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シンバルのデザインをパクられたら、King Crimsonのドラマーから連絡が来た話。
note初記事が約6000文字、と中々な長文からスタート…
こちらでは初めまして。
延命寺 a.k.a emj (エンメイジ・アーカーアー・イーエムジェイ)と申します。
大阪でドラマーをやりながらシンバルを作っています。
(他にもバンド複数、アクセサリー、動画etc…)
今回はX(旧Twitter)でそこそこ反響のあった記事のまとめで、タイトルそのまま世界的プログレッシブロックバンド「King Crimson」にまつわるお話。
Xの記事を加筆修正してお送りします。
それではいきましょう。
※一部有料にしてありますが、X(旧Twitter)にて全文無料公開しております。こちらは読みやすいように整えてはいるので、良かったら投げ銭感覚でご購入いただければ助かります。
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emjmod 20" Multitone
emjmodとしてシンバルを作り始めてからのこの3年、色々と面白い事が起こっています。
昔から聴いていたアーティストの元で僕のシンバルが使われたり、シグネイチャーモデルを担当させてもらったり、いきなりアメリカでの取り扱いが決まったり…
その中でも一番驚嘆したのが今回のお話。世界的プログレバンド"King Crimson"のドラマー達から連絡をもらったという件です。
これは色々な偶然が重なって起こった事なんですけど、まず前提として僕が取得中の特許が関係しています。
emjmodから発売している"Multitone"や小出シンバルとの海外限定コラボレーションモデル"TANG"は一枚のシンバルから複数の音色が鳴るという特許を出願中でして(この特許に関しても色々な偶然が重なっての米国出願となっている訳ですが…それはまたおいおい)
この特許を申請しているシンバルをInstagramに投稿した結果、ものすごい反響があったんです。(この1投稿だけでフォロワーめちゃくちゃ増えたし一週間ぐらい通知止まらず)
ただ多数の目に触れるとなると勿論模倣品も出てくる訳で…とあるトルコ系のシンバルメーカーがMultitoneのコピー品を独自開発という名目で投稿しているのを発見。
流石にこれはちょっと放置すると良くないな、という事でアメリカの代理店チームと相談して色々とアクションを起こしました。
その際数人のシンバルメーカーや関係者にも協力してもらったんですが、その中に"とある人物"が含まれていました、彼の名は"Matt Nolan"。イギリスのシンバル・パーカッション製作者で"Terry Bozzio"や"Björk"などのアーティストにも楽器を提供している個人製作者です。
彼は僕の作っているシンバルを高く評価してくれていて、このMultitoneをコピーした投稿に対しても「それはemjのアイデアだ」とコメントしてくれて。
それに対するお礼を伝えようと連絡した事から少し彼との交流が生まれました。またタイミングが合えばお互いの楽器を見せ合いたいね、というような感じのやり取りをし…その数ヶ月後、事件は起こります。
Mattから突然メッセージが届き
「King CrimsonのPat Mastellotと会ったことある?彼から君のMultitoneの写真が送られてきたんだけど、今クリムゾンは大阪公演でそっちに居るから紹介するし、電話番号教えてよ」…と。
えー、っと。…キングクリムゾン???え???
2021年当時、クリムゾンは最後の日本ツアーということで確かに大阪に居たのです。その辺の居酒屋にメンバーが入ってきて乾杯した的なツイートも前日見てました、へー、そんなこともあるもんかぁなんてぼんやり眺めてたのが、そんな、まさか、僕をダイレクトに紹介、電話番号教えるって???
Mattは英語圏の人なので、送られてくる文章は勿論英語です。別に英語が堪能な訳でもないemjですから(いやいや、そんな訳…キングクリムゾンってスタンド?ジョジョ?いやいやこれは現実?もっかい読み直しましょう翻訳アプリでも確認しましょうブツブツ…)そしてどうやら間違いないらしいという結論に至った瞬間
「どぅええええええあええあえええ?!?!?!」
と叫んでいました。
今思い返してもそうなるよなと思いました。
だってあのKing Crimson。
音楽やってて知らない人なんてまあ居ないであろう世界的有名バンドです。
昔一緒にバンドやってたベーシスト(10年前に死去)が大好きで聴かされたりしてたのもあり、印象深いバンドでもありました。
その所属ドラマーがクリムゾン最後の日本ツアー中に
1.たまたま入った楽器屋さん(三木楽器ドラムセンター)で僕が作ったシンバルを見つけて気に入り
2.その写真を知人の楽器製作者に送ったら
3.その知人と僕が直近で連絡を取り合っていて
4.君のシンバル送られてきたから紹介するよとなる
そんな天文学的な確率のイベント起こることある?
どーすんの?
番号送ったけど電話かかってくんの?
何喋んの?
だが共に生きることはできる!
黙れ小僧!
お前にあの娘の不幸が…と脳内で青年と山犬の婿姑大戦争が勃発する程度にはパニックを起こしておりました。
だがここで更に激震が走ります。
Facebookのアプリに表示される友達申請の通知。
"Jeremy Staceyさんから友達リクエストが届いています"
King Crimsonは現在ドラマー3名体制、そのうちのもう一人のドラマーであるJeremy StaceyからFacebookで僕に友達申請が飛んできたのです。
King Crimsonのメンバーから友達申請が届く。←New
もう訳がわかりません。
なんで?
