなく、作家気取りのお客様から注文をつけられる。あるいは何も意見は出ず、ただ任されるのみ。
毎月の課題のようにゲスト講師を呼んでゲンロンカフェで授業をするほうが、受講生の満足度は高いかもしれない。運営の負担も軽いだろう。編集長として運営とやり取りすることも多かったが、この課題における運営の負担は半端じゃない。期間の長さから当日動員されているスタッフの人数だけ見ても。受講生からの需要と単純なお金の計算だけで考えると、こんな課題はやらないほうがいいのかもしれない。

しかし、自分にとってはこの課題でしか得られないものは多かった。編集の立場、作家としての振る舞い、売るための取り組み。読者が手に取ってくれるところまで想像すること。あわよくば作品を楽しんでもらうこと。
自分は、プレイヤーとなって外に出ていくためにこの教室に来て、課題に取り組んでいる。そのように自分の課題を設定すればこそ、割に合わなく、つらい時間の長い制作期間を経てつきつけられた86部という売り上げも真剣に受け止められる。
外に出ることを目指すひらめき☆マンガ教室であるならば、割に合わなくとも、この課題が今後も続いていくと嬉しい。

どうやら第4期も開校予定とのこと。同人誌制作はカリキュラムに入るだろうか。割に合わない役回り、プレイヤーとして積極的に取り組もうとする受講生はいるんだろうか。もしいたら、俺はその人を応援したいと思う。

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合同誌『デート』には前書きがある。吉田が書いた初稿から、言葉遣いや雰囲気を誌面に合わせて修正されたものが掲載されている。
初稿は、誌面の持っている雰囲気からずれていたので修正が入ることになったのだが、読者と出会いたがっている吉田の思いが色濃く、それゆえに自分では気に入っている。ここに載せるので、是非『デート』に掲載されているものと見比べてほしい。『デート』を持っていない人は、買わなかったことを後悔したらいいと思う。

映画。彼女は何を想ってぼくの隣に座っているんだろう。
動物園。彼の話を聞くのはわたしでいいんだろうか。
占い?相性なんて確かめていったいどういうつもりなんだ…。
ふたりの距離を測る数式は、天才少女にもわからない。

答えは出てる?そんなに簡単な話なんだろうか。

求めあい、わかりあうことに終わりはないのだから、わたしたちは物語を紡ぎ続ける必要がある。
わたしたちは、デートに誘うために手を伸ばそう。

ここから先は、一歩踏み出す手前の物語。
やがてあなたと一緒に、外へ出かけるために。

おまけ

コミティア131で吉田的よかったマンガベスト3(ひらめきOBOG含む)
以下順不同。

 草原うみ「ティラミス日和」
(三色パン工房『今日のところはファミレスで』)
1P目から全力でかもし出されるクズ男のクズ感最高。シャイゼを小馬鹿にしやがって。許さん。
平たいシチュエーション、登場人物の多さも気にならずに読めるのは巧さのおかげでしょうか。主人公の涙ぐむ表情に読者の気持ちが同期する。クズは放っておいてティラミスパフェを食べよう。

 なるとも「大好きプリン」
(三色パン工房『今日のところはファミレスで』)
一番笑った。
コミティア131当日の講義で「調子の悪いときにちゃんと読めるかどうか気にするといい」という話があった。今、二日酔いで頭が痛い。でもこれはニコニコ読める。

 蝶々ひらり「やさしいリスカ」
(ひらめき☆マンガ教室 チームC『ギャル×〇〇』)
なるほど一番印象に残る。描き味とコンセプトが自傷行為をエンタメに昇華させる……さっさと売れて事業の赤字もどかんと返せばいいと思う。
蝶々さんはコミティア課題への取り組みも凄まじく、チームCの広報担当もさることながら、特に当日の売り子は圧巻だった。シフトがかぶって隣に座っていたのだが、自分で声をかけて来てもらった知り合いの数、そして蝶々ボイスが道行く人の足を止まらせ本を手に取らせる。人だかりができてめっちゃ売れてるサークル感が出る。開始1時間でダブルスコアをつけられて俺は真っ青だった。他チームとの売り上げの差は正直どうでもいいが、チームCとの差の19部ははっきり言って蝶々ひらりさんの取り組みによるものだ。そしてこれは誰でもできたはずだ。あのチームはプロがいるからとか去年はtwitterのフォロワー多い人がいたとか、そういうこと言う前にできることなんていくらでもある。自分のマンガを、読者に届けたいと思うなら。
マンガもよかった。プレイヤーとしても最高のパフォーマンスを魅せた。同人誌売り上げバトルにおいて、蝶々ひらりさんがMVPにふさわしいと思います。

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