ドゥドゥクでソルミゼーション

ある日の辻康介先生のソルミゼーションの講座では、アルメニアの笛を吹く藤川星さんがゲストでいらっしゃいました。

アルメニアはトルコとジョージアに挟まれた国で、シリア、イラン、イラクにも近く、地図を見ているだけで異国情緒な音が浮かんできます。

藤川さんはダブルリードのドゥドゥクや、シングルリードのプク、シュビなどたくさんの種類の笛を持ってきてくださいました。フルートのように半音に対する特定の指使いはなく、指の第2関節の腹で調整するとか、穴が開いているけど使うことがない穴がいくつかあるなど、とても興味深い楽器でした。笛はきらびやかなデザインのトルコの織物のようなケースに包まれていて、そちらも気になりました。

実際に演奏していただきました。「もしかしたらうるさいかも」とおっしゃっていたのですが、とてもまろやかな響きで、いつまでも聞いていたい音色でした。というか、藤川さんが一番驚いていたようで、「この聖堂の響きが素晴らしい」と感激されていました。

アルメニアには、特定の音だけをずっと出しっぱなしにするドローン奏者もいるそうです。循環呼吸でずっとドローンをやっていて、CDなどにも「ドローン奏者」「親子2代にわたってドローンを担当」などとクレジットされているそうで、ドローン奏者はえらいらしいです。

「では、藤川さんにドローンをやってもらって、6音のカノンを歌いましょう」ということになりました。藤川さんがutの音を出しっぱなしにして、半数がut sol re fa mi sol re fa と歌い、残り半数は1拍遅れて5度上でut sol re fa mi sol re faと歌い、誰かが音の間も歌います(ut solを歌う時にut re mi fa solと歌う)。

5分以上カノンをやっていたと思います。その間藤川さんはドローンで出しっぱなし。頬と首に空気をためていて、そこから息を吐いて、その間に鼻から空気を吸う、という感じでしょうか。終わった後、思わず拍手してしまいました。(私たちもカノンがんばった!)

ドローンがあるとsolを歌う時(完全五度の時)に、空間がよりぴしっとする感じがしました。さらに、音の間も歌うことで、utとsolの間にはre mi faがある、跳躍していてもその間には音が連続して存在していることが、より感じられるようになりました。

こうやって中世の人たちは音楽感覚を身につけていったのかもしれません。教会の聖堂で6音のソルミゼーションをやることで、より中世の人(特に子供たち)の音楽の学び方を味わえるように思いました。

藤川さんはグレゴリオ聖歌を演奏する機会も多いそうです。「今は、ポップスの人たちもグレゴリオ聖歌に興味を持って、勉強している人も多い」とおっしゃっていたのが印象に残りました。辻先生と藤川さんとで聖グレゴリオの家の聖堂でぜひ、演奏会をやってほしいです!

【余談】
講座が始まる前に食堂に行くと、小さい女の子と男性がいて「かわいいな~」と思いながら見ていたのですが、話を盗み聞くとこの男性はお父さんではないらしい・・・(女の子が「パパ」の説明をしていたので)。聖堂に入るときに、偶然この二人と一緒に入ることになったので、何事かと思っていたのですが、藤川さんと辻先生のお嬢さんだったのでした。辻先生と藤川さんは講座のあとに演奏旅行に行かれるそうで、お嬢さんも一緒に行くとのことでした。とってもかわいいお嬢さんでした!