哲学思想日記 2023-W25 — 哲学的神学史; 倫理学研究の完了
2023-06-19/25
哲学
私はすべてを知りたい. しかし人生は短く, そもそも生まれる以前のことや宇宙の果てのことは史料や伝聞でしかわからないのだから, すべてを知ることは現世ではなく天国でできると期待するしかない. しかし「私は何を知りうるか」という問いは現世でもできて, それが哲学と呼ばれている.
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『ニコマコス倫理学』冒頭には「すべての学問は何らか善を目指す」と書いてあるが哲学って何か役に立つんスか ? と Ἀριστοτέλης に聞きたくなってしまうけれども, しかし Ἀριστοτέλης は観想活動を幸福だとみなしたから, 「幸福になること」に哲学は役立つのじゃぞ, と返されるだろう.
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よく “(Πλάτων と対照的に) Ἀριστοτέλης は地に足ついている” などと言われるけど, “属性の形相を複合体としての第一実体における実体的形相が受容する” とか言っちゃってる人のどこが地に足ついてんの ? と思う. ちゃんと読んだら大したことないと感じてしまうのでは ?
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「タイプとトークンとは何か」という主題を1冊丸々扱った本が読みたい
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「哲学者による神学」の思想史的研究ってないのかな ? その分野の入門書に載っていて欲しいのは, Πλάτων の『Τί̄μαιος』あたりから始めて, Ἀριστοτέλης『形而上学』Λ巻, (中世は普通の神学なので飛ばし) René Descartes, Thomas Hobbes『Leviathan』3-4巻, Benedictus de Spinoza, John Locke, J.-J. Rousseau「サヴォア助祭の信仰告白」, 理性の限界内さん, G. W. F. Hegel, そしてもちろんLW !
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私には感心できないと思われる, 多くの哲学者の癖は, 「人間が万物の尺度である」と言わんばかりに人間を典型例に挙げること. 固有名の典型例を製品番号ではなく人名にしたり, 感官の典型例をカメラではなく眼球 (しかも自分の !) にしたりすること. 人間事例は例外的かつ情動混入的なのに.
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1998年岩波書店の大森荘蔵著作集全10巻が絶版で, 古本で買おうとすると10万円超えるという時点で, この国の文明はもう滅亡しています. ローマ人にとってはただの見慣れた建物だったのに, それを土から掘り出して “遺産” として保存しなければならなくなった事態に似ている.
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『ハイデガー哲学は反ユダヤ主義か』の冒頭を図書館で読んで思ったこと : 正直に申し上げて M. Heidegger が大嫌いなのだが, その理由は (ナチ野郎だったということは言わずもがな) ヨコ人生を生きる俗物っぽさにあるのかもしれない. 同じ反近代主義者でも F. Nietzsche と L. Wittgenstein は完全に時代や社会から明後日の方向を向いているところが好ましい.
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人間の行動のうち, どこまでが文化でどこまでが生態かって明確に線引できるのかな ?
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質的に同じ人格が複数ある場合は多重人格なのか ?
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最近, “わかる” とは何かがわからなくなり, 何もわからなくなっている.
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Σωκράτης : 1と1を合わせて2になるのに1を分断しても2になるのがわからない (Phaedō, 97A).
オレ: 算術における2は個数ではなく量. 1切れのパンを裂いたら2切れになるのは割り算ではなく裂き算. 君が行っているのは “1さく1は2” という別の言語ゲームなのだ !
On Wittgenstein
カメラに “感覚与件” はあるか ?
「えっ !」という語に対応する感覚与件はあるか ? 「こんにちは」の感覚与件はあるか ? (Wittgenstein 的思考)
現象がなんなのかわからない.
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私は L. Wittgenstein の「倫理学講話」が大好きなのだが, 「絶対的善とは誰をも必然的に強制するものだ」という記述があの講話の中で本当に必要だったのかという点は気になる. まず「誰をも」という点について, 悪人を強制しなくても善は実在しうると思うし, さらに善人を強制しなくても実在しうると思う.
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『論理哲学論考』を読むとスッキリするが, 『哲学探究』を読むとモヤっとする. “言語ゲーム” や “家族的類似性” など華々しい成果はあるけれど, 独我論系・感覚与件系の問題は “本棚整理” できているように見えない. 私の能力不足でハシゴを登れていないだけなのか ?
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Descartes–Husserl 的な “独我論” だと客観的世界の実在自体を疑うが, (後期) Wittgenstein 的独我論は客観的世界の実在を前提とした上で私の特異性を述べているのだと思う. みんな言語ゲームをしているのにその参加者の1人だけが私だという. また前者は意識だけなのに後者は無意識だけとも言える.
