頭芸（ずげい）

手芸が好きだ。

モノとモノを組み合わせて
新しい何を生み出すのって気持ちよくてクセになる。

いつからだろうか。
手を使わず頭の中でできるようになったのは。

手を使わないのに
手芸と呼ぶのはおかしいので

こちらは頭芸（ずげい、と読む。韻踏みたいから）
とでも呼ばせてもらおう。

直近で
がっつり私の頭芸の餌食となった子を紹介する

こちら
柿ピーに紛れていた
穴が開いたあられたち。

これを使ってアクセサリーを作った。

製造過程ですでに何かあったタイプなのに
このあと頭の中でもこねくり回されるなんて
気の毒だって？

いや、全然そんなことはない。

キラキラした目で
「頼むから早く」と懇願してくるところを

「まあそう焦らず落ち着いて」と
言い聞かせたくらいだもの

相思相愛、ノープロブレムだ。

まずは左端と一番手前の
大きい穴のお二方。

目を細め
現実世界の情報量を少しだけ減らして
集中モードで頭芸開始。

連結パーツの丸カンを
ヤットコという先が尖ったペンチで開き

少しぺたぺたするチャームを
右手の親指と人差し指でつまんで
穴に丸カンのつなぎ目を近づける。

割れやすいチャームに細心の注意を払いながら
丸カンを通す。

うぉーーー！
すんなり通るじゃないか！
なんてアクセサリー作りにおあつらえ向けの柿ピーなんだ！

興奮冷めやらぬ中
つなぎ合わせるのはピアスのパーツ。

そう、あえてのピアス。

私の耳にはピアスの穴がない。

手芸で実物をこしらえる時は
イヤリング一択なので

頭の中でくらい
ピアスで思いっきりカッコつけたい。

そうこうしてる間に完成した
柿ピーのピアス。

その名も柿ピーアス。

完成したそれは
ネーミングに負けないくらいイケてないんだけど

耳にぶら下げて街に繰り出せば
新しい自分と出会えること請け合い。

今年は新しいことにどんどん挑戦するって
初日の出見ながら誓ったもん。

イケてないって理由でためらうなんて
それこそイケてない！

というわけで

ピアスホール（呼び方合ってるのか？）に
出来立てほやほや柿ピーアスをプツンと刺す。

わ、なにこれ軽っ！
さすがあられ！

このままデートに行ったらどうなるだろ……。

考え出すともう止まらない。

ドキドキ。

ワクワク。

そうね

えっと

なんだろ

ちょっと

やっぱり……やめておく！

あの人ね
シャンプーの甘い香りが好きって言ってたんだ。

顔の両サイドから
醤油の香ばしい匂いがする私を
求めていないだろうし

最悪の場合
幻滅されフラれるかもしれない。

ほら、彼って
大人ぶってるけど厨二っぽいところあるし

そういうちょっとしたことで冷めるとか
大いにあり得ると思うんだ。

だから
デートは別ので行くね。

……以上、頭芸終了。

頭の中でさえぶっ飛びきれない
まともすぎる自分にうんざりしながら

残りの三つのあられを
ぼーっと見つめる。

うずうず……。

先程のより穴は小さいな。

無理に針金なんて通したら
パリッといってしまう。

よし決めた。
糸を通してネックレスを作ろう。

デートにも堂々とつけていける

とびっきりの
柿の種ックレスをね……！