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日本円は売られ過ぎている!FRBの積極的な金融引き締めは正しいのか?そして円キャリートレード崩壊が迫る!?

■米ドル/円は1998年8月以来の円安水準に到達も、連動性の強い米長期金利が上がらない理由とは?

 ドル円は140円台に到達して、1998年8月以来、実に24年ぶりの円安水準を更新しました。円安が進んだ背景はFRBが利上げを積極的に続けるということですが、これが本当に正しいのでしょうか?

 確かにパウエル議長のジャクソンホール演説以降に米国の金利は上昇しだしました。しかし、ドル円と強い連動性を持っている米10年金利がそこまで上がっていません。ドル円が高値を更新したのにも関わらず、10年債金利は6月の高値水準を更新していないのです(下のチャートをご参照)。

確かにパウエル議長のジャクソンホール演説以降に米国の金利は上昇したが、ドル円と強い連動性を持っている米10年金利がそこまで上がっていない

 長期金利が上がらないのは債券市場が米国の景気後退を織り込み始めているからです。2年金利と10年金利の差がマイナスになり、いわゆる逆イールド(※)が発生しているのもそのためです。米国の景気後退はデフレ要因であり、日本円が買われる要因になります。

(※逆イールドとは、短期金利が長期金利の水準を上回る状態のことで、景気後退のシグナルとされている)

■円安をファンダメンタルで正当化できないもうひとつの理由は、エネルギー価格の下落にあり

 ここまでの円安をファンダメンタルで正当化できないもうひとつの理由はコモディティ価格の下落です。特にエネルギー価格の高騰で日本の経常収支は今年の3月から悪化しはじめ、足元でマイナスに転じています。

 為替の基本ですが、経常収支が悪化する国の通貨は売られやすいです。しかし、原油価格は3ヶ月連続で下がっています。原油価格の月足チャートを見ると一目瞭然ですが、原油価格は天井を打って下げ相場に入っています。

原油価格は天井を打って3ヶ月連続で下落。円安をファンダメンタルで正当化できないもうひとつの理由はコモディティ価格の下落がある

 原油価格の下落は日本の経常収支を改善させます。日本政府の原発再稼働方針も経常収支を改善させることになります。

 つまり、ファンダメンタルで日本円が売られている要因のひとつがなくなるということです。相場はこれを織り込み始めてもいいはずですが、そうはなっていません。

■エブリシングバブル崩壊で一気に円高が進む可能性。投資家は慎重にポジションを取るべき局面

 実は上記であげている二つの理由よりも大きな理由で円安の終わりが近いと考えています。年初からさまざまなメディアに出演して為替について話しましたが、そこで円安が進んだ最大の理由は「日本円のキャリートレード」(※)であると指摘しました。

(※キャリートレードとは、低金利の通貨で資金を調達し、それを高金利の通貨に換えて運用し、運用益と金利差収入を得る取引のこと)

 世界の主要中央銀行が軒並み金融引き締めに転じている中、日銀だけがしつこく金融緩和を続けているのは世界の市場を大いに救っています。日銀が最後の砦としてキャリー相場を守っていますが、その相場はまもなく終わると思います。

 1998年以来の円安といっていますが、1998年には円安から一気に円高に転じた出来事がありました。それは「ロシア債のデフォルト」です。その後も大きな金融危機やバブル崩壊が起きるたびに為替が大きく円高に転じています(下のチャートを参照ください)。

1998年には円安から一気に円高に転じた出来事「ロシア債のデフォルト」があった。その後も、金融危機やバブル崩壊が起きるたびに大きく円高に動いていることがわかる

 日銀が何をしようが日本円が世界でもっとも安全な通貨であることに変わりありません。お金というのはとても臆病です。街が荒れると家に帰りたくなります。キャリートレードで世界中にジャパンマネーが溢れてい るということは、相場が荒れるとこのマネーがホームランドに帰ることを意味します。

 米国はインフレ抑制で日本は輸出競争力の強化という意味で円安を容認しているのが明らかですが、エブリシングバブルの崩壊で一気に円高が進む可能性もあり、この局面で投資家は慎重にポジションを取るべきです。

エブリシングバブルの崩壊で一気に円高が進む可能性もあり、投資家は慎重にポジションを取るべき局面にある© AdobeStock


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