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視覚障碍者と一緒にClusterで遊ぶ

この記事はCluster Creator #2 Advent Calendar 2022に参加しています。

以前から親交のある全盲でプログラマーの友人から、サウンドだけで遊べるゲームを一緒に作りませんか?とお誘いを受けました。
視覚障碍者、および晴眼者(視覚障碍ではない者)の方々との
オンライン/オフラインでのミーティングを経て、まずは

  • 音の大きさ、方向等を使ったゲーム

  • 音源を自由に動かしてあそぶ、「音の箱庭」のようなもの

を作ってみようということになりました。
そこで、手っ取り早く動くものを作成する手段の一つとして、
今回はClusterのワールドという形で実装してみることにしました。

実際に、視覚障碍者と一緒に遊べる、音だけ、または音メインのワールドを作ってみて、いくつかの気づきがありました。

音はなるべくすべて3Dにする

Clusterは多人数で遊べるプラットフォームであるため、誰がどこにいるか、
自分が出した音なのか他人が出した音なのかを認識する必要があります。
最初、暗闇の中をドレミ・・・と辿っていくゲームを作った際に、チェックポイントに到達したときの音は2Dでもいいかな、と思っていたのですが、いざ複数人で遊んでみると誰がチェックポイントにたどり着いたのかわからない、ということになりました。
一人で作って一人でチェックしていると案外気が付かないものですね。

3Dはリニアな表現にするほうがわかりやすい

通常、Unityで3Dの音を置いた時の減衰はこのようになっています。

3D音の減衰(通常)

ですが、このまま音を置いていくと、ごく近くの音はわかりやすいですが、それ以外の音はいつまでも小さく鳴っていていまいち距離感がつかめません。
特にドレミをおいかけていくゲームでは、ドレミファソラシド・・の音が周りで一斉になってしまい、次の目的地がとても分かりにくくなってしまいます。
また、これはUnityの制限なのですが、Unityの音源には「指向性」、つまりスピーカーが向いている方向のみに音が大きく聞こえるという概念がありません。これがないのも音の距離感のわかりにくい一因です。
もちろんスクリプトを併用すれば疑似的に指向性を持たせることもできるのですが、Clusterではスクリプトの使用が制限されているため、この方法を用いることができません。

3D音の減衰(リニア)

そこで、音の減衰をリニアにし、聞こえる音を直近の音と次の音あたりまでのみに調整しました。こうすることで、より次の音の方向をとらえやすくなりました。
※実際には、これでも自分を含めた晴眼者には大変難易度の高いゲームになっているのですが、視覚障碍者の方々は操作方法の難しさ(後述)にもかかわらず軽々とクリアしていました。

視覚障碍者にとって「Desktopで入る」が最大の難関

視覚障碍者にとって「Desktopで入る」のボタンはどこにあるかわからない

今回、視覚障碍者の方には自分のPCにClusterをインストールして遊んでもらったのですが、操作がブラウザからEXEに切り替わったところでとても苦戦していました。
ブラウザで操作が完結している間は、視覚障碍者の方は「ボイスオーバー」とよばれる文字読み上げ機能とキーボードショートカットによる移動を巧みに使用して操作をしていたのですが、EXEにフォーカスが移動した瞬間から、これらの機能は効かなくなります。
さらに、「Desktopで入る」ボタンを押すにはマウスをボタンに合わせてクリックする必要があります。この作業を視覚障碍者が行うのはかなり大変な作業です。
もちろん、EXEでもボイスオーバーに対応してもらえるのが一番良いのですが、キーボードで選択できるだけでも十分ありがたいのではないかと思います。

マウス操作も難関

Clusterの移動はカーソルまたはAWDSキーで並行移動、マウスドラッグで回転となっています。つまり、マウス操作をしないと方向を変えることができません。
手探り状態でマウスを操作すると、他のウインドウにフォーカスが移動してしまったり、Clusterでは知らないうちに真上を向いてしまっていたりといったことが起こります。方向転換にマウスだけでなくキーが割り振られていれば、より操作がしやすくなるのではないかと思います。
余談ですが、前述のドレミの音を辿るゲーム、視覚障碍者の方は方向キーのみでクリアしました。晴眼者にはただでさえ難易度の高いゲームを、方向転換で音を正面に持ってくることなく、平行移動のみでクリアするという、ちょっとしんじられない光景でした。

おわりに

これらのゲームはClusterにて公開中です。
よかったら遊んでいってください。