2020年は発狂との戦い

3月以降カイロで引きこもり中。
自主外出禁止令を始めて最初の数週間でやたら短気になり、明らかにメンタル不調が出ていると妻に指摘されたりしてた(その後めちゃくちゃ色々対策して、今は元気)
そんな状況で発狂せずにすんだのは、なによりオンラインで遊んでくれた友達と、この状況でも生み出されていくコンテンツのおかげです。本当にありがとうございました。
今年触れたものを眺めていると出会った順番にもお導きを感じたので、時系列で記憶に残ったものを載せる。

3月「あつまれ どうぶつの森」

去年まで夏はアホみたいに海とかプールとか行ってて、今年は泳げないストレスがものすごく強かったんやけど、夏のアップデートで海に入れるってなった時にめっちゃでかい声出た。あつもりの中で泳いでるだけで耳からストレスが抜ける音がして、ただただ30分くらい泳いでた。本当に任天堂には感謝してる。

3月-2 どんぐりず「baobab」


今年一番聴いたのはどんぐりず
この状況でも勢い止まってなくて夏に出したシングルもめちゃくちゃ良かった。どんぐりずが何か動くたびに俺も芸事頑張ろうって気持ちになる。


4月 國分功一郎「中動態の世界 意志と責任の考古学」

今年はまじでだれと喋ってもこの本の話してた気がする。
というかしてたしうざかったと思う。すいませんでした。
SFを読んでると、意志の問題をテーマにした作品めっちゃあるけど、この本のおかげで解像度がめちゃくちゃ上がって、SFへの没入感(とそれに伴う疲労)がめちゃくちゃ上がった。

5月 Joji 「Nectar」

今年の個人的歌うま大賞。やっぱり歌やで。
年々、聞く曲でも歌とメロディーに力点が置かれてない曲に自分自身近づいて行ってて、それは老いの問題も結構あるのかなって思ってるけど、やっぱ歌がうまいのに出会うとそれだけでひれ伏してしまう。

6月 パラサイト 半地下の家族

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0897QF56R/ref=atv_dp_share_r_tw_1908e07c2a724


特に改めて言うことは無い。えぐくて最高でした。

7月 劉慈欣「三体Ⅱ」

とにかく単純に面白い。やりたいこと俺は全部やるぜ!!!っていう意気込みと気合が感じられて怖い。マッドマックスとやってること一緒。エンターテイメントの力!!読め!!みたいな感じで読んでる間殴られ続けた。

8月井筒俊彦「意識と本質」「東洋哲学の構造」

全く意味がわからんって言いながらうんうん読むのを久しぶりにやって、結果まだ読みきれてないし、同じとこずっと読み直してる。
いっつも思うけどこれ井筒の頭の中でだけこうなってて当事者達はそんなこと考えてないんでは?ってなる。

「本質」なるもののこの虚構的性格をきわめて明確な形で術語化したものが、唯識派の存在論が説く「三性」(すなわち、ものの三つの基本的なあり方)の中の一つ、「遍計所執性」である。明確な形、とはいっても、字面の上では例によって例のごとく鬼面人を驚かすていのものだが、原語サンスクリットに戻して見ればなんのことはない、parikalpita(svabhāva)
井筒 俊彦. 意識と本質-精神的東洋を索めて (Japanese Edition) (Kindle の位置No.369-379). Kindle 版. 

サンスクリットに戻してみればなんのことはない、って言われましても…って思ってたら東京外大がサンスクリットのオンライン授業やり始めて、勢いでサンスクリット始めた。サンスクリットは中動態を持つので、それも運命を感じてる。いまのところめちゃくちゃ楽しいので始めて良かった。最終的にどうするつもりで頑張ってるのかわからんけど実用会話を練習している。नमो नम: मित्र।

9月 NETFLIX "DARK"

ドイツ発のNETFLIXオリジナルSFドラマ。3シーズンで完結。大事に毎晩2話だけって決めて観た。ちょっとでも話すとネタバレになるからあんま言えんけど、重層的な伏線とその回収、どんでん返しの連続。キャラクターもみんな良いし感情移入できるから最後めちゃくちゃ感動した。

