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きみは僕の正しい光 18


「あら、那由多くん。あそこで何してるのかしら」



 閉館間際の図書館。長居していた利用者などがまばらにゲートをくぐって帰途につく中、人のいないガラス張りのロビーで椅子に座りながら、その眼で光を追う青年がいた。
 受付事務員の声に、館長は奥から姿を現すと腰に手を添える。

「あぁ…たぶん、待ってるんだと思うよ」

「誰を?」
「知恵ちゃん」
「知恵ちゃん…って、ああ、あの数ヶ月前に那由多くんを迎えに来てた女の子? あの子、もうしばらくここに来てないじゃないですか」

「うん、でも待ってるんだよね」
「…」

「来なくても、毎日ああして、知恵ちゃんが迎えに来るの待ってるんだよ」

「知恵」


 講義室で呼び声に振り向けば、階段から理加が降りてきた。
 お、と片手をあげれば隣の席をあけるため、真ん中の席の方にちょっとつめる。


「理加ー。久しぶりじゃん」
「や、ほんと。めっきりすぎるよ知恵、最近学食ですら会わないし」
「ごめんごめん、昼は時間が合えば先輩と取るようにしてるからさー、誰かと話してる時間ももったいないっていうか」


 鞄からスマホを取り出し、先輩からメッセージが来ていないかを確認する。「このあと授業」とだけ送信して鞄にスマホを収めたら、少し不審そうな顔をしている理加と目があった。その目は私の上から下までを確認して、足元で止まる。


「…なんか、知恵、雰囲気変わったね」

「え? そお? 私最近ずっとこんなだよ」
「メイクめっちゃばっちりだし…ピアスとか…スカートとかも、そんなん今まで履いてなかったよね」

「これ? 可愛いでしょー、一目惚れして買っちゃった」


 言われて、膝上のタイトスカートを履いた脚を組み替える。ヒール高めのロングブーツからはみ出た素肌が寒かったのは最初だけ、最近は全然慣れてきた。髪も毎日巻いてるし、化粧だってばっちりしてる。イヤリングで済ませていた時は耳たぶが痛くなることがあったけど、ピアスを開けてからはそんな悩みもないし、世界が変わったみたいだ。なんで今まで開けなかったんだろうって思うくらい。


「てか、理加こそなんか化粧薄くなってない? 私前の方が好きだったかも」

「…就活とかあるし」
「ふーん」
「ねえ、知恵、就活は? 卒論とかも、最近どうなってるの」
「んー、ぼちぼち」
「ぼちぼちって…ねえ知恵、」


 そこでスマホがメッセージを受けた。画面を見て、立ち上がる。


「ごめん先輩が呼んでるから行ってくる! じゃあね理加」

「え、ちょっと知恵!」


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