#2. 初めて借りた本を覚えていますか
小学1年生のとき、初めて図書室で借りた本を今でも覚えている。あかね書房の「きいろいばけつ」という絵本だ。
主人公のきいろいきつねはある日、素敵なきいろいばけつを見つける。持ち主不明のばけつを前に、友だちのうさぎ・くまとも相談し、1週間経っても誰も取りに来なければ自分のばけつにしようと決める。
きつねは毎日、ばけつの様子を見に行く。雨が降れば傘をさし、風が吹けば飛ばされないように水をためる。
しかし1週間後、ばけつは消えてしまう。うさぎとくまはきつねを慰めようとするが、きつねはひとり、ばけつのことを思い出してから
「いいんだよ、もう」
「いいんだよ、ほんとうに」
と言って、話は終わる。
私がこの絵本をずっと覚えている理由は、このエンディングが示す教訓がわからなかったからだ。悪いことをしちゃいけませんよとか、勇気を出して頑張ろうとか、子どもの絵本によくある、わかりやすい教訓がこれっぽっちもない。
ようやく自分なりの答えを導き出せたのは、ここ数年のことだ。
これは、自己肯定の話なのではないだろうか。たとえ消えてしまっても、証明してくれるものが何もなくても、それが偽りかもしれなくても、他人にとってはとるにたらないものでも、自分が愛したものをまっすぐ見つめること。確かに愛したという記憶を、きちんと持って生きていくこと。
長い人生のなかで人は、いろんな「きいろいばけつ」に出会うことだろう。心を引き裂くような別れを前に、一緒に過ごした"1週間"を、いっそのこと忘れたいと思うこともあるだろう。
そんなときでも、愛した記憶を手離さない”自己肯定”という強さを、きいろいきつねは教えてくれるのだと思う。
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今日もちょっとズルしました(10分以内に書けなかった…)。ごめんなさい。