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中国における日本企業がとるべき採用戦略とは?

私が住む上海で上位大学といえば「交通大学」と「復旦大学」が有名です。この2つの大学に通う学生と話してみると、問答無用に優秀。あくまでn数が少ない主観ではありますが「論理的に整理する能力」と「何をしたいというアイデンティティが明確」という2つは特に秀でている印象です。中国における日本企業の人気は低減し続け、優秀人材の獲得が難しい状況です。人気が低くなった日本企業が何を「強み」に採用戦略を練るべきか、データから検証していきます。

まずは、中国の大学生に人気の企業とは?

75后までの大学生には「外資企業」は人気がありました。しかし、85后以降あたりから徐々に「外資企業」の人気は低減し、95后以降に至っては明確に優先順位が変わっています。中国国有企業の人気は依然よりも高くなり、加えてIT企業を筆頭にした中国民営企業も高い人気を維持している状態です。
今の人気順は
①中国国有企業
②中国民間企業
③外資企業
といった序列です。

以下、中国大学生の人気企業一覧です。

2021中国大学生喜爱雇主1

2021中国大学生喜爱雇主2

「Apple」などの欧米企業は点在していますが、日本企業では「ユニクロ」「DENSO」に加え、合弁企業である「広汽トヨタ」のみです。報酬、企業の発展性では中国企業におされている日本企業に、当然優秀人材は集まりません。では、日本企業が中国でとるべき採用戦略とは何か。

中国の大学生が企業に求めているモノは?

「日本企業」の人気が低いことはご理解いただけたと思います。では、中国の大学生は就職に何を求めているかを以下のデータから見ていきましょう。

应届生与企业最关注的职业吸引因素

青色が大学生の回答、オレンジ色が企業側の回答です。大学生が求めているモノと、企業が「売り」にしているモノが乖離していることが、とても分かり易く示されています。

大学生が重視している1番はやはり「報酬」、次に企業・職業の「成長性」
そして、「研修(育成)体系」「福利厚生」と続きます。「企業文化」に至ってはかなり下位です。

引き続き扱いやすい人材を採用する日系企業

次に日本企業が新卒採用時に何を重視しているのかを見ていきます。以下のデータは日本企業が新卒採用時に重要視しているスキル・能力を表しています。

2021日资企业应届生招聘关注的候选人表现

1位は「コミュニケーション力」、続いて「論理的思考」「責任感」と続きます。少し偏った見方かもしれませんが、日本企業の求めるコミュニケーション力とは「扱いやすい」に加えて「日本語」も含まれているかと推測します。未だに駐在員は中国語が全く話せず、採用基準に「日本語1級」と書かれている求人をよく見かけます。

日本企業の取るべき採用戦略は?

以下は、企業が何を採用の「売り」にしているかを種別にまとめたデータです。日本企業は「仕事の安定性」「研修体系」「福利厚生」の順にあげていますが、あまり特徴を感じません。各種別で見ると以下のような「売り」を提示しています。
中国国有企業⇒国有の際立った安定性
中国民間企業⇒発展性×個人の競争力UP
欧米外資企業⇒企業文化×ダイバーシティ

不同性质企业中对应届生的主要吸引优势有所差异

前述の、中国大学生が企業に期待する項目の第3位に「研修(育成)体系」がありました。「研修などが充実しているコト」は、新卒に限らず中国の就職・転職希望者が企業を測る1つの大事な指標として定着している価値観です。つまり、「安定性」でも「報酬」「発展性」でも勝てないのであれば、「徹底的に人を育てる会社」というポジションをとるのはいかがでしょうか?当たり前ですが、採用戦略は競争戦略です。競合のとるポジションを認識し、自社がとるべきポジションを選択し、必要な投資をしていく。今の日本企業は、自分たちの内側ばかりを見たポジションを選択している気がします。

このように書くと「育てた社員が辞めたら一緒」と言われてしまいそうですが、採用できなければ離職の心配は必要ありません。日本国内でも「働き方」に関して、大きく個人の価値観が変わり、企業と個人の関わり方(考え方)を変えることが求められています。入社後どのようにエンゲージメントを高め離職を防いでいくかも併せて取り組むべき課題です。

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