10月 新クトゥルフ神話TRPG

「SAN値チェックお願いします」って言うの楽しすぎる。
3月から現実世界で発狂と戦ってるのに10月からは物語の中でも発狂と戦うことになった。
始めるハードルめちゃ高く感じるのに(やってみるとそんなでもない)集まってくれる友達が居て嬉しい。
テレビゲームはいくら進化したオープンワールドであろうと、製作者側の意図した範囲内でしか動けないっていう限界があると思う(バグとかは除く)。でもTRPGは人間であるゲームマスターを納得させることができればなにやっても良い。そこにストーリー展開の無限の可能性があって、自分たちが話を作っている興奮がある。遊びたい人は是非連絡してください。

11月 テッド・チャン「息吹」大森望訳

今月から友達とSFホラー読書会を始めていて、その1冊目の課題図書が「息吹」やった。
脳内で中動態の世界がずっとちらつきながら読んだ。意志に関する未来の問題が妥協なしで途中で、やめてくれ…!ほんまに怖い!ってなった。
あと読書会にガチガチの理系がいてくれるので、ハードSFとしての科学的なバックボーンの強さを説明してもらってすごく楽しかった。
言葉選びも(翻訳含め)めちゃくちゃ上手くて、倫理学とか科学の話抜きにしても最高に面白いというか凄みを感じるというか怖い。前作から17年かかってるのもしゃあないかなあってなる。次作いつ読めるん!?

12月 アフマド・サアダーウィー「バグダードのフランケンシュタイン」柳谷あゆみ訳

この帯の、「中東 ✕ ディストピア ✕ SF小説」っていう煽り文句をそのまま想像して読んだら、もっと重いめちゃくちゃアラブの話やった。破綻している国民国家に住む人間、イラク人という概念。出てくるエジプト人もとてもエジプト人で良い。そこに占星術と呪術、怪異が混ざって幻想小説としても一級品やった。

 شسمه が「名無しさん」と訳されていることに関しては妻とも話したけど日本語の限界かもしれない(英訳はwhatsitsname)。名前を言ってはいけないあの人とかと同じ問題。

以上。
この中で1番メンタル不調に対して良い影響を与えてくれたのは井筒→サンスクリットとクトゥルフ神話TRPGでした。脳のリソースを埋めることが重要やったみたい。



その他印象に残ったりよく聴いたもの(2020年発表作に限りません)

【ゲーム】
天穂のサクナヒメ
ピクミン3
the sinking city

【映画】
カラー・アウト・オブ・スペース-遭遇-

【音楽】
Do You Wonder About Me? / diet cig
After Midnight - EP / music from the mars
The King of Sudanese Jazz / sharhabil ahmed
2008-2012 / カルマセーキ
Djesse Vol. 3 / jacob collier
Lianne La Havas / Lianne La Havas
no song without you / honne
Love, Death & Dancing / Jack Garratt
Live At Massey Hall / chily gonzales
Blue Valentine / tom waits
Live at Madison Square Garden / vulfpeck
YANUSHI EP / 家主
The Palladium Concert (feat. Musica Vitae Chamber Orchestra) / TARABBAND

【本】
イルミナエ・ファイル /エイミー・カウフマン
キリスト教講義 /若松英輔
ハラーム(禁忌) /イドリース・ユーセフ
わたしを離さないで /カズオイシグロ
ホット・ゾーン: エボラ・ウイルス制圧に命を懸けた人々 /リチャード・プレストン
わたしたちが孤児だったころ /カズオ イシグロ
日の名残り /カズオ・イシグロ
And Then God Created the Middle East and Said Let There Be Breaking News /KarlRemarks
ビリー・バッド/ハーマン・メルヴィル

【漫画】
東京タラレバ娘 シーズン2/東村アキコ
コーポ・ア・コーポ/岩波れんじ
契れないひと/たかたけし

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