第7回 命を救うのはVline

こんばんは。雑記noteのようになってきました。
気を抜くとすぐ更新頻度が空いてしまいます。


救急外来で研修医の先生と手技の話になると、「CVとりたいです!」、「Alineとっていいですか?」と言われることが多い気がします。

そのようなリクエストに対していつも自分は「Vline(末梢静脈路)が滞りなくとれるようになったら良いよ」と返答しています。
研修医の先生らからみれば、僕は意地悪な上級医に映っているかもしれません。

しかし、これには3つの理由があります。

1. 静脈留置針の使い方に慣れる

CVにしろ、Alineにしろ、内筒・外筒の仕組みが分かっていないと、上手く穿刺から留置までの流れが出来ません。また血管に針を刺すという根本の行為は同じため、Vlineが最も合併症のリスクが少ないこともあり、慣れるまでは初めての方にもチャレンジさせやすいです。
(患者は練習台ではない!というご意見もあるでしょうが、それならば研修医や新人看護師は一生処置が出来ません。誰でも初めてはあります。)

2.  汎用性が高い

Vlineは汎用性が高く、いつになっても使える技術です。急性期病院の勤務医で、救急・集中治療、麻酔、循環器などを除けば、日常的にCVやAlineをとっている医師はほぼいないのではないでしょうか。
昔とった杵柄で”研修医”の頃の経験を活かして数年振りにCV確保を行い、動脈穿刺などしてしまったら、目も当てられません。
CVやAlineが不要な診療科に進めば、基本的には不要であり、万が一の必要時には慣れた術者にお願いをするのが現代のスタンダードと思われます。

一方で、Vlineは急変時対応や病棟からの依頼など必要になる機会が圧倒的に多いです。放射線科ですら、造影CTの際に必要に医師が静脈路確保を行うという病院もあります。

僕の初期研修病院は看護師が静脈路確保を行なってくれましたが、後期研修を行なった病院は医師が行わないといけず、最初はとても苦労しました。
初期研修修了後に不要となる可能性が高い手技よりも、汎用性が高い手技を重視するのは指導者として当然だと思うのですがいかがでしょうか。

3. 一番難しいのはVline

これは自施設のICU回診中に話題になり、皆が同意していたのですが、”一番簡単なのはVline、そして一番難しいのもVline”です。

若い方の隆々とした静脈は、穿刺部位の選択肢が多く、漏れるリスクも少ないです。一方で、高齢の方、肥満の方や維持透析されている方の場合は一気に難易度が上がります。
エコーガイド下でようやくVlineを留置出来ることもあり、そのような場合は到底初心者向けの手技とは言えません。

理由としては、①的が小さい(=血管径が細い)、②血管壁が薄いの2点かと思います。
CVC留置は、エコーガイド下穿刺に慣れていない術者を除けば、穿刺の対象となる血管径は大きく、難しく感じることはあまりないのではないでしょうか。
またAlineの場合は、血管自体が余程圧迫しない限り虚脱することはなく、慣れればエコーガイド下でもブラインド法でも穿刺の成功率は安定します。

Vlineの場合は、穿刺部位の選択から勝負は始まっており、この段階で選択を誤ると高確率で失敗してしまいます。
どんなに良い血管を見つけても、一度穿刺誤ればその血管に次はありません。
エコーガイドで行うにしても、的が小さく、容易に虚脱するため、針先を確実に描出できないと到底穿刺は出来ません。


これらの理由があり、僕は研修医の先生らにはVlineをまずマスターして欲しいと考えています。研修医の頃にはCV取れたら一人前とか思っていましたが、今になってみれば、全く関係ありませんでした。

最後にもう一度強調しておきますが、CVやAlineは得意な人にお願いすれば良いのです。慣れないのに無理して行うのは、合併症を作った際のリスクがデカすぎます。


「命を救うのはVline」

タイトルは昔Twitterで見かけてから、拝借して研修医によく伝えている格言です。
研修医の先生方は是非、Vlineを練習して下さい。


次回に乞うご期待!

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