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#8. 人類最大の敵は“二項対立”だ

ダイバーシティという言葉が世に広まって、もう3年くらい経つだろうか。

その概念に出会い、多様な人々を目の当たりにするなかで、個人的にはかなり意識的に訓練したことがある。

それは“二項対立からの脱却”だ。

正義と悪に落とし込まないこと。いいか悪いかで話さないこと。YESかNOかだけで終わらないせないこと。理解できないことの先へ行く勇気と知性を持つこと。

当初は気を抜くと、すぐに二項対立の考え方に戻ってしまっていた。それほど、私の脳に染み付いていた考え方だった。

だが振り返ってみれば、人類のあらゆる諍いは、そのほぼすべてが二項対立が要因なのではないだろうか。戦争、人種差別、男女差別、ヘイトスピーチ、いじめ、ハラスメント...。どちらかが正しい・優れているといった意識が、他者を傷つけたり、差別や排除を生み出したりしていく。

なぜ人類はこんなにも二項対立に支配されているのだろう。

そんな疑問に対し、私が今のところ一番納得のいく答えがある。

以下、フジテレビの深夜番組「ナダールの穴」(現在は放送終了)に出演した広島大学教授の長沼毅さんの話から抜粋。

我々が一番弱いのは複雑系。カオスとか、最初のちょっとした違いで未来が全然違う結果になっちゃうこととか。

なぜかというと、我々の太陽系には太陽が1つしかないから。太陽と地球、地球と月とかの2対問題は得意だけれど、それで終わっちゃう。

さらに、今から300年以上前には、ニュートンが万有引力の法則や運動方程式によって「2対問題でいけまっせ!」って言っちゃった。

でも、宇宙を見てみると、太陽が2つある太陽系が(1つだけの太陽系の数と)同じくらいある。僕たちは太陽が1つなのが主流だと思っていたけれど、連星も主流として存在する。

そういう太陽系では、最初から3対問題を解かざるをえないよね。そうなれば(その太陽系にいる生き物は)最初から賢いでしょう。僕が数学に弱いのは、この太陽系に生まれたせいだと思ってる(笑)。

そう、すべてはこの太陽系のせいーーそこまで遡るかとツッコミたくなるが、妙に納得がいくのも事実だ。

ちなみに、私たちの太陽はその昔、2つ存在していた(かもしれない)そうだ。残念ながら、成長過程で太陽はひとりぼっちになってしまった。

もし太陽が双子のままだったら、この世界に蔓延る諍いや差別は、今より少しマシだったのだろうか?  私たちは“どちらでもない”状態で揺れ動く自分たちを受け入れながら、ただより良い未来を目指すことに集中できていたのだろうか? ニュースやSNSを見ながら、ぼんやりとそんなことを考える。

とはいえ、数十億年前のことを悔いても仕方ない。私たちは自力で二項対立の向こう側へいかなくてはいけないのだろう。

そんなことを思いながら、明日もきっと、昇ってくる太陽を見つめているのだと思う。

Photo by Enq 1998 on Unsplash