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日本人が勘違いしている中国人の働く価値観②「中国人は協働しない」

前回に引き続き、弊社に寄せられるご相談から、「中国人の思考・行動特性」や「中国の商習慣」が原因ではなく、そもそも日本企業が極めて特殊であり、その環境で育った私たちのバイアスが原因で問題の本質を捉えられていないのでは?と疑問を持たざる得ないモノをご紹介します。今回は「中国人は協働しない」について解説します。

組織文化に関する驚きアンケートデータ

前回に引き続き「パーソル総合研究所の2019APAC就業実態・成長意識調査」から気になるデータを見ていきます。「あなたの職場にどの程度あてはまりますか?」という質問への回答データです。

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文字が小さくて読み難いと思うので(申し訳ないです!)日本と中国を抜粋して紹介します。

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<日本>
1位:上司の決定にはとりあえず従う雰囲気がある
2位:和を重視する人が評価される
3位:波風を立てないことが重要視される
4位:プロセスより結果が重視される
5位:十分な検討よりも、タイミングやスピード重視
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<中国>
1位:和を重視する人が評価される
2位:チームとして1つにまとまっている
3位:上司の決定にはとりあえず従う雰囲気がある
4位:社内の競争に勝つことが評価される
5位:一致団結して目標に向かう雰囲気がある
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注目して頂きたいのは、中国の2位「チームとして1つにまとまっている」、5位「一致団結して目標に向かう雰囲気がある」という2つの回答項目で、一覧データ上ではそれぞれ青とオレンジに塗りつぶされています。ご覧いただくと、調査対象約10か国の中で、日本以外はほぼ上位にランキングされています。

私たちは、よく「中国人はチームで仕事ができない」と言いますが、このアンケート結果から見ると、日本以外の国では「チームで一致団結する組織文化」を作っていて、日本だけが出来ていないと解釈することもできます。

協働の定義がそもそも違う?

改めて日本のランキングを見ると「上が決めたことに従順に、波風を立てず、考えるよりも動け」という組織文化とも言い換えられそうです。少し、言い過ぎなような気もしますが、日本を象徴するような大手製造業やインフラ業、総合商社など、私のよく知っている範囲でもピッタリ当てはまる企業がいくつか思い浮かびます。

このレポートの解説でも、日本のマネジメントは「問題を起こさないこと」に対する意識が高く、他のアジア各国では「組織を使って事業を動かす」に意識が高いと指摘されています。

日本企業の言う「協働」には「上が決めたことに従順に波風を立てないような動き方」という前提(=バイアス)が働いている可能性があります。そのため、この前提から逸れるような発言・行動を「協調性がない=協働できない」と無意識に判断しているかもしれません。

良い悪いではなく定義を揃える

ここまで書くと、日本だけが異なる前提(=バイアス)を持っていて、それはグローバル基準では劣っていると感じてしまいそうです。しかし、当然ですが「違い」は強みになりえます。

「上が決めたことに従順に、波風を立てず、考えるよりも動け」。優秀な経営者または経営企画が勝てる事業戦略を描き、社内で無駄なコンフリクトを起こさず、圧倒的な実行力で事業戦略を遂行する。こう捉えると、物凄く強い組織風土に見えます。しかし、これでは変化に対する柔軟性が低そうですね。

社員が協働して、パフォーマンスを高め、集団からチームになっていくために、まずは「目指す協働した組織像」の解像度を上げていくことが先です。組織の解像度があがったら、次は伝えて理解してもらうこと。

「中国人は協働できない」と投げ出してしまう前に、目指す組織像を共有・理解し合うことから見直してみましょう。日本人・中国人ともにハイコンテクスト文化の中で生きています、最も誤解を生みやすい組み合わせです。何気なく使っている「言葉」の定義を揃え、誤解を無くすことから取り組んでみてはいかがでしょうか。

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