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「アメリカ大統領選候補者が「アメリカは原爆投下と都市空襲を謝罪すべき」と主張する動画が話題に」

NEWSポストセブン
「アメリカ大統領選候補者が「アメリカは原爆投下と都市空襲を謝罪すべき」と主張する動画が話題に」
https://www.news-postseven.com/archives/20231012_1911618.html?DETAIL
2023年 10月 12日
 
9月3日、ある動画がYouTubeにアップされ、話題となっている。映画プロデューサーの小路谷秀樹氏が制作している番組で、エマニュエル・パストリッチ氏という人物が登場し、2024年の次期米大統領選にアメリカ緑の党の公認候補の一人として出馬を宣言した動画である。
 プロフィールによると、パストリッチ氏は米イェール大学卒業後、東京大学大学院に留学し、帰国後にハーバード大学で日中韓の文学に関する研究に携わり博士号を取得。その後イリノイ大学とジョージワシントン大学で教授を務めた人物だ。現在はイェール大学客員研究員を務めている。韓国でも教授生活に携わり、今年から活動拠点を日本に移した。  なぜこの動画が話題になったかと言えば、パストリッチ氏は大統領選への出馬を表明しているだけでなく、戦時中の広島・長崎への原爆投下と日本の都市への空襲について、謝罪しているからだ。彼は動画の中でこう述べている。 〈(日本に)勝利したアメリカ合衆国は、永遠の戦争への道に乗り出しました。朝鮮、ベトナム、イラン・イラク、アフガニスタン、シリア、そして今のウクライナまでも、必要のない戦争をずっと繰り返してきました。戦時中のマンハッタン計画で、核兵器を開発したことからその伝統は始まりました。今も国防総省は、ロシアと中国との全面核戦争の準備をしています〉 〈広島と長崎への原爆投下は、必要のない実験的で残酷な犯罪でした。核攻撃だけでなく、アメリカは戦争の後半の3年半に、2000回以上空爆をしました。日本の木造家屋を目標として開発したナパーム弾(焼夷弾)を2040万発使い、300万人以上の日本人が殺されました。日本の皆様、誠に申し訳ございませんでした。アメリカ人、アメリカ政府はその犯罪を認めるべきです〉  アメリカは原爆投下と都市空襲を謝罪し、反省しなければ、「永遠の戦争の道」から逃れられないと主張し、大統領選の公約として、戦時中の核兵器やナパーム弾などの武器開発に関する資料の公開と、占領期にアメリカの情報機関と企業が日本の文化に干渉した証拠となる文書の公開を掲げている。
 
これまでアメリカは、「戦争を早期に終結させるため」「アメリカ人兵士の命を守るため」といった理由を掲げて、原爆投下や都市空襲を正当化してきた。しかし、数百万人にも及ぶ無辜の人々の命を奪ったのは、まぎれもない事実であり、その事実に向き合うことで、アメリカは変わるとパストリッチ氏は主張する。  大統領選候補といっても、共和党と民主党が戦うアメリカの大統領選において、パストリッチ氏が大統領になる確率は限りなくゼロに近い。しかし、だからといって、何の影響もないとは言い切れない。  アメリカ緑の党は、党名から連想されるように環境政策を重視するリベラル寄りの政党で、国会議員は1人もいないものの、大統領選にはこれまで何度も公認候補を出馬させている。2000年に共和党のブッシュと民主党のゴアが戦った選挙では、アメリカ緑の党はラルフ・ネーダーを公認し、得票率は2.7%だったものの、ブッシュとゴアの得票が極めて僅差だったため、もしネーダーが出馬しなければ、その票がゴアに流れ、結果は逆転していたのではないかと取り沙汰された。つまり、自ら当選する目はなくても、選挙の趨勢を左右する存在になる可能性はある。  2016年5月27日、アメリカのオバマ大統領(当時)は、歴代大統領としては初めて広島を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花した。今年5月19日には、広島サミットのために訪日したG7各国の首脳が原爆資料館を訪れ、その中にはバイデン大統領の姿もあった。  何がどう転ぶかは予測がつかないが、少なくとも民主党支持者には、パストリッチ氏の主張が届きやすくなっていると考えられる。戦争が終わって80年余りが経てば、原爆投下や空襲の直接的な関係者はほとんどが鬼籍に入っている。謝罪できる環境は整いつつあり、もし実現すれば、日本とアメリカの関係は新たな段階に進めるのではないか。

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