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GMO「参画」記者会見動画を見た。

大迫傑選手がGMOインターネット駅伝チームに「参画」する。という記者会見動画を見ていた。移籍でも入部という表現ではなく「参画」という言葉で各メディアはそれを伝えた。「参画」を広辞苑で調べるとこうある。

さん‐かく【参画】
政策、事業などの計画に加わること。

所属はNIKEのまま実業団登録がGMOインターネットグループであるらしい。GMOに入部するわけではないのだ。だから、11月に走るニューヨークシティーマラソンはNIKE所属として最新のNIKEプロユニフォームで走り、ニューイヤー駅伝ではGMOの黒いユニフォームで走る。来年も岐阜で行われるであろう、全日本実業団陸上はGMOユニフォームで走り、日本選手権のトラックはNIKEのユニフォームで走る。ということ(かな)。

熊谷代表以下(青山学院大原監督はのぞく)スタッフはすべてNIKEのロゴのついたGMOユニフォームで出席した。これまでのGMOといえば、アディダスとの契約があったはずだ。これもNIKE所属の大迫選手がGMOで走るための足かせとなるものを取り除き、彼が走るための環境を整え、三顧の礼で迎えていることがうかがいしれる。

記者会見では登壇者たちから多くのことが語られたが、「ニューイヤー駅伝を走る」ということ以外は実際には触れられていない。これが入部であれば、大迫選手とGMOの未来やシナジーが語られたであろうが、これは、あくまで大迫傑がニューイヤー駅伝を走るというプロジェクトへの「参画」なのである。だから、多くの尺を用意したわり、それ以上でも以下でもないという記者会見となった。

この記者会見、筆者が大いに心が動かされたのは、オープニングの動画でも、原監督の威勢のいい言葉でもなく、冒頭の熊谷代表のスピーチであった。

 GMOインターネットグループは1995年にインターネット事業を開始して27年間、ひたむきに業界における一番お客さまに喜んでもらうサービスを自ら開発し、多くのお客さまにご利用いただいて参りました。

絶えず、一番いいものをご提供し、一番喜んでもらうということを経営のポリシーにして参りました。その経営姿勢を社会、あるいは多くのみなさまにご理解いただくために、6年前に「NO1を目指す」企業姿勢を映す鏡として青山学院の原監督様とご相談の上、創部をいたしました。3年前からニューイヤー駅伝へも参加をさせていただいております。

 しかしながら、ニューイヤー駅伝における成績は初年度5位、2年目9位、そして本年度も9位でございました。私共は一番いいサービスを通じて、一番お客さまに喜んでいただくということをポリシーとしておりますので、5位、9位、9位というランキングは決して理想の順位ではございません。

 ベンチャーとして、ありとあらゆる知恵、努力、そしてパッションで不可能を可能にする。早期にニューイヤー駅伝で一位をとりたいという願い、これを大迫選手と共有し、彼のたぐいまれなる才能、たゆまぬ努力これを私共の部に注入していただきたくべく、今回、グループへの「参画」をお願いし、2年に渡る交渉の上、ご快諾をいただいたというのが経緯でございます。

 ニューイヤー駅伝で我々が戦っております、お会社はみなさまご承知の通り、日本の大企業です。自動車メーカー様、あるいは重化学工業、みなさまご存知のお会社様が並んでいるわけですが、あえて社名を隠しておりますが、みなさま、売上高と利益の規模は5倍から100倍でございます。かかわるパートナー(GMOインターネットグループでは社員をパートナーと呼ぶ)社員さんの数を比較しますと7倍から10倍。競っている相手がものすごいでかいんですね。そのみなさまの陸上部は創部してから30年から長いお会社様は70年以上の歴史をお持ちでございます。そのような巨大な相手にベンチャーの知恵とありとあらゆる努力、たゆまぬ努力、そして我々のスピード感で短期に強豪を打ち負かし、圧倒的NO1の地位を獲得したいと心から願っております。

その思いを亀高監督率いる現陸上部そして大迫選手と共有し、本日、この場に至ることになりました。以上が最初のご挨拶になります。
本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。

話がニューイヤー駅伝の競合相手、「自動車メーカー様」に及んだとき、「ああ、そうか」と、このプロジェクトの根幹が見えたような気がした。本田宗一郎がマン島TTやF1を狙い、豊田章男がルマンを戦うこと、日本の会社では不可能と言われてきたことをひっくり返してきた先達たちと同じようなチャレンジを、このひとは駅伝でやろうとしているんだと。

つまり、今回の「参画」とは、ホンダがアイルトン・セナを起用したようなことと同じように考えるとわかりやすい。GMOは大迫傑を迎えることによって、セナがホンダを変えていったように、駅伝のトップチームを作ろうとしているのだと。

熊谷代表のスピーチを一言で要約するならば「わしはニューイヤー駅伝で勝ちたいのだ!」ということである。もっというならば、「なんで、うちの駅伝部は普通の実業団と同じことしてんねん。こっちとらベンチャーやぞ!」という、彼の心の叫びでしょう。ニューイヤー駅伝の結果にここまで一喜一憂する社長が果たしているでしょうか?

つまり、この「参画」はGMOという会社の物語なのだ。これまでニューイヤー駅伝を走る選手は形式上はサラリーマンでありながら個人事業主でもある実業団選手の集まりであった。卓越した個人であるがゆえに、学生駅伝のようなチームの戦いという要素が希薄であった。それもそうだろう。企業哲学と駅伝のチームカラーは必ずしも一緒ではなかったから、応援するほうも個人にフォーカスするしかなかったからだ。

だからこそ、GMOには会社とチームが一丸となってニューイヤー駅伝を盛り上げてもらいたい。今回の登録方法が可能ならば、インターナショナル区間にエリウド・キプチョゲを起用することもできるよね。そうすれば、世界中の人たちが1月月1日のEKIDENに目を向けることになるでしょう。TBSの視聴率を嘆くこともなくなります。なにせ世界中で見られるコンテンツになるわけだから。

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