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L. Wittgenstein は『反哲学的断章』の中で “神を本気で信じられるなら, 他者の心も信じられるはずだ” と言っていた. (全然関係ないが, 『草稿 1914-1916』から『秘密の日記』が削除されたように, 反哲学的断章にも「秘密」の部分が少なくないのではと疑ってしまう. 不適切な性はなかったことにされる)
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L. Wittgenstein の『秘密の日記』は, あれやはり「感覚日記」だったんですかね. たしかに “感覚E” らしきものは記録されてますし. 感覚日記というのは, Mindfulness というか, 臨床心理学的な, 精神衛生に良い効果もありそう.
性愛
道徳の対義語はエロであり, ゆえにエロは道徳的に悪い. また, エロとは (少なくとも私にとっては) 一切の価値の価値転換に見える. 最大の快楽であり, かつ, 最大の悪. 「私はときどき動物になってしまう (LW)」. 理性の光の下では悪なのに, 性欲の闇の中では快になってしまう. 克服したい.
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小学生のころドロケーに BDSM 的な興奮を感じていたことを告白します.
人生
Twitter 等ネットで文章を書いていると, 「実名を挙げるとエゴサした本人に嫌われるかな」と懸念し名指しを避けることがあるのだが, この感情は何か「諱」や「JHWH」に通じるものがあるのかもしれない.
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Aimer quelqu’un par compassion, ce n’est pas l’aimer vraiment. — Milan Kundera « L’Insoutenable Légèreté de l’Être »
“同情によって誰かを愛することは, その人を本当に愛することではない”
フランス語の授業で習って感動した言葉.
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出版社の企画担当って楽しそう. 面白そうな主題について専門家に新しく書かせることができるんだもんね.
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Steve Jobs は部下のアイデアを罵った次の日にその同じアイデアを自分の案として提示する, みたいな話ありませんでしたっけ.
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私は Kant の『永久平和のために』が正しいことを言っていると思う. 世界共和国は不可能という点で. 哲学者と倫理学者は同じ国 (文芸共和国) に住めないと, 少し前に友人と話していて, 痛感した.
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もう社会人の歳なのに, 今年の4月くらいに不審者に「きみ中学生 ?」と声かけられたことある. 高校生のときにも某店で不審者に同じ言葉をかけられた.
倫理
よく「政策として〜すべきという政治的問題に科学者が口出しすべきでない」とか「患者が〜すべきという生き方の問題に医者が口出しすべきでない」などと言う人がいるが, なぜダメなのか ? なぜその個人主義・自由主義的規範に従わなくてはいけないのか ? 哲人王が愚者を支配してはいけないのか ?
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「道徳は畜群本能に過ぎない」という言葉の意味は何か ? 候補の第1は「道徳は畜群本能の部分集合である」ということ. 候補の第2は「道徳の原因は畜群本能である」ということ.
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道徳的直観についての話 : 法学的直観ならわかる。「この行為は合法だ」「この行為は違法だ」など。毀誉褒貶的直観もわかる。「この行為は褒められる」「この行為は叱られる」など。でも道徳的直観の場合はどうしてそれが他の何的直観でもなく道徳的な直観であるとわかるの ?
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ドストエフスキーは「神がいなければ一切が許されている」と言ったらしいが, それは (たぶん)「天国や地獄という賞罰がなければなんでもできる」という意味ではないのだ. というのも, 賞罰なら刑務所とか給料とか現世にもありふれているのだから. むしろ, 世界の外側にある絶対的価値の話だろう.
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なんで F. Nietzsche は道徳の反対物として幸福ではなく “健康” という価値を掲げたのだろう ? やはり生理学を理論的背骨にしていたから ?
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私の内に道徳法則があるということは, 私の上に星繁き空があるということと同じくらい凡庸な事実にすぎない. 物理学的宇宙はただ存在し, 心理学的反応はただ生起する. したがって, 星繁き空に必要なのは美という絶対的価値であり, 道徳法則に必要なのは善という絶対的価値である !
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2023年6月19日, 「倫理学の謎はすべて解消した」との実感が突然到来した. 私が解消させたのではなく, Fiedrich Nietzsche と Ludwig Wittgenstein の和訳を読んだことにより, あたかも数学の教科書の例題をノートに写した中学生のように, 問題の終結を「理解」できた.
2023-07-09
BGM: Daft Punk “Harder, Better, Faster, Stronger”
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