ゾウに触れる、輪郭が溶ける
スリン象祭りに運営側として携わっている間に、調査先のゾウが倒れた。
博論執筆に向けた長期のフィールドワークを開始して、もう一年以上が経つ。その間に得た経験から言えば、自分の体重を支えることが出来なくなったゾウに残された時間は長くない。
だが、あれから約三週間。彼女はまだ生きている。いま私の目の前で息をしている。
それでも、日に日に死前臭が強くなっていく。内臓が徐々に機能しなくなりつつあるのだ。
身体の表面に出来た傷には、蠅がたかり、蛆虫が湧いている。それを、可能な限り生理