なんで友達申請してくれるん?
お寺が好きなんですか?
脳内カオス状態の延命寺さん(実家は宗教法人ではありません)、だがしかし何とか落ち着きを取り戻せ…ないままメッセージを送ります。
「友達申請ありがとうあばばめちゃくちゃびっくりしている大阪公演には行けないが東京なら何とか行けるかもしれないので会いに行っても良いですかんおおん」
…というのも連絡を貰った当日が大阪公演で、その日はどうしても都合が合わなかったのです。会えるとするならその後に控えていた東京公演、スケジュールは全く空いてなかったけれどこれは無理矢理にでもこじ空けて東京まで会いに行くしか…と頭の中で色々なことをシュミレーションしながら返信を待つ、好きな子にメールで告白した後みたいな久々なキモチ、貴様に伝えたい、このキモチを。
でもJeremyから返ってきた返事はNo。
…それもそのはず、クリムゾンの来日は2021年12月。
まさにCovid-19が猛威を振るっていたタイミングで、関係者以外がバックステージに入ることは出来なかったのです。
こんなチャンスもう二度とないのでは…と焦るemj、なんとか会えないものかとジタバタしている所に"とある人物"から連絡が入ります。
「クリムゾンのライブ行くのー?!」
その主は関東在住のトライアングル製作家、北山トライアングルの"北山靖議"氏…北山さんと僕は結構な仲良しで(キャラは全然違うんだけどなんか波長が合う)一緒にイベントをやったり、お互いの作った楽器を預け合うような仲なのですが…その中にMultitoneのプロトタイプも含まれていました。
「クリムゾンのライブ観に行くし、会えるかわかんないけどせっかくMultitone持ってるから一応持っていくよぅ、渡せそうなら渡しておく~!」と、北山神。
マジ神。
(まぁほんとに神っぽいというか秘境に住む可愛い仙人みたいな人です北山さん)
僥倖っ・・・・!なんという僥倖っ・・・・!
…という訳で早速Jeremyに連絡(必死)。でもどうやらステージが終わったらそのまま全部片付けて出国の準備やらPCR検査を受けないといけないらしく、これはどのみち無理かもな~とソワソワしながら連絡を待つも、やはり終演後出てくる気配はないとのことで(お友達のSugi. comさんと1時間ぐらい粘ってくれたらしい)この時は会うこともシンバルを渡すことも叶いませんでした。
Jeremyからは「会えなくて残念だけど、またきっと機会があると思う。連絡を取り合おう!」とのメッセージ。
そんな訳で2021年のKing Crimson来日時にはメンバー誰一人とも会えなかったんです。おのれコロナ…。
これはもう来年あたり自分から会いに行くしかないかなぁ~なんてぼんやり考えながら2021年を終え、翌年の2022年はemjmodとしてNAMM Show(世界最大の楽器見本市)へのシンバル出展とそれに合わせての渡米、TOWER RECORDでのインストアイベントやシンバルの展示etc…ビッグニュースが色々と決まっていっておりました。
そんなバタバタと過ごす日々の中…再び、メッセージは突然に。(効果音:ギターのあれ)
2022年5月、ホームページに一通のメール。
差出人はあのPat Mastellotでした。
「去年キミに連絡したKing Crimsonのドラマーやで~7月にまた大阪にいくで~会えたら会おや~」
まさか再びあちらから連絡が来るなんて?!と狼狽する私。ソッコーでメールを返しますが、この時点では何で来日するのかとか詳細は一切不明。ソワソワと返事を待つも一向にメールは届かず
一ヶ月が経ち…
二ヶ月が経ち…
…これこのまま返事ないやつやん~何さ期待させてくれちゃってェ~と思ってたら返事が返ってくる。
「今成田向かってる~ワイらは日本で三公演あって、東京、大阪、あと1ヶ所どこや?」とのメールにビルボードのリンクが貼られておりました。
どうやらStick Menの東名阪ツアー。
大阪公演の日、7/14
連絡もろたの、7/5
そんな急に言われたかて…
スケジュール空いてる訳なぁぁ……………
…ぁぉぁぁあぁ空いてるぅぅう!!!!!
「是非ともライブを観させて欲しいし、お話したいです!!」とソッコー返信。
「大丈夫やで~楽しみやわ~旅程わかったらまた連絡するわ~」とのお返事。
これほんっっっとーに会えるのだろうか???という疑問を抱いたまま、再び連絡を待つも…気づけば公演当日の昼、未だ連絡ナシ。
待ってても仕方ないので「今日行って大丈夫なんですかー?」とメールを入れると「いけるいける!招待するで~!」との事で…やっと会える事が確定。
(そろそろ怒られそうなんで関西弁変換終了)
半信半疑でソワソワしてたのが一気に緊張に変わります。
二人分のゲスト席を用意してくれたので、普段から色々お世話になってる(僕がお世話もしている)カメラマンのミヤタケヨシノブ氏を誘いビルボード大阪へ。
受付で名前を伝えるとゲスト席へ案内され、まもなくStick Menの公演が始まります…でもソワソワし過ぎて音が耳に全然入ってこない。
ハァ…困ったなァ…まさかキングクリムゾンのドラマーと話すことになっちゃうなんてェ…ウェルカムな感じで待っててくれてるみたいだからちゃんと話したいけど…もう考えるのに疲れちゃって全然動けなくてェ…(Switchでゼルダやりてーと思いながら書いてる)
そうこうしてる内に
ライブ終わります
スタッフさん来ます
ゲストの方こちらへどうぞ
演者控え室へ直行。
ビルボード大阪の控え室は何回かお邪魔させていただく事があったので(toeの柏倉さんのライブにお邪魔させて頂くことが多くていつも感謝of感謝)ある程度慣れてはいるものの、この先にさっきライブで観てたPatが待ってる…と思うと、まあ震えます。プルプル。そんでまあこーゆー時って、演者はバックヤードで片付けとかしてるのでヒョコって現れるんですよ目の前に突然うわぁあああ
「初めまして!!僕がemjです!!」
「はは!もちろん知ってるよ!」
Pat Mastellotさんとこうして対面。
早速emjmodのMultitoneを取り出し、見てもらいます。
「すごい!どうやって思いついたのコレ?JeremyもGavin(Gavin Harrison)もめちゃくちゃ面白がってたよ」…と有り難すぎるお言葉。
なんかねーフワッと柔らかな人でした。
楽器の事や自分のスタジオのことなど色々フランクに話してくれて
「Hammeraxってシンバルメーカー(僕も大好きで何枚か持ってる)のやつが住んでるよ~あいつめちゃくちゃクレイジーで聴覚過敏のメンバーの後ろでいきなりシンバルわざと鳴らしたりするんだよ(笑)」
「クリムゾンのメンバーの中だと変な楽器使って面白いことするぐらいしかないんだよね~残り二人めっちゃドラムすごいからさ。笑」
みたいな感じの話をしてくれました。
あとはなんかめちゃくちゃいっぱい物をくれて(笑)このスティック面白いんだよビヨョーンって、これはシンバル用の弓で~あ、あとCDもこれあげるよ(ドサっと3枚)!シグネイチャースティックも良かったら使って!…みたいな感じで山盛りお土産を貰って…でも喋るのに必死でサインをもらい忘れ…あたふたする中、でもここでこれは言っとかないと…と思い立ち、Patに提案します。
「良かったらこのMultitone、アメリカに持って帰って使ってくれません?」
「もちろん!僕のスタジオであっちのミュージシャンにも広めておくよ!いつも日本に来る時はシンバル持ってこないんだけど、今回はたまたま持ってきてるからケースに一枚ぐらいなら入るはず。また今度アメリカに来ることがあればスタジオに遊びにおいで!」
…という訳でその場でシンバルを渡し、今日のお礼をひとしきり伝えた後、帰路につきました。
テクテク歩きながら…
「いや~ぁあ…………
ほんまに会えたァ………
シンバル………渡せ…た……あ…
やったぁー!!!!!!!」
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/117803711/picture_pc_49d1c579a3f00e3d8cf004bd8fa9c44b.png?width=1200)
Photo by ミヤタケヨシノブ(笑)
初めてコンタクトを取れてから約7ヶ月後の事でした。
そんなこんなでシンバルを作り始めてから2年目にして、King Crimsonのドラマーの元へシンバルが到達。
その数ヶ月後、PatのインスタにはMultitoneがレコーディングで使われている様子も投稿されていました。
これには本当に感動…。
2022年はこの件の他にもInstagramがバズって218万回動画が再生される、先述のNAMM Show出展&渡米、TOWER RECORDでの出展、島村楽器での取り扱い&日本各地でのイベント出演etc…大躍進と言える一年。
2023年もNAMMへの出展はしたものの、僕はアメリカに行かなかったので…次に渡米する際はPatのスタジオを訪ねられたら良いなと。
2020年にひょんな事からシンバルメーカーをやる事になって、本当に信じられない事が起こり続けています。
そもそもシンバルメーカーをやっていること自体が信じられないんですけど(笑)それらは僕自身のシンバルへの執着と、人との縁が奇跡的に噛み合った結果だと思っています。自分の実力があったからとかそういう事だとは本当に思ってなくて。
20代の終わりにバンドも全部ダメになって、それじゃあ一人で何とかするかと試行錯誤を重ね、色々なことを実行し、様々な場所へ赴き人と出会い、一人「こんなことしてて意味あんのかなぁ」なんて思う日々も沢山あったけれど…その心の穴を埋めてくれる師匠や仲間と出会えた事でなんとか今ここにいる、そう考えると感謝しかないです本当に。
思ってた以上に長い文章となりましたが…ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
普段から関わってくれたり応援してくださってる皆様にも改めて感謝を。
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色々宣伝も挟みましたが、僕なりに面白いと思えるプロジェクトを実行していってます。
延命寺 a.k.a emjの応援、今後とも宜しくお願いします。
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