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AL「good morning」について(感想と備忘録)

アルバム「good morning」は2000年4月26日に発売された、エレファントカシマシによる11番目のアルバムで12曲のオリジナル曲が収録されている。
1.ガストロンジャー
2.眠れない夜
3.ゴッドファーザー
4.good morning
5.武蔵野
6.精神暗黒街
7.情熱の揺れるまなざし
8.I am happy
9.生存者は今日も笑う
10.so many people
11.Ladies and Gentlemen
12.コールアンドレスポンス

曲を書き歌っている宮本氏は当時33歳。内面の葛藤が社会生活と結びついている。社会に対する不満や主張、挑戦の言葉が音楽に乗って放たれている。

1.ガストロンジャー
 かっこいいギターリフに乗っかってボーカルがしゃべりまくるという不思議な曲。曲名は作者の造語だという。胸をはって化けの皮をはがしに出かける者という意味か。化けの皮をはがしに行くとはどういうことか。 稀代のロッカーからの啓示のようにも聞こえる。
 社会の現状に満足できず、自分もそんな社会に埋もれ良くも悪くもまあまあに生きている。 「くだらねえ世の中 くだらねえ俺達」 そう思っていても、社会も自分も変えるのは容易ではないのだ。では「あいつらの化けの皮を剥ぎに行こうぜ」というのは、そんな度し難い世の中また自分を、変えて行こうということなのか。 思い通りにならないことを承知の上胸をはって行こうぜということなのか。 「破壊されんだよ駄目なものは」 自然淘汰されないよう抗えということなのか。
 「あいつら」が一体何者なのかが最後まで明かされないため、聴衆は絶妙にはぐらかされ、作者の手の上に転がされる。 「さあ勝ちにいこうぜ ベイベー」で政治的なことはちょっととなっている女子達の目をも覚まさせ、みんな鼓舞されてなんともいえないグルーブになる。 本当に不思議な曲。

2.眠れない夜
 夜中に一人まんじりともせず自由に思考している。 頭の中の大部分は「あいつら」との闘争。 卑屈になったり反省したり、 頭の隅のフラれた彼女の記憶が蘇って涙したり、 様々な思考が交差して絡まり、 「あいつら」への執念もどんどんエスカレートしていく。
 この曲ではバンドの参加はなく、宮本さんが全部のパート打ち込み作曲している。 作者の脳内が言葉となり音となっているのか。 ドラの効果音がいい感じ。 チクショウ~ ギャ~も狂気じみて好き。

3.ゴッドファーザー
 とても難解な曲。アルバム内「眠れない夜」の次にくることから、前の曲とのつながりで「眠れない夜 涙の種 女なのさ」の歌詞から発展したような、恋愛論的な歌。 作者は失恋して立ち直れないでいるように思える。少なくとも恋愛モードでは歌っていないと思う。こうして内省の歌を唄って、失恋の痛手を癒やしているよう。 俺怒って君を泣かしたし、コミュニケーションやカンバセーションが大事なんだという反省が歌詞の中にさりげなく置かれている。

4.good morning
 これも難解な曲で、使われている言葉の深い意味はわからない。 早朝のオレの思考と精神状態を歌っていると思う。 マシュマロのようにふわふわ、マッシロで思考停止 自分の存在はしっかり確認する。 クリスティーヌもお目覚め???
 「朝はそうヒトを大人にするでしょう」という一節が素敵だなと思う。 昨日に別れを告げ、新しい朝を迎える。しかも毎日。 Good morning が明るい希望の言葉になる。 クリスティーヌはフランス人だと思われる。 永井荷風の作品に同じ名前の登場人物があるそうだ。(FFさんのポストより)→
歌詞が面白く頭韻脚韻、同じ言葉のくりかえしがラップのようだが、リズムはロック。 マシュマロ、ふわふわ、クリスティーヌなどの可愛らしい言葉で曲全体の印象が柔らかく、若干の狂気もスパイスになっている。楽しい曲だと思う。

5.武蔵野
  感傷的なメロディーと不思議な歌詞が心に残る。平安時代の武蔵野を詠んだ歌や武蔵野を題材に書かれた文章や小説などを思い浮かべながら、歌詞の意図するところを考える。
 平安の頃には、武蔵野はさえぎるものがないだだっ広い空と尾花(ススキ)が生い茂る平原だった。地平線から月が出でては沈むことに都びとは大いに関心を寄せたそう。また戦国の世にはいくさも度々起こった古戦場でもある。広いだけで何もない場所でも、人々の絶えることのない営みは日々新たな歴史を生み、新たな景観を生む、同時に古いものは過去のものとなり忘れ去られる。
 宮本氏の「武蔵野」は、今の東京に生きている俺が、かつての武蔵野に生きた人々が刻んだ日々の営みの延長線上にいることに感覚的に気付いたのではないだろうか。電車にゆられながら、景観は違えど昔の武蔵野と同じ場所で、同じような心持ちで生きていたであろう過去の人々を強く意識したのではなかろうか。 「俺達は確かに生きている」が心強く響いてくる。

6.精神暗黒街
俺はいつもテンションが高い。 どんな時でも高揚していて Too highだと思う。 でも実際の気分はなんとなくブルー。 いつでもブルーで晴れることはなく Too blueだと思う。 この複雑な心の状態を精神暗黒街と命名するセンスよ。 そしてこの気分の不安定の原因は女でもあるようだ。

7.情熱の揺れるまなざし
 情熱の揺れるまなざしとは作者のまなざしということか。情熱的に社会を見つめ毒づいているようだ。歌詞はやっぱり難解だが、ooh yeah!の歌い方がとても好き。

8.I am happy
 自分が生きている社会を皮肉る歌。政治に対する落胆や諦観の気持ちを吐きだしている。

9.生存者は今日も笑う
 自虐の歌。泣き言を聞いてもらう場所がある幸せ。今日も笑う生存者。

10.so many people
 定めなき世の定めとは。現代社会は昔のように風習やおきてに固執する文化は廃れてきたが、島国に生まれたことや重い歴史を背負っている運命は変えられない。変えがたい定めがあろうとも、悲しみを喜びに変えて行くことは可能だ。それが一瞬ことでかりそめであっても。
 それを音楽で証明するかのように、ソーメニーピープルからの変調でモヤモヤした気分を一掃する開かれた清々しいメロディーになる。
高速道路、朝日をあびてからは、リズム、メロディー、歌詞が頭に浮かぶ映像と一体化して歌の中に飛び込んだような錯覚になる。爽快な曲。

11.Ladies and Gentlemen
 世間の皆さま、おはようございます!!という雄叫び

12.コール アンド レスポンス
人には寿命があって必ず死ぬ。死刑宣告されているようなものだ。死ぬために生きている。歌詞が難解だけれどかっこいい曲。後半に入ってくるのギターソロが特にかっこいい。 

不思議で変で面白くて、だけどきちんとした主張がちりばめられた素晴らしいアルバム。何度も聴いて感想も書いてジャケ絵の模写もして、自分なりに存分に堪能しました。
音楽を聴いて心に感じること、頭に浮かぶことはめまぐるしく移り変わり、大部分は記憶から離れていく。そういう記憶を言葉にして残しておきたいと思って書いた主観ほぼ100%のアルバムの感想文は以上です。