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日本人が勘違いしている中国人の働く価値観①「中国人にとって転職は当たり前」

弊社に寄せられるご相談内容を改めて見返してみると、「中国人の思考・行動特性」や「中国の商習慣」が原因ではなく、そもそも日本企業が極めて特殊であり、その環境で育った私たちのバイアスが原因で問題の本質を捉えられていないことがよくあります。今回は中国現法で働いている駐在員のみなさんがよく勘違いしている「中国人の働く価値観」について紹介します。何回かに分けてご紹介しますが、第1回は「中国人の転職」について解説します。

「中国人にとって転職は当たり前だ」

この「常識」ですが、半分当たっていますが、大事な点を見落としがちです。まずは以下のデータをご覧ください、『あなたの今後の勤続について教えてください』という質問項目への回答データです。

濃い青部分=とてもそう思う
薄い青部分=ややそう思う

転職したい

転職希望の割合をみると、中国人は40.6%、日本人は25.1%。やはり中国人は転職希望者が多いというのは事実ですね。しかし、更に次のデータをご覧ください。

働き続けたい

『現在の勤務先で継続して働きたいか』という質問に対して、日本人が52.4%、中国人は82.8%と、圧倒的に「働き続けたい」と思う人の割合は中国人の方が多いです。つまり、中国人は転職も視野にいれているが、現在の勤務先で働き続けることを希望する意識も高いと言うことです。

同じ日本人として少し恥ずかしいですが、日本人は現在の会社で働きたくはないが、転職もしたくない、という人が多く存在します。様々な理由が考えられます、例えば「他の会社で通用する自信がない」「転職自体が社会としてまだまだ一般化していない」など。私は一番の理由を「ただの惰性」だと解釈しています。つまり、一生勤め上げるモチベーションはないが、転職するほど嫌なこともない、退職する理由がないため働き続けている。

それに対し中国人は、よい会社があれば転職には前向きだが、それ以上に「今の会社で働き続けたい」という意向が強いと言うことです。

社員が離職するとき「中国人はすぐに転職するから」というバイアスは避け、辞めるには辞めるだけの理由があるということは冷静に振り返る必要があります。

日本人・中国人それぞれの転職理由

ここでもう一歩、踏み込んで転職理由について見ていきましょう。

転職理由比較

(画像が粗いので、以下文書で書きますね)
日中ともに1位は給料に対する不満のため、2位以降を比較します。
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<中国人の転職理由>
2位:昇進が望めない
3位:幅広い経験・知識を積みたい
4位:専門知識・技術力を習得したい
5位:評価されても給料が上がらない
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<日本人の転職理由>
2位:人間関係が上手くいかない
3位:会社の将来性が不安
4位:肉体的につらい
5位:会社の評価方法に不満がある
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比較すると中国人は「発展空間」、日本人は「会社環境」があげられています。これをみてピンと来た人が多いのではないでしょうか?この退職理由が如実に影響する人事イベントは「人事評価」です。人事評価とは「頑張った分、評価して、報酬を対価として与える」こと。日本人は人間関係など会社環境に不満がある場合に退職しますが、中国人は報酬に不満があるときに退職します。仕事の報酬は仕事と言う言葉がありますが、仕事の報酬は必ずしも金銭的報酬だけではありません、「発展空間」の提供も仕事の報酬となります。つまり、日本人は人事評価の結果が「発展空間=成長機会」に反映されなくても退職しないが、中国人は退職するということです。12月決算の会社はこれから人事評価が始まりますが、十分に「報酬」をご検討ください。

私たち日本人は特殊な感覚を有しており、物凄く視野の悪い眼鏡(=バイアス)を通して、日々の職場を見ています。中国人が特殊なのではなく、私たち日本人が特殊であり、グローバル環境に適応していかなくてはなりません。一緒に「適応」していきましょう!

(出展)
今回のデータはパーソル総合研究所の2019APAC就業実態・成長意識調査から抜粋しています。

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