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AL「俺の道」主観的解釈と備忘録的感想

AL『俺の道』(おれのみち)は、2003年7月16日に発売された13枚目のオリジナル・アルバム。収録曲は以下

1.生命賛歌
2.俺の道
3.ハロー人生
4.どこへ?
5.季節はずれの男
6.勉強オレ
7.ラスト・ゲーム
8.覚醒(オマエに言った)
9.ろくでなし
10.オレの中の宇宙
11.ロック屋(五月雨東京)

エレファントカシマシによるセルフプロデュース&アレンジでのクラシカルロックチューンにボーカル宮本氏が得意とする内省的な歌詞が乗り、個性的かつ魅力的な歌が勢揃いしている印象がある。40歳を目前にした等身大の姿をさらけ出し見せてくれているところに作者の心意気を感じる。

1.生命賛歌
人間や生き物の命の尊さを歌ったものかと想像していると、奇想天外な歌詞に唖然とする。主語は明確だが明記されていない。歌詞に書かれているのは”オレ”が対峙し受け取ったものだけだ。その大きさに圧倒されながら、それがそこに存在する理由に思いを馳せ、古代から現代にいたるまで脈々と流れる人の営みや祈りがその正体なのだと気づいた時、ただ立ち尽くして泣いてしまった現代人の不甲斐なさを歌った生命賛歌なのだろうか。
俺の狼狽ぶりが可笑しい。逃げ出してオドッて彼方へ飛ばされ、そのあげく祈ってしまうという。
作者が埼玉古墳群を訪れ、巨大な古墳にインスパイアされて生まれた歌だそう。
NHKのみんなの歌にも合いそうな気がする。おもしろいアニメーションがつきそうだ。

2.俺の道
否定的で悲観的な言葉が並ぶ。満たされていないのに満たそうとしない。何かを引きずり回している。”オレ”は何かに対してとても消極的で受け身である。ただ待っている。それが俺の道だと。

3.ハロー人生!!
この曲の感想を書くのはとても難しい。歌詞の一言一言が胸に刺さって客観的な言葉が出てこない。
そうだ生きているから合格。思い通りの人生でなくても、生きていれば丸儲けなのだと思わせてくれる歌。

4.どこへ?
世間でもてはやされているものに”俺”は不服であり、嫌悪さえ感じる。汚れた人工の川はただ勢いのみにて、昔の美しい風景をいとも簡単に飲み込んでしまうのだ。
俺は行き詰まりを感じれば、いつだって原点に返り再び一からやり直すが、今はその原点さえも飲み込まれてしまったかのように見えない。

5.季節はずれの男
「俺は勝つ」を座右の銘に日々努力をし言い訳はしない。お互いを高め合えるような友達でなければいらない。季節はずれの男とは世相に乗れない男という意味なのだろうか。自分を一切甘やかさず、鳥が飛ぶように上を見て生きたいというそのストイックさでいつか勝利を手にしてほしいと願わずにはいられない。

6.勉強オレ
アルバムの後半に向けて”オレ”は本格的に内省モードに入っていく。
その第一曲目は、自己分析をして頭に浮かんだような言葉を羅列し、それらに向き合うため克己心をもって勉強しよう決意をする。
曲の中盤のおんなについてのくだりが秀逸だ。
自分に勝つために勉強オレ、おんなと向き合うために哲学オレ、言葉使いもさすがだ。
こんな歌宮本さんにしか書けないと思う。

7.ラストゲーム
自分と勝負するための具体的な策を考える”俺”。
やり直しの利かない最後の戦いだと心得て日々を過ごそう。
カッコ悪い自分に打ち勝ち、現実から目を逸らすことなくカッコイイ自分を生きるのだ。
このロック歌手のかっこよさは、この生活感のなさに集約されている。

8.覚醒(オマエに言った)
勉強が思うほどはかどらないのか、虚無感を漂わせやさぐれている。
タバコを吸い、”オマエ”を相手に弱音を吐いている。
このやさぐれ感は「俺の道」の"オレ”ではないか。
多くの女性をときめかせていることに自覚はなさそうだ。

9.ろくでなし
己との戦いが停滞してきて、何も変わらない”オレ”に焦りを感じている。自虐的な言葉が連なっている。

10.オレの中の宇宙
心の奥の奥まで内省してしていくとあるのだろうか、宇宙。”オレ”は意識の深いところまで行ってしまって俗人には分からない世界にいるようだ。

11.ロック屋(五月雨東京)
深い内省の結果、自分なりの答えに行き着いたようだ。子供の頃、傷ついた経験が役に立った。

(12.心の生け贄)
この曲はシークレットトラックなので短く(ネタバレごめんなさい)。
心の生け贄というのは、自分の心が自分の意思ではないものに支配されている状態ということだろうか。
吹っ切れた感じで、今以上の”俺”になり自分のいるべき場所に帰ろうと歌っている。

ここまで内面をさらけ出すこともないと思うが、このような心境は自分にも心当たりがあるだけに、ダメな自分を肯定しまた前を向けるような気がしてくる。あのカッコいいロック歌手がこうならば、こんな自分もどうにかなるのではと希望が湧いてくる。

カッコいい人のお茶目な一面というのは、ムダに可愛いと思わせてくれるアルバムでした。