「garden」について

ひらめき☆マンガ教室第3期受講生の吉田屋敷です。
新芸術校との合同授業に提出した作品についてのメモを書いていこうと思います。

マンガ教室の受講生に出された課題文は以下の通りです。
「アートをテーマにした/あなたがアート作品だと思う絵を 1 枚提出してください 」

今回私は、自分が人生の中で最も「アート」をやろうとしていた時期に描いた平面作品を提出しました。
ステイトメント然とした文章を書こうとしたのですが、箇条書きのような形でしか自分の考えていることを書きだすことができませんでした。
読んでもらうためというよりは、自分の中で整理をつけるために書いているフシがありますが、ご容赦ください。

garden
2011 木製パネルに銀箔、硫黄液、漆

2011年初夏、大学在学中に描いた絵です。
風景画です。千葉県松戸市の戸定邸の庭園をモチーフにしています。
私が生まれ育ち、当時暮らしていた千葉県松戸市を含む東葛飾地域と、私が通っていた大学のキャンパスのある茨城県取手市は、福島原発事故以降、首都圏における放射線量のホットスポットとして報道されていました。
首都圏における放射線量の報道やSNSでの情報の拡散により、故郷の景色が、見た目は変わっていないにもかかわらずどこか変わってしまったように感じられる。生まれ育った故郷に対して特に愛着もなかった自分が、このことに対して、悲しさとも言えないような感情を抱きつつ、同時に居心地の悪さも感じている。この感情を整理したい、そんな動機で画面を構成しました。

木製パネルに銀箔を貼って支持体としています。薄めた硫黄液で形を描くことにより、支持体自体を変質させる。支持体に絵具の粒子を定着させる一般的な絵画の描画手法と区別することで、画面から不可逆性を強く主張できるのではないかと考えました。
画面茶色部分は漆です。洗い落とせない、絵具と比べた場合の扱いの難しさ、人体への積極的な?影響(かぶれる)などの性質が、自分の表現したいことに合っていると考え使用しました。
コンセプトを考えると、もっと適当なマテリアルがあったかと思います。正直自分でも、どこか中途半端な画面になっていると自覚しています。
この中途半端さは、私が当時在籍していた東京芸術大学絵画科日本画専攻が持っている評価軸と、社会的なテーマをどうにか接合しようと試みた結果生まれています。


提出作品についての文章は以上です。ここからは私個人の話になります。


この作品以降、私の大学での創作活動がどうなったのかというと…
社会的でハードなテーマを掘り下げ続ける気概もなく、芸大日本画の評価軸を脱臼させるような、狭い世界での生ぬるい「遊び」に浸り、斜に構えた中途半端な作品を作り続けるという、絵にかいたようなダメな芸大生として学部を卒業するのでした。卒業制作など目も当てられません。
「アート」に向き合うことに挫折し、「もっと華やかで面白い表現の現場で生きていきたいよー」という感じでアニメ業界に飛び込んだものの、またもや挫折しました。そのあたりはフィクションおりまぜつつマンガに描きました。

ひらめき☆マンガ教室第3期
課題1「自己紹介を漫画にしてください」
https://school.genron.co.jp/works/manga/2019/students/yoshida444/10796/

二度の挫折を経てなお、表現することをあきらめきれず、ひらめき☆マンガ教室の門をたたいています。今回の提出課題を描いた当時に持っていたテーマは、形を変えて今も考え続けています。
課題2では、洗い落とせない穢れ(放射能のことを穢れと言いたいわけではない)のようなものや、罪をかかえて、それでもいかに生きていくかということをテーマに、中学生がかつあげするマンガを描きました。

課題2 「クライマックスで心の爆発をさせてください」
https://school.genron.co.jp/works/manga/2019/students/yoshida444/11435/

課題3で描いた大学は、東京芸術大学絵画科日本画専攻をモデルにしています。いびつな伝統と、現代に求められる表現の間で生じる不和を下敷きとして、大学の設定を組み立てています。マンガで描いたテーマとはあまり関係のない話なので、作品ではなんのこっちゃという感じになっていますが…

課題3「画面を作る ~その「最高の画面」を楽しませてください」
https://school.genron.co.jp/works/manga/2019/students/yoshida444/12440/


長々と書いてきて何が言いたいのかというと…「アート」に対しては、一度挫折して目を背けてきた後ろめたさが自分にはあります。
合同授業の課題提出も正直憂鬱でした。マンガと美術の話のフックとして、絵因果経の模写を提出して「なんかおもしろい話が聞ければと思って」みたいなノリでお茶を濁そうかと考えたりもしました。
しかし、ここは個人的なけじめとして、自分の不真面目な大学時代を総括する意味をこめて、最も「アート」をやろうとしていた時期に描いた平面作品を提出することにしました。

合同授業では、創作、表現しようとするときの両ジャンルのアプローチの違い、そしてどこか重なるところはあるのかを考えながら講義に参加したいと思います。



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