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ブダペスト世界陸上女子5000m決勝

田中希実選手の父でありコーチである田中健智さんがブダペスト世界陸上5000m決勝のあとにこんなツイートをした。

2020年だったか 雑誌の取材で順位や記録より日本人がラスト1周、ラスト300m、ラスト200m、ラスト100m、ラスト50mに絡む事を目指したい…たとえその結果、順位も記録も取れなくても…ワクワクしませんか?みたいな? 今日は少し理想に近づけたと思う。

ほんとそうだなあ。フィニッシュエリア最前列でカメラをかまえてレースをみながら同じことを思った。

で、この取材はぼくがインタビューをした。NumberDOのマラソン攻略法みたいな企画で「西本さん誰に話を聞きたいですか?」と、聞かれ、迷わず「田中父です」とお願いした。マラソンのことは正直どうでも良かった。健智さんに「どういうことをやりたいのか?」という一歩踏み込んだ話を聞きたかったからだ。小野市まで行くと田中選手と後藤選手が雨のなか、練習をしていた。「希実の取材はなくていいですか?」と聞かれたが、「ええ。今日はコーチの話を聞きにきました」と。田中選手はお母さんと二人で別室で。マラソン談義をしたあと、自然と取材内容とは関係ないほうに雑談はすすんでいった。「トラックでどう世界と戦うか?」という具体的な話だ。そのときに健智さんは東京オリンピックで思い描くイメージを語った。

オリンピックに出る以上はやっぱり最後までしっかり勝負の場に残らないといけない。5000mの中で自分をどう表現するのか、どういう存在感を残すかが大事。僕は記録ではなくて、記憶に残る選手にしたいんです。そのためには、決勝のラスト1周まで残っていることが大事。ラスト1周、『わ、日本人残ってるよ!』というワクワク感。その結果、最後に敗れても、入賞しなくても、ボロボロになってもいいんですよ。

と。ああ、なるほど。健智さんのイメージが頭に浮かんだ。 それが2020年のこと。それから3年後の2023年ブダペスト世界陸上。まさにあのとき、頭に思い描いたイメージが目の前で繰り広げられた。 ラスト500mから田中は外に広がり、ラストスパートに備える。これまでなんども聞いた「アフリカ勢のゆさぶり」にしっかり対応して最後の1周まで離れずにラスト1周へ入った。これまでの田中はラスト200mから失速傾向にあったが 日本では使うことのなかったギアをいれラスト200m。 落ちない。いや、周りが伸びてるから落ちて見えないだけで 田中のラストも伸びた。 田中希実が世界の扉をこじあけた瞬間であった。 #ブダペスト世界陸上

と、ここまでがツイッターに書いたこと。も少し書き続けてみるとする